第302話 ボクサーカンガルー 1
会社を辞めると言っても、引き継ぎなどはなかなか多く。
すぐに次の方が来てくれるわけではありません。
それでも人事部から、人を回してもらって前とは比べ物にならなくなった事務仕事の内容を伝えていきます。
私と一ヶ月遅れでカオリさんも辞めることを決意されました。
三島さんは残って、今後は課長職をしてくれることになるそうです。
実際に五年ほど一緒に働いてくれています。
仕事の内容は、ショールームがメインでしたが、今後は課長として指揮をとってもらうことになります。
会社は、売られることは無いようです。
ですが、今後がどうなるのかはわかりません。
それは私が関与することではないと思っているので、私は考えないようにしています。
一通りの引き継ぎを終えることができたのは二週間ほどでした。
残りの二週間は有給消化としてお休みをいただきました。
カオリさんは残り一ヶ月半は仕事に行かれるので、その間は冒険者としての仕事をしようと思います。
ユイさんと弁護士さんたちには、テレスさん対策を継続して行なってもらうことになりました。
私は、会社に行かなくなって時間ができたので、ミズモチさんと二人で平日の午前中から冒険者ギルドにやってきました。
タツヒコ君たちに連絡も取ったのですが、今は遠征中でこちらにはいないそうです。
彼らも成長を遂げている様子で嬉しいですね。
「それで、冒険者の活動を再開されるということですね」
「はい!」
私は専属受付であるユイさんに事前に挑戦しやすいダンジョンを検索してもらっていました。
「それでは、こちらなどいかがでしょうか? A級とB級の間で、調査が途中で止まっているところなんです」
「ボクサーカンガルー?」
「はい。カンガルーに似た魔物なのですが、一体一体がかなり強いようでランクの低い人では手も足も出ないで逃げることしかできないそうなのです。特殊な個体ではなく、単純に強い魔物なので判断はお任せします」
一応、他にも用意してくれているようですが、ユイさんが私とミズモチさんのことを考えて用意してくれているようです。
「わかりました。ボクサーカンガルーダンジョンに行ってみます」
「ありがとうございます。一応指名依頼扱いにしておきますので、報酬も上乗せしておきます」
「えっ? いいんですか?」
「はい。先ほども申した通り、調査が途中で終わってしまっているので、調査も一緒にしていただければ助かります」
「わかりました」
私もご近所ダンジョンさんへ挑戦するようにレベルを上げる必要がありますからね。自分自身の修行だと思えば、コカトリスダンジョンの時のように戦うことで強くなれるかもしれません。
「よろしくお願いします」
「はい! 行ってきます」
私はスーパーカブさんに乗り込んで、ユイさんに教えていただいた場所へとやってきました。
元々牧場だった場所だそうです。広大な山公園にムキムキなカンガルーさんが、寝転んでおられます。
「物凄く強そうですね」
テレビでムキムキなカンガルーさんを見たことがありますが、あれを更に大きくしたようなカンガルーさんが待ち構えております。
私の身長百八十センチほどあるのですが、そんな私の倍ほどに大きいカンガルーさんをが起き上がりました。
「やっ、やりますか?!」
「ふん!」
「グハッ!」
いきなり、向かってきたカンガルーさんが私の顔面を殴り飛ばしてきました。
攻撃が早くて目で追えませんでした。
「痛い!」
物凄く痛いです! 私、まともに攻撃を受けたの久しぶりかもしれません。
ビッグベアーさんの爪痕から、なるべく攻撃を受けないように気をつけていたので、ご近所ダンジョンさんの侍以外で、なんとか避けることを頑張ってきました。
ですが、これは厄介ですね。
攻撃が見えないカンガルーさんは強いです。
「ふん!」
腕を組んで待ち構えておられるカンガルーさん。
「えっと、攻撃をしても良いのでしょうか?」
私は白金さんを使って殴りました。
カンガルーさんは避けることなく私の攻撃を顔面で受けました。
「えっ?」
「ふん!」
鼻血を出しながらも、不適な笑みを浮かべたカンガルーさん。
「ふん!」
今度はボディーにパンチを受けました。
「グフっ! ゲホゲホ!」
重いです。
物凄く重いパンチです。
「すっ、すいません。ミズモチさん。攻撃をお願いしてもいいですか?」
どうやら交代交代で攻撃をするようなので、ミズモチさんに攻撃をお願いしました。
ミズモチさんは助走をつけて、思いっきりカンガルーさんのボディーへ体当たりを決めました。
全力高速体当たりです。かなりの威力が込められていたと思います。
カンガルーさんは、吹き飛んで二、三回転がっていきました。
ですが、プルプルと震えながら、立ち上がって指を立てられました。
「やっ、やばい相手ですね」
私は新しい魔法である《聖》魔法で自分の傷を回復させてます。
そうしなければ、ここは切り抜けられないです!
「ふん!」
全力で飛び蹴りを放つカンガルーさんを思いっきり白金さんでカウンターで殴りました。
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