第141話 ホワイトデー 前編

 体が動けるようになった私はミノタウロスダンジョンを後にしました。今回は、ユイさんに先にダンジョンボスを倒したことを伝えて、冒険者ギルドへ向かいました。


「ヒデオさんこちらです」

「すみません」


 前回、大量の荷物を持ち込んだためユイさんが裏口から入るように指示されました。ミズモチさんの能力でお陰で収納して持ってきますので、今回は他の人には見えないです。それでもせっかくユイさんが用意してくれたので、裏口から通してもらって、カリンさんのアイテムショップへ向かいました。


「おっ、裏口から来るなんて阿部さんもやるねぇ〜」

「カリンさん。こんばんは。すみませんが、また鑑定をお願いします」

「はいよ。それで?どこにあるの?」

「それがですね。スゴイ量があるのでどこか出せる場所はないですか?」

「出せる?う〜ん、とりあえず裏の倉庫に出してもらえる?」


 私は、初めて通された倉庫に行きました。


「ミズモチさん。こちらに出してもらっていいですか?」


『は〜い』


 ミノタウロスのドロップ品、魔石、ミルクタンクを全て放出したミズモチさんはスッキリしたご様子です。


「なっ、なんじゃこりゃ!!!」


 カリンさんがあまりの多さに驚かれております。前回の倍以上あると思います。本当にミズモチさんが、収納を取得してくれなければほとんどお持ち帰りはできなかったと思います。


「えっと、鑑定をお願いします」

「やっ、やってやろうじゃない!ちょっと待ってな!」


 私はユイさんと共に、ショップの方へ戻りました。


「今回もすごかったですね」

「ええ。私もスゴイと思います。レベルアップもできました」

「それはよかったです」

「私は、裏口を通すためだけに来たのでインフォメーションに戻りますね。鑑定が終わったら報告をお願いします」

「はい。わざわざすみません」


 私はユイさんを見送って、ショップの中を見てまわりました。


「そういえば、もうすぐホワイトデーですね。お菓子を返すと色々と問題があるのは理解できました。代わりになるものを考えていましたが、これは良さそうです。最近は、物騒な世の中ですからね」


 シズカさんに渡した守護のネックレスは、前回かなりの活躍をしてくださいました。ですから、グレードを変えて私は五つのアクセサリーを手に取りました。


「阿部さん。査定終わったよ」

「ありがとうございます。すみません。この五つを購入すると今回の査定はどうなりますか?」

「うわっ!一番いいやつ200万超えるよ。いいの?」

「ええ。それだけの価値があると今ならわかりますので」

「ふ〜ん。これだけあるってことは阿部さんが使うわけじゃないんだよね?」

「はい。ホワイトデーのお返しに色々な方にプレゼントしようと思います」

「なるほど。クッソ!私もプレゼントしておけばよかったよ。それにしても一番安いので5万って、いいの?どうせ義理でしょ?」


 一番安いネックレスだけでも五万もするそうです。

 三島さんへの日頃の感謝も込めているので問題ありませんね。


「はい。構いません」

「それにしてもこの一番高いやつは誰に渡すんだろうね?まぁいいけど。買取の前に一つだけ、ミルクタンクは買取はできないや」

「そうなのですか?」

「うん。あれは価値がつけられない。オークションとかに出せば買取手もあると思うけど。飲める期限が不明だからね。早めに処理した方がいいと思うから、自分で飲んで」

「オークション??」

「あれね。経験値牛乳って言って、飲んだ人のレベルを上げてくれるの。つまり魔物を倒さなくても経験値を貰えて、レベルが上がるってこと」

「えっ?」

「まぁ一人では飲みきれないと思うから、仲間内で分けてもいいんじゃない?」


 私はカリンさんの提案に従って、一口目は私が頂き、あとは他の冒険者に提供することにしました。

 レベルアップは誰もがしたいものなので、いっぱいいくらで冒険者ギルドが販売することになりました。

 私には、販売した売り上げからマージンが入るそうです。


「とまぁそれでよろしくね」

「それと、買取のアイテムを相殺して、残りをカードに入れて、ポイントつけておくね」

「色々とありがとうございます」

「いいってことよ。このあとはユイに報告して、守護のネックレスを渡すの?」

「はい。ユイさんにはこれを」


 それは小さな魔石がついたネックレスです。


「ふ〜ん、そっか。ユイ、喜ぶと思うよ。頑張って」

「はい。ありがとうございました」

「ユイは四番目か、残念」


 カリンさんの呟きは何を言ったのか聞こえませんでした。


「査定が終わりました。これはカリンさんからの報告書です」

「はい。ありがとうございます」

「あっ、それとこれ、バレンタインデーのお返しです」

「えっ!私にですか?うわっ、これって守護のネックレスですよね?」

「はい。日頃からお世話になっているので、それにダンジョンブレイクなどで危険な世の中です。どうかご自愛ください。これかもどうぞ私を導いてください」

「ふふ、ありがとうございます。大切にしますね」


 私は、その後は報告を終えて、冒険者ギルドを後にしました。

 ユイさん嬉しそうに何度もお礼を言ってくださいました。


 冒険者ギルドを出ると、ハルカさんが帰って来られるところでした。


「おっ、ヒデオさん。今帰り?」

「はい。ハルカさんお疲れ様です。それとバレンタインのお返しです」

「えっ?これって、結構高い奴だよね?いいの?」

「はい。ハルカさんにはたくさんアドバイスを頂いて、良き友人としてこれからもよろしくお願いします」


 ユイさんに渡した物よりも大きな魔石がついた守護のネックレスはやっぱり高いのでしょうね。ハルカさんが喜んでくださっています。

 ハルカさんは冒険者で危険も多いので、ユイさんよりも使う頻度が多いと思います。どうか無事でいて欲しいです。


「それでは失礼します」

「うん。またご飯にいこうね」

「はい。ぜひ」


 私はハルカさんにプレゼントを渡せて気分良く帰宅することができました。

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