第3話 気づき
とまあ、端的に言えば貧乏だったのだ。
毎日学校に通って、遊びまわるしかしなかった僕は、自分の家が貧乏だってことに気づきはしなかった。
けれど、そんな僕でも中学生になった時にどうしても気づかざるを得ない状況になった。
体操服である。
その学校では3学年をそれぞれ色の違う体操服で分けていた。赤、青、緑だったかな?
なので順当に行けば3つ上の兄が卒業した翌年に入学する僕は、たとえ兄のおさがりの体操服でもそれほど悪目立ちする事はなかったはずなんだ。
だけど、何の偶然か僕の入学する年に体操服をリニューアルしたんだ。
その頃から出だしたクール素材なシャツにハーフパンツ。
驚いたね。上はまだしも、下はこっち短パンなんだもんよ。それに素材がジャージになってる。兄のおさがりは素材は何だったんだろう?今でいうスウェットに近いような。
学年でたったひとり。2年の時に来た転校生でさえ、新しい体操服だったのに。
貧乏だ。
それは子どもにとってもつらいものである。最初からそうと知っていれば、それほどのショックも受けなかっただろう。
けれど僕は愚かで罪深い子どもだから、その時まで知らなかったんだ。貧乏だったなんて。
さすがにタウン誌の配布の内職を手伝わされて、挙げ句に同級生に目撃された時は辛かったなあ。
体操服は親にゴネて、ゴネて1年の秋頃に買ってもらえたのかな。たぶんその頃だと思う。
けれどそれを着るのも、2年の春までのことだった。
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