第4話 こぼれていく

 両親の離婚。


 今どきはありふれたものだ。


 けれど、ネットも普及していない時代に、どれだけの片親世帯がいるかなんて分からない。


 実に高校卒業までを友だちにも語らず、隠して過ごすくらいには肩身の狭い思いをしたものだ。


 自己破産して、自営業の親戚家族のお世話になった。母子5人で。


 まあ、僕の愚かさはまだ続いているわけで、たまにしか会わなかった従兄弟といつでも会えるようになって喜んでたかな。


 夜逃げよろしく内緒の引越しでさ。


 親父と会えなくなることについても、どこか現実とは思えないようで、理解していたのかも怪しい。


 僕はこの頃を“物心つく前”などと考えている。だって今の自分からではとても考えられないほどに、流されるだけの愚かさにどっぷりハマった子どもだったんだから。


 それからの生活は決して悪くは無かったのかと思う。


 ただ一点、自由が無くなったことを除けば。


 僕はクラブ活動だけは許されたから、とりあえずその時間までは学校。


 あとは放課後も土日も春夏冬の休みも全て、その自営業の手伝いに消化された。


 文字通りの消化。子どもとしては味気ない人生。


 まあ、無知蒙昧なる罪の子にはお似合いの罰だったのだろう。


 元の友だちも失い、新しい友だちとは学校でだけ。プライベートの話には参加出来ない。


 流行りも、遊びも、なにもかもが、僕の知らない世界になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る