見覚えのあるステンドグラス
あれ?この屋敷、知ってる。特にこの文字の入ったステンドグラス!”自分を制する者が勝つ”だっけ?
コンコンコン
おお!ボブが僕に一言の相談もしないで勝手にノッカーを叩いているよ!
「ボブ!ダメだって勝手なことしちゃ 野獣――」
「いらっしゃいませ」
僕の言葉が終わらないうちに ドアが開き、にこやかな執事(?)が現れた。『いらっしゃいませ』って言ったよね?来客が来る予定だったんだよね?僕達はお邪魔かな?
「いえ、失礼します」
僕は ボブを引っ張って、慌ててその場を去ろうとするけれど
「どうぞ、主人が待っております」
いつの間にか使用人が現れ、僕とボブを屋敷の中に押し入れた。
いやいや、よもや、主人が野獣化していたとしても、人を食べるとか聞いたこと無いから大丈夫!だよね?
ホールに入ったところに大階段!から ハンサムな、でも若干疲れた感じの男性が降りて来た。
「ようこそ わが家へ 出来るだけのおもてなしをさせて頂きますよ」
作り笑い、でも 眩しいほどにカッコイイのはおとぎ話だからかな?
***
「本当に、どうするのが正解なのか?」
はあっと、この屋敷の主人ジェリさんは大きく溜息をついた。
僕の予想通り、ここは”美女と野獣”の舞台となる館だった。転生者であるジェリさんは、このおとぎ話も自分の立場も知っているが故に呪いをかけられる一歩手前、という僕と似たような状況だった。
「私も幼いころから、ここはおとぎ話の世界だなあって感じていたんだ。でも『ジャックと豆の木』も『長靴を履いた猫』も貧しい家の子供が主人公だからと油断していたんだ」
「判ります。自分は主人公じゃないから大きな災いには巻き込まれないって思ってんですよね?」
「その通り 乾杯!」
僕達は小さな、アルコール分なんて入っているのか分からない果実酒のグラスを打ち合わせる。
(おとぎばなしの国に、飲酒年齢制限はないからね!一応言っとくよ。)
「それがふとあのステンドグラスを見た時のショック!分かるかい?」
執事さんが、ジュリさんのグラスに水を注ぐ。ジェリさんって酒癖悪いタイプなんだろうか?
「主はいつだれが来ても おもてなしが出来る状態でないといけないんですよ。これ以上お酒をお召しになると
充分なおもてなしが出来なくなりますからね」
執事さんはにこやかに笑う、けれど、眼は笑っていない コワイ
「あの、この屋敷が美女と野獣の舞台ってコトは判るんですけど、ジェリさんがピンポイントで野獣になる主人公とは限りませんよね?もっと未来のご当主の可能性もありませんか?」
「ああ その可能性も勿論考えた。でも、あのステンドグラスを見ると思い出すんだよな 例の世界で最も有名なネズミのいる会社が作った 美女と野獣の話をさ」
あの執事さんが時計になったりする、あの映画ですよね?
「いっそ、物語を始めてしまおうかとも思うんだが、執事はじめ、屋敷の者達も巻き込むのかと思うと……」
執事さんが頷く
ジェリさん めっちゃいい人じゃん、魔女が来ても、物語を進めるために冷たく当たるとか無理そうじゃない?
夜もかなり更けてから、流石にもう訪ねてくる人は居ないだろうと僕達二人の飲み会(?)はお開きになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます