第141話 ホワイトデー 後編
本日はホワイトデーです。会社に出社した私は、先に来ていた二人の元へ赴きました。
「三島さん。この間のバレンタインデーのお返しです」
「あら、義理チョコの私にも?何かしら、えっ?ネックレス?しかも結構良さそうな物だけど」
「日頃のお礼も兼ねさせて頂きました。副業でしている冒険者たちが使うアイテムで守護のネックレスと言うんです。最近は色々と物騒なので、護身用に使って頂ければ嬉しいです」
「えっ!冒険者のアイテム?なんだか凄そうね。とりあえずありがたく使わせてもらうわ。あら、意外に軽いのね」
魔石がついていない守護のネックレスは、一回か二回しか使えないそうです。
それでも命の危険を以外にも事故や怪我も守ってくれるので、三島さんに何かあった時のお守りになってくれれば嬉しいです。
「矢場沢さんも、同じ物ですが」
私は、三島さんのネックレスとは色違いで、小さな石が三つ付いたネックレスを渡しました。
「あら?あらあらあら、私のよりもちょっと豪華じゃない?」
「すみません。頂いたチョコの差です」
「ふふふ、いいのよいいのよ。ふふふ、カオリちゃん良かったわね」
「もう、三島さん。からかわないでください」
「はいはい。邪魔者はいなくなるわね」
今にも笑い出しそうな顔で、ショールームへと消えていく三島さんの背中を見送った私はカオリさんと二人きりになります。
「ありがとうございます。冒険者のアイテムって高いと聞いたことがあります。これも高いのでは?」
「値段では伝えられないほどの感謝を、私はカオリさんに感じているんです」
「感謝ですか?」
「はい。ミズモチさんと出会って半年ほどの時が経ちました。カオリさんが一番最初に私と仲良くなってくださいました。私の変化に気づいて、ミズモチさんの話を聞いてくれて。どれだけ私の心が救われたのかわかりません」
これは私の本心です。もしも、ダンジョンブレイクが起こった時、カオリさんが死んでしまうのは嫌です。
ですから……
「そんな風に思って頂いていたなんて思いませんでした。ふふ、ありがとうございます。ヒデオさんがつけてくださいますか?」
「はい」
私は、カオリさんの首元に守護のネックレスをつけました。
「重くはないですか?」
「はい。不思議ですね。三つも石がついているので重いかと思っていましたが、ほとんど重さを感じません」
「魔力がある間は、そういう物だそうです。魔力がなくなるとネックレス本来の重さがかかるので、重くなるかも知れません」
「そうなんですね。やっぱりダンジョンのアイテムって不思議ですね」
「ええ。私もまだまだ慣れません」
カオリさんにも喜んで頂けたようでよかったです。
その日は二人ともニコニコと仕事をしてくれました。
会社終わりに、私は事前にメッセージを送っていた最後の一人へ守護のネックレスを渡すために待ち合わせをしました。
「お待たせしました」
「待ってませんよ〜久しぶりですね」
バレンタインの後はなんだかかんだと会う機会が少なかったシズカさんです。
「メッセージでは聞いていましたけど、毛がないって本当なんですね」
「はい。睫毛も眉毛も無くなってしまいました」
「ふふ、ツルツルです」
シズカさんが自然に私の顔に触れて、産毛も生えない顔を触って嬉しそうにしています。
「はっ、恥ずかしいです」
「ヒデオさんはお肌も綺麗ですね」
「元々日焼けをしない仕事ですので、シミはありませんね。冒険者を始めて肌も若返ったような気がします」
「ふふ、ヒデオさんはいつでも私のヒーローでかっこいいです」
シズカさんがいつにも増して輝いて見えるのは、私の目がおかしくなってしまったのでしょうか?
「シズカさんは、いつでも綺麗で輝いていますね」
「えっ? ふふ、それはきっとヒデオさんのおかげだと思います」
「私のおかげ? 私は何もしていませんよ」
「いいえ。きっと私はヒデオさんの前だから輝けるんだと思います」
「そっ、そうですか」
少し気恥ずかしくなってしまいました。
シズカさんはいつも若さのままに言葉を紡ぐのでこちらの方が照れてしまいます。
「バレンタインのお返しを渡したくて」
「はい」
「前回渡したものに近い物を探したのですが」
「わぁ!守護のネックレスですか?! 前に壊してしまって、せっかくヒデオさんにもらった物なので悲しかったんです。ですが、あれのおかげで私は命を助けられました」
「ええ。シズカさんは冒険者でまだまだ危険が多いと思いますので」
「ふふ、ありがとうございます。ヒデオさんに守られているとって思えるので嬉しいです」
ネックレスをつけてあげると、シズカさんがそのまま抱きついて来られました。
「ヒデオさん。ヒデオさんが、こう言うことに奥手なのは十分に承知しています。だけど、こんな嬉しいことをされたら私。我慢できなくなると思います」
「!!!」
「次に会った時は、覚悟をしておいてくださいね」
そう言って唇を重ねたシズカさんの行動に動くことができませんでした。
シズカさんと別れた私はどこからともなく視線を感じます。
「えっ?」
誰もいない。いないはずなのに、ご近所ダンジョンさんがある方角から視線を感じました。
「がっ!丸薬のお礼を持って、ご近所ダンジョンさんにもお礼をしないといけないですね」
私は言い知れぬ恐怖から唾を飲み込みました。
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あとがき
どうも作者のイコです。
いつも読んでいただきありがとうございます!
本日、ホワイトデーネタを2話投稿しましたので、明日はお休みです(๑>◡<๑)
いつも読んでいただきありがとうございます!
サポート、コメント、いいね、レビュー、全て感謝しております。
近々、中編コンテスト「賢いヒロイン」をテーマに一作品投稿しようと思っています。その際には読んで頂けると幸いです(๑>◡<๑)
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