第300話 レベル22

 社長から、背中を押していただき。

 夏の夜空を見つめながら、一人で家へと帰り着いた私は光のついた家にどこかで安心感を覚えます。


「ただいま。帰りました」

「おかえりなさい。どうでしたか?」


 カオリさんは不安そうな顔をして、私を心配してくれているのがわかります。


「はい。そうですね」


 私はネクタイを緩めて、渡していただいたタオルで頭を拭きます。

 夜でも汗が吹き出すので、冷やしてくれていたタオルが気持ち良いです。


「社長から、背中を押されてしまいました」

「背中を押される?」

「はい。社長はもう未練がないので、社員たちが幸せになれる道ならば良いと言われておりました」

「社長らしいですね」


 カオリさんは、私が課長と戦っていた時のことを知っているので、社長が考えそうなことを予想していたのかもしれません。


「それでは、ヒデオさんはどうするのですか?」

「私がどうするかですか?」

「はい。前にも言いましたが、もう働かなくても生活ができるだけの貯金があります。そして、冒険者をする理由はミズモチさんの魔力補給ですよね? 会社にこだわる必要はありません。全てはヒデオさんのしたいようにできると思います」


 カオリさんの言葉はいつも私を一番に考えてくれていますね。

 私がしたいこと、それが一番難しいように思います。


「私は、カオリさんとミズモチさんとのんびりしたいと思っています。ですが、これまでの二十年間を仕事に捧げてきたことで、何もしない自分が想像できません。仕事を手放すということに不安を感じてしまうんです」


 私は自分の気持ちをカオリさんに伝えると、カオリさんは、いつも通り聞いてくれていました。


「もう少し考える時間が欲しいと思います」

「そうですね。すぐに決められることではありませんよね」

「はい」


 私はカオリさんが用意してくれた晩酌を頂き、ご近所ダンジョンで上がったスキルチェックをしていくことにしました。


 レベル 22(SP220)


 SPのタッチすると項目が現われました。


・魔物の攻撃強化+21

・魔物の防御強化+21

・魔物の魔法強化+21

・魔物の魔法防御強化+21

・魔物の異常耐性強化+21

・魔物の回復力強化+21

・魔物の異常耐性回復+21

・魔物の属性魔法上級

・属性魔法上級

・覚悟


 おや? 珍しく驚くようなスキルがありませんね。

 これはとうとう私も普通の冒険者としてスキルの振り分けがマトモになったのでしょうか?


 new魔物の属性魔法上級


 ミズモチさん、属性温度


 ・温冷を司どる上級魔法。


 これまでマイナス方向へ《氷》や《水》といった魔法が得意だったミズモチさんが温度を調整できるようになったということでしょうか? 《水》を出す際にお湯を出せるということですかね。


 う〜ん、なんでしょうか? すごく微妙に感じるのは私だけでしょうか?


 new属性魔法上級


 阿部秀雄、属性


 ・浄化、回復、結界などの聖なる力で邪なるモノを退ける力を持つ。


 えっと、これは最近魔法を使って、ゾンビや骸骨を倒していたからでしょうか? 光魔法の上級が《聖》魔法ということなのでしょうか? 神様を強く崇めているわけではないので、申し訳ない気がしますね。


 スライム神や、白鬼乙女さんが神様なら崇められる自信がありますけどね。


 new覚悟


 ・危険なこと、不利なこと、困難なことを予想して、それを受けとめる心構えをすること。


 つまりは、ダンジョンに入る前に覚悟を決めていると、心構えができるということでしょうか? いや、正直意味がわかりません。

 今までと何が違うのでしょうか? たまによくわからないスキルがありますね。


「ふぅ、振り分けが終わりました」

「お疲れ様です。私も大阪でしましたけど、スキルを振り分けるってなんだかワクワクしますね」

「ふふ、カオリさんもレベルアップ中毒になりましたね」


 ミズモチさんがカオリさんのお膝の上で撫でられながら、ツマミをいただいて満足そうです。


「実際に、レベルを上げてから体が楽なんですよね。走っても息が切れなくなりました。それに起きると毎日爽快なんですよね」

「そうなんですよね。私も暴飲暴食した次の日は胸焼けに悩まされていたのに、最近はそれを感じないのでついつい暴飲暴食をしてしまいます」

「ふふ、ミズモチさんに付き合うと食べてしまいますよね。まぁ、ヒデオさんは少食な方だったので、いいと思いますよ」


 私って少食だったのでしょうか?


 確かに、ステーキなどは残してしまいがちでした。

 残した物はミズモチさんが食べてくれるので、つい自分で全て食べている気になっていましたね。


「最近は考えることが多くなって、食事をゆっくりと摂れていなかったかもしれませんね。どこか美味しい場所へ食べにいきましょうか?」

「いいですね。ミズモチさんも一緒に行くなら、予約していかないといけませんね」

「確かに! ファミレスで全種類頼んだ時は、バイトの方々に大変な目に遭わせてしまいました」

「ふふ、今度はちゃんと用意をしてもらっていきましょうね」

「はい!」


 東京なら、どこに行くのがいいでしょうか?

 

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