第17話 成リ変ワル

「もしもし、どうしたの?」


「どうしたのじゃないわよっ!今どこにいるのっ!」


「えっ?そりゃ、部屋にいるよ」


「部屋ぁ!?もしかして、マンションの?帰ったってこと?心霊スポットに、私を置き去りにして!?」


「はあ?どういう――」


「信じらんない!そんな男だと思わなかった!普通、彼女を置き去りにして帰んないでしょ!マジあり得ない。私、女なんだよ!何かあったらどうする気だったの!?」


「ちょ、ちょっと――」


「なんなのよ、もうっ!無事に電波の届くところまで降りて来れたからいいけど、超怖かったんだから!一人っきりで山道歩くの!こんな悪ふざけする男、大っ嫌い!」


「お、お前、今どこにいるの?」


「山を降りたとこのコンビニっ!いいから早く迎えに来なさいよ!」


「ま……マジで?」


「さっきから何なの?まだふざけてるわけ?ほんと、信じらんな――」


「嘘だろ?」


「え?」


「だ、だって、俺……お前と一緒に帰ったじゃんか。トンネルの奥まで行って戻ってくるって決まりだったけど、すぐにお前が帰って来て、もう怖いから帰ろうって言って……そのまま車で、二人で……」


「な、何言ってるの?私、ちゃんと奥まで行ったわよ?戻ったら、あんたの車が無いから、仕方なく山道を一人で……」


「じゃあ……今、俺の家でトイレに入ってるのって、誰なの?」


 ―――カチャン


 と、扉が開く音が聴こえたかと思うと、電話が切れた。

 それが、彼氏との最後の会話になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る