第112話 スノーベアーの雪山 終

 片目は長さんの魔導銃によって傷つき、元さんから受けた切り傷によって全身から出血しています。


 私が与えた片腕の傷によって手負いでありながら、お二人を相手に対して善戦する気概は、A級ボスモンスターの風格と言わずにはおれません。


「やぁ、阿部君。無事で何よりだ」

「守って頂きありがとうございます!」


 肩で息をする長さんは、体力的に辛そうだ。

 ムキムキな元さんは、ビッグブラックベアーと近接で打ち合っています。

 元さんの方が完全に押し負けています。


「歳には勝てませんね。二人で勝てていません」

「お二人だからこそ、戦えているのだと思います。お二人のおかげでシズカさんを助けることができました。本当にありがとうございます」

「いやいや、諦めなかった君の勝利ですよ。それよりも倒しきれない。やつは強いです」


 魔力の残りが少なくなっているのでしょう。

 先ほどから、長さんは狙いを定めて弾数を制限されています。


 ビッグブラックベアーと戦うまでに、大量のB級魔物を対応して頂きました。


 いくら頭を下げても足りませんね。

 お二人には必ず恩を返さなければいけません。


「お二人は少し休んでください。ここからは私が」

「君の方こそ大丈夫なのかね?その胸の傷で」


 カオリさんとデートするために買ったばかりの服でした。

 今でも見るも無惨に破けて、胸には大きな傷を残してしまいました。


「大丈夫です。もう痛みはありません」

「回復魔法は凄いんだね。体力や若返りまでしてくれればありがたいんだけどね」


 息を吐いて座り込んだ長さんは、本当に体力の限界だった様子です。

 警戒はしているようですが、少しでも休んでもらいたいです。


「元さん!代わります」


 打ち合っていた元さんが距離を取ったところで、ビッグブラックベアーとの間に割り込みます。


「ふん」


 元さんも大量の汗を流していました。

 相当に緊張状態が続いていたのでしょう。


「ビッグブラックベアー!私が相手です」


 相対していた元さんと、警戒していた長さん。

 二人の相手をしていたビッグブラックベアーも、息が荒く消耗している様子です。


「ゴールド刺突!」


 ミズモチさんが与えてくれた魔力を込めて、白金さんでスキルを発動します。


「グアァァァァァァッァ!!!!」


 私の刺突を必死に避けるビッグブラックベアー。


「えっ?どうやら相当に白金さんに叩かれるのは痛いみたいですね」


 警戒してくれるなら、やりようはあります。


「白金さん。伸びてください!ゴールド刺突!!!」


 距離を測っていたビッグブラックベアーは、いきなり伸びた白金さんに驚いて飛び退こうとしました。


「空は私の領域です!突き落とし!薙ぎ払い!」


 空に飛び上がって逃げ場を失ったビッグブラックベアーに、スキルを連続で繰り出してバランスを崩します。


「アベーフラッシュビーム!!!強力バージョン」


 落下したビックブラックベアーに、白金さんによって薙ぎ払いを行いながら魔法を繰り出しました。


「グオおお!!!!


 ビッグブラックベアーはビームを受けながらも、突進をして向かってきました。


「白金さん!盾に!」


 振るわれた爪を盾で防ぎます。


「何度も受けるとは思わないでください!」


 白金さんじゃなければ絶対に受け止めることはできなかったでしょう。


 ですが、いつまでもこのままでは動くことができません。


【進化ミズモチさん】『マカセテ〜!!!』


 私へ念話で語りかけてくれた声に胸が熱くなります。

 どれだけこの声を待っていたことでしょうか、胸を締め付けるほど安心させる声が聞こえてきました。


【進化ミズモチさん】『アイスランス!!!』


 ビッグブラックベアーの横っ面にアイスランスが突き刺さって吹き飛んでいかれました。


「ミズモチさん!」


【進化ミズモチさん】『ヒデ〜ノって〜』


「はい!行きましょう。ミズモチさん。決着の時です!」


 ミズモチさんに跨り、白金さんを構えて、ビッグブラックベアーに対峙します。


「グアア!!!」


 傷つきながらも闘争心を失わない瞳は私たちを睨みつけています。


「阿部くん。私たちも手伝うよ!」

「ふん!」

「阿部さん!」


 心強いですね。

 ミズモチさんだけじゃない。

 長さんも、元さんも、シズカさんも一緒にいてくれます。


「お願いします!」


【進化ミズモチさん】『イクヨ〜!!!」


「はい!行きましょう!」


 長さんが魔導銃を撃ち、元さんが近接戦闘でビッグブラックベアーを引き付けてくれます。


「皆さん!癒しと強化を!」


 小さな傷が治っていく!それに補助魔法?初めて受けました。

 体が強化されると言うのは不思議な感覚ですね。

 シズカさんの魔法で強くなったような気がします。


「みなさん退避してください!」


 私の声に三人が距離を取り、ビッグブラックベアーが私を見ました。


「ミズモチさん!」


【進化ミズモチさん】『ヒデ〜』


「合成魔法 スノープリズン!」


 ミズモチさんが無数の氷の鏡を作り出してくれました。

 光属性で強化された氷は、ビッグブラックベアーを氷の監獄へ閉じ込めました。


「合成魔法 ミラーハウス」


 氷属性で強化された光がスノープリズンの中で乱反射されて、威力を増していきます。


「イケー!!!」【進化ミズモチさん】『イケーー!!』


 私とミズモチさんの合成魔法は強化されたレーザーとなって、ビッグブラックベアーの心臓を撃ち抜きました!


「やりました!ミズモチさん!」


【進化ミズモチさん】『ゴハン〜!!』


 ーーズン!!!


 倒れたビッグブラックベアーを食されたミズモチさんは幸せそうです



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る