塔といえば

翌朝(といっても昼に近い時間)僕が目を覚まして窓を開けると、遠くに、レンガの家が見えた。

完成しているのかまだ 作り始めたばかりなのか、までは分からない。多分、僕の視力がもう少し良かったら木の家とわらの家も見えるのかな?

あの二番目の子ブタは、おとぎ話通りに木の家を建てて、仲良し三兄弟で暮らしていくのだろうね。


でもさ、子ブタはいいけど、煙突登ったり熱湯の中に落とされるオオカミは嫌だろうなあ。もしかして、回避すべく

ブタを見たら逃げる、という選択をして、菜食主義になっているかもしれない。



再び旅に出る僕をジュリさんが見送ってくれる


「私はこの屋敷を離れられないけれど、ぜひまた二人で遊びに来てくれないか」


「ジェリさんこそ 僕のお城に一緒に行きませんか?」


「うーん、呪いの魔女が屋敷に来た時に主が居ないと、どうなるんだろうか?」


「それは……ストーリーに干渉して困ったことになっている僕からは何とも言えませんね」


「ははは」


ジェリさんは力なく笑った。


「また、遊びに来ますから、ジェリさんを招待してもいいかどうか考えておいてくださいね」


「うん 考えておくよ」


僕達は、再会の約束をして別れた。



うん、すごく旅してるっぽい!いいぞいいぞ!!思わず笑顔になってしまう


「ジェリ様も 呪い発動手前で足踏みをしているのは王子と一緒ですね」


せっかくいい気分になっているのにボブったら!足踏みってボブには僕がそんな風に見えているのかい?

もう!っと軽くにらむけれどボブの表情は変わらない


「今日はどちらに向かいましょうか?」


「うーん か。み。さ。ま。の。い。う。と。お。り。……あっちだ!」


「はいはい」


神の御心のままに、僕達が歩いていくと、高い塔が見えて来た。バベルの塔かな?それにしては低いけど?


「王子、今の見ました?」


突然ボブが言うけれど、僕には何のことだかさっぱりわからない。


「ボブ、お前は本当に目が良いね。何が見えたんだ?」


「あの塔の一番上の窓から、黒づくめの人物が降りて来て、向うへ行ったんですよ?なんでしょうね?」


うん?忍者ってことは無いよね?『近くば寄って 目にも見よ』って言うからもう少しだけ近づいていようかな?

もしかして 日本昔話の世界に迷い込んでいたらますます話がややこしくなるよ


近くに寄ってみると、不思議な塔だ。まず、入口が無い。窓も一番上の一つだけってことはこれだけの高さがあって

二階建てって事かな?


うーんと考えていると、馬の蹄の音が聞こえて来た。


「ボブ?」


「王子?」



同時に僕達は互いに呼びかけて、出来る限り塔から離れて身を隠す。

すると 白馬に乗ってやって来たのは どこかの王子、王子、王子だよ。あの子ブタじゃないから僕には表示は見えないけれど ピンと来た。それはボブも同じだったようだ。


「あちらも王子でございますね」


ボブの呟きに黙って頷いて様子を伺うと 馬から降りた王子は塔の上に向かって何か呼びかけた。

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