第298話 弁護士さんに相談です
ユイさんから連絡が入ったことで、マリア・天童さんがすぐにやってきてくれた。今回の弁護団は少なく、マリアさんの他にもう一人だけだった。
今回は事件性がある問題ではなく、私個人としてA国に移籍するのか、そして会社の今後に関係する内容なのです。
国際ビジネス弁護であるマリアさんがきてくれたことは心強いです。
「冒険者ギルド交渉担当弁護人ジョン・スミスと申します」
そういって握手を求めてきたのは、体格の良い顎が二つに割れた青年でした。
私よりも年下だと思いますが、貫禄のようなものがあります。
「よろしくお願いします。マリアさん、スミスさん」
「ノンノン。私のことはジョンと読んでください」
「わかりました。ジョンさん。私は阿部秀雄です。そして、私の専属を務めてくれている水野結さんです」
互いに握手をして、今回の状況について話し合いを行いました。
マリアさんには会社の件でもお世話になっているので、事情はある程度わかってくれているようです。
マリアさんから、ジョンさんへの説明を終えてくれているので、会社の説明は省かせていただきました。
代わりに、今回のテレスさんの行いから、私の気持ちを話していきます。
「なるほど、それは強引な方法ですね」
「うむ。一人の冒険者に固執するのはSクラス以上ならばあり得るが、Aクラスでは珍しいね」
ジョンさんの言葉に、Sクラスの冒険者への使いが特別なことがわかりますね。
「状況はわかりました。多少強引ではありますが、エージェントとしてはギリギリセーフラインを抑えているのが、テレス氏の上手いところですね」
「ギリギリセーフなのですか?」
「はい。まず、冒険者にとって快適な環境を整えると言うのが、エージェント共通の認識なのです。テレス氏は正式な株式を買い取って会社を手に入れております。そのため会社の筆頭株主である事実は正当であり、我々が口出すことは難しいと考えます」
マリアさんの言葉に私は気持ちが沈んでいくように感じます。
「どうしても手はないのでしょうか?」
「あるにはあります」
私の言葉にジョンさんが答えてくれます。
「あるんですか?」
「はい。単純な話ですが、テレス氏よりも多くの株式を持てば会社を取り返すことができます」
「あぁそう言うことですか。ですが、それは無理なんじゃないですか?」
「いえ、テレス氏が持っているのは40%です。現在筆頭ではありますが、51%を取得しているわけではない上回ることは可能です」
ジョンさんが調べた内容を私に見せてくれました。
こんなことも調べることができるのですね。
「会社を取り戻したいと思うのでしたら、元社長さんと相談して取り戻すことは可能だと思います」
マリアさんの言葉に私はどうしたいのでしょうか?
社長と話をしてみて、会社のことは決めていきたいと思います。
「わかりました。一度、会社のことに関しては社長や幹部たちと話をしたいと思います」
「はい。それではもう一つの件ですね。ヒデオさんが、A国に行くかどうかですか、ですがこれに関しては所属する必要はありません。現在では契約を結んだわけではないので強制もできません」
マリアさんから、国際冒険者のルールについての説明をしていただきました。
・冒険者は所属冒険者ギルドを明記して、国際冒険者証の取得を行う。
・取得条件は、Bランク以上であること、Cランク以下は引っ越した先でもう一度Dからやり直してランクを上げていく。
・国際条件に位置付けされている魔物の討伐記録によって、すぐに取得が可能になる。
・目安として、ミノタウロスはB級上位のため、基準に満たしているものとする。
・つまり、B級上位を単独で攻略できる証明があれば、国際冒険者証を取得可能となる。
「以上です。つまりは、私は今の冒険者証で国際冒険者登録を行えば、世界のどこでも仕事ができると言うことですね」
「はい。そして、テレス氏はA国の冒険者として登録してほしいと考えているようですね。そのためのスカウトだと思われます」
「なるほど」
テレスさんの目的はわかりませんが、私をA国所属にすることでやらせたい仕事があると言うことでしょうか?
「ユイさん。私は国際冒険者になることはできますか?」
「申請をすれば、問題ないと思います。ですが、阿部さんが国際冒険者になれば、海外からの指名依頼が来ることもあります。よろしいのですか?」
「なるほど、そういう弊害もあるんですね」
これはなかなかに問題が山積みです。
テレスさんの問題だけでなく、会社や国際冒険者のルールなど、これからの私が決めなければいけないことが多いようです。
「我々は、阿部さんのしたいと思う道に沿って提案と手助けができますが、決めるのは阿部さんです」
マリアさんの言葉に、私は頭を悩ませ、本日聞いたことを持ち帰り、カオリさんと社長に相談をすることに決めました。
自分一人では決められないことが多いですね。
ただ、ミズモチさんとカオリさんと、のんびり過ごせればいいのに。
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