第111話 スノーベアーの雪山 5
体が熱いです。
どうなってしまったのでしょうか?
何か柔らかくて暖かい物に包まれています。
ミズモチさん?
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜!!!』
ミズモチさんの心配そうな声が念話で聞こえてきます。
心配させてしまいましたね。
すみません。大丈夫です。
私は生きています。
でも、どうしてでしょう?上手く体がいうことを効きません。
おかしいですね。
先ほどまでビックブラックベアーと戦っていたはずなのに、おかしいです。
【進化ミズモチさん】『オキテ〜』
ミズモチさんすみません。
私も起きたいのですが、上手く体が動かないのです。
シズカさんを助けに来たはずなのに、自分がこんなことになって不甲斐ないですね。
【進化ミズモチさん】『シズ〜?』
ええ。私は彼女を助けたい。
雪に埋まって苦しい思いをしているはずです。
シズカさんを助けてあげたかった…… もう私にはできませんね。
【進化ミズモチさん】『マカセテ!」
ミズモチさんが代わりにシズカさんを助けてくれるのですか?
ありがとうございます。
これで心置きなく……
「死なせません!!!」
暖かい雫が私の頬に落ちました。
力強い叫び声が聞こえて痛みが和らぎました。
「シズカさん?」
「はい!ヒデオさん!私はここにいます!」
胸に大きな傷を負った私の体に少しだけ力が戻ってきます。
「どうして?」
「私の方が驚きですよ!どうしてヒデオさんがこんなにも傷ついているんですか?どうしてこんな危険なところにいるんですか?!」
「あなたを助けたくて」
私は意識がはっきりしない頭で、素直に質問に答えました。
「あなたもう、あなたは!!!いつもそうです!いつも私がピンチの時に助けてに来てくれて、もうダメだって……私は死を覚悟していたのに……雪崩に飲み込まれ死ぬんだって思ったのに、あなたがくれた守護のネックレスが守ってくれました。魔力を全て使い果たして砕けるほど、私を守ってくれたんです!
それでも雪に埋まって動けなくて、誰にも見つけてもらえなくて、魔物の叫び声が聞こえて、もうダメだって心が折れそうになっていたのに、ミズモチさんが私を見つけてくれたんです!!!」
ああ、よかった。
シズカさんは本当に無事だったのですね。
手に力が入りません。
でも、手を伸ばすことなら……
私の手がやわらかな髪に触れました。
羨ましいですね。フサフサです。
「泣かないでください」
ボヤけた視界には、クシャクシャの泣き顔を浮かべるシズカさんがいました。
「無理です。どうして私が助かったのにヒデオさんがこんなにも傷ついているんですか!上半身にこんなに大きな傷が!!!回復魔法をかけているのに少ししか回復しないなんて……」
自身の回復(小)さんは、私の魔力が尽きているので発動しないのですね。
「大丈夫です。私を信じてください」
「でも、でも、私のために傷ついて」
大きな瞳から大粒の涙が溢れて、シズカさんは泣いていても綺麗なのですね。
「あなたを決して悲しませない」
私は髪に当てていた手で、なんとか涙を拭いました。
ミズモチさん。
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜』
魔力を分けて頂けますか?
【進化ミズモチさん】『マカセテ〜!!!』
ミズモチさんから大量の魔力が流れてきました。
その瞬間、シズカさんから受けていた回復魔法が私の体に変化を与えます。
体が回復していくのを感じます。
「えっ?何が!?」
傷が塞がり、霞んでいた目が見えるようになり、腕に力が戻ってきます。
自身の回復(小)さん、さすがですね。
欠損と三大疾病以外は治せるというのは誇大広告ではないようです。
「ふぅ〜」
私は息を吐きながら体を起こしました。
血を流しすぎたからでしょうね。
めまいがします。
頭痛も少し残っています。
大量の魔力を使って治療しても、完全には治っていないということです。
それだけ大きな傷だったのでしょうね。
【進化ミズモチさん】『ヒデ〜』
私に魔力を渡してくれたからでしょうか?
ダンジョン内にいるのにミズモチさんが水餅サイズで膝の上で跳ねておられます。
ミズモチさんありがとうございます。
あなたにはたくさん助けて頂きました。
「ヒデオさん?」
私のためにたくさん泣いてくれたんですね。
シズカさん、ありがとうございます。
「大丈夫です。私はスキルで死んでいなければ回復する方法を授かっています。
魔力が不足していたので、かなり時間がかかってしまいました。
今はシズカさんが施してくれた回復魔法も効いています。ミズモチさんにもご迷惑をおかけしました」
シズカさんの顔に礼を言って、ミズモチさんを預けました。
「ミズモチさんは魔力が不足しています。どうか守ってあげてください」
「えっ?ヒデオさんは?」
「今は戦闘の最中です。戦えるなら行かなければいけません」
私たちを守るために、長さんと元さんが頑張ってくれています。
私の攻撃は通用したようです。ビックブラックベアーの片腕が動いていません。
「そんな体で!」
「奴を倒さなければ、また雪崩が起きて被害が出ます。それに私たちが帰るためにも倒さなければ危険です」
「それは!」
「大丈夫です。私は時間を稼ぐだけです。ミズモチさんが回復してくれたら一緒に戦えますから、私たちは二人で一人です。一緒に戦えば負けません」
ビックブラックベアーに向かって歩き始めます。
「白金さん!」
私が呼ぶと白金さんが私の手に収まるように現れてくれました。
「白鬼乙女さんには、またお礼を言わなければいけませんね。白金さんは大活躍です!」
私は決着をつけるために走り始めました。
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