第307話 ボクサーカンガルー 4

 カオリさんに応援していただいて、調査ではなく今度は、攻略という感じでボクサーカンガルーのダンジョンに挑むことにしました。

 

 いつも通り、ユイさんにダンジョンへ挑戦する連絡を入れてから、スーパーカブさんに乗り込んで走ります。


 向かっている途中の道で、倒れられている女性を発見して助けることになりました。


「大丈夫ですか?」


 倒れている女性に声をかけて意識があるのかを確認します。


「うっ、うん。苦しい」


 苦しむ女性のために救急車を呼んで、病院まで付き添うことになりました。

 意識がはっきりしていないということだったので、病院まで到着して支払いまでしておきました。

 

 これでも人助けですよね? 領収書はいただいたので、カオリさんに経費にしていただけないでしょうか? 聞いてみましょう。

 

「ふぅ、つきましたね。本日は正面から戦うのではなく効率よく倒していくために搦め手をしようと思います。ミズモチさん。私は卑怯でしょうか?」

《勝てばいいよ〜!》


 ミズモチさんの許可をいただきましたので、本日は搦め手を使います。


 業務用扇風機を持ってきましたので、ミズモチさんの毒霧を扇風機に乗せて散布します。カンガルーさんたちは、正面から戦うと強いのですが、そうでなければ意外に対応できると思うのです。


 もしも、これが成功すれば、他の冒険者さんたちもレベルを上げが効率的に行えるのではないでしょうか?


「おお! カンガルーさんたちが倒れていきますね」


 ミズモチさんの毒はかなり強力なので、ミズモチさんのおかげなのか他の方法も試さないといけないですね。

 意外にミズモチさんの毒だけでも販売などできたりするのでしょうか? ミズモチさんにどれくらい出せるのかとか、保存できる容器などは考えなければいけませんが、新人さんに格安で販売したら、魔物討伐の役に立つかもしれませんね。


「そういう商売を始めてもいいかもですね。その代わり、解毒剤の用意は必須ですから、解毒剤をミズモチさんが作ってもらえるのかもちゃんとしないといけませんね」


 オークションのおかげで生活的な金銭は心配しないでいられるので、ゆっくりと今後のことを考えていかなければいけませんね。


「さて、どうでしょうか?」


 私が時間を置いて、ボクサーカンガルーのダンジョンに入っていくと魔石がたくさん転がっていました。


「やっぱりミズモチさんの毒は強力ですね」


 黒カンガルーはいないようです。

 魔石の大きさは一律でした。


 見える範囲のカンガルーたちは倒せたようですね。

 それに毒が舞っている間は、カンガルーたちは近づいてきません。

 私は毒耐性があるので、問題ありません。


 ですが、魔物たちにとってはかなり危険な毒のようですね。


「ふぅ、場所を変えて扇風機を使うこともできますが、ここからは別の方法をしていきたいと思います。一応昨日のこともあるので不意打ちに対して、変身だけしておきましょう」

「ヴュ〜」


 ミズモチさんの毒ガスが晴れていくことでカンガルーたちが姿を見せました。


「どうやら毒に関しては感知できるようですね。このまま毒を散布していても、近づいてきてくれないでしょうね」


 野性の感というものがあるのでしょうね。


「さて、次はミズモチさん。氷魔法で気温を下げていただけますか? 私は聖魔法を使って結界を広げてみます」


 この間は肉弾戦ばかりで、魔法を使っていませんでしたので魔法を応用して使っていきたいと思います。


 ガシャドクロさんとの戦闘では、魔法と白金さん、それに柳流杖術が命を助けてくれました。

 ですから、自分ができることを一つ一つ把握することこそ大事だと思います。


「やっぱりカンガルーさんは寒いのが苦手そうですね」


 ミズモチさんが氷魔法で銀世界を作って、結界で冷気を逃さないようにしていたら、ムキムキな体をしたカンガルーさんが寒そうにして動きが鈍くなりました。


「今が夏でなければ、もっと広範囲に広げられたのですが、流石に欲張りでしたね。やはり、強さは相当ですが、倒し方を工夫すればなんとか倒せそうですね」


 カンガルーがご近所ダンジョンさんのようにS級にならない理由がはっきりしましたね。


「そろそろ攻略として、ボスが出てきても良いと思うのですが」


 見える範囲ではボスらしきカンガルーはいませんね。


「えっ?!」


 油断も何もしていません。ですが、私が気づいた時には吹き飛ばされていました。


「なっ、何が?」


 殴られた衝撃で、視界がハッキリしません。


 ダンジョンに入った時から鬼人化していなければ、一撃で死んでいたかもしれません。


「GIGIGI」


 手にはボクサーがするような赤いグローブ。

 腰にはチャンピオンベルトを巻いた小柄な白いカンガルーが私に対して指を振っています。


 見れば、氷も結界も全て砕かれて消滅していました。


「なっ、何が?」

「ヴュ〜」

(めちゃくちゃ強い!)


 ミズモチさんと危機察知さんが同時に危険を教えてくれます。

 ブラックの危機察知表記に、危機察知さんが気づくことができない遠距離から、高速で私を殴り飛ばした白カンガルーさんが登場しました。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る