第85話 ひっそり調査
結論は出たのですが、やっぱり気になることってありますよね。私しか入れないというところって、なんだか秘密基地のような感覚になるじゃないですか……
「ミズモチさん。入っても大丈夫だと思いますか?」
【ミズモチ】《アベ〜ゴハン~》
「そうですね。入り口だけ、先っちょだけ入れさせてもらいましょう」
私は恐る恐るご近所ダンジョンさんにやってまいりました。皆さんにご迷惑をかけてはいけないと思ったので、仕事終わりの平日です。
会社帰りに装備をつけて、ミズモチさんと二人で散歩にやってまいりました。
週末に、皆で来たときは大岩がありました。
平日の夜にやってくると、大岩はなくなっています。
他の人も一人で来たら岩はないのでしょうか?
もしかしたらご近所ダンジョンさんは、お一人様でやってきた者か、入ったことがある人限定のダンジョンなのかもしれませんね。
「失礼しま~す」
恐る恐る入り口に足を踏み入れました。
もしかしたら白鬼乙女さんがいるかも知れませんので、一応声をかけます。
「誰も居ませんね」
察知さんには、なんの反応もありません。
「ミズモチさん。本日は入り口だけですからね。鬼のお家なので、あんまりお邪魔するのは行けませんよ」
【ミズモチ】《アベ~ ハ~イ》
すぐに逃げられる入り口付近から、一番最初の小部屋があるところまでを往復しました。
距離にして100メートルぐらいなので、もしも強い白鬼乙女さんが現われても逃げ切れる距離です。
しばらくはダンジョンボスさんの扉前に行くのはやめた方が良いかもしれませんね。
【ミズモチ】《アベ〜ゴハン~》
「えっ?」
私は小部屋を覗き込んでいたところ、ミズモチさんが魔物の気配を伝えてくれます。
ミズモチさんの後に、察知さんにも反応がありました。
入り口に魔物がいます。
「白鬼乙女さんですか?」
私は恐る恐る魔物の姿を覗き見しました。
そこには白ではなく、灰色オークが立っておられました。灰色ゴブリンでも凄く強かったのに灰色オークはどれだけ強いのでしょうか?
私は唾を飲み込みます。
入り口にいるので、倒すことが出来なくても、逃げることは出来るかも知れません。
ただ、こちらへ移動をしてほしいのですが、灰色オークは腕を組み、目を閉じて立っています。
まるで、私が来るのを待っている様子です。
これは逃げるのは厳しいかも知れません。
「ミズモチさん、どうしましょうか?」
【ミズモチ】《アベ〜ゴハン~》
「やるんですね……わかりました。覚悟を決めます」
こちらを待っているという事は不意打ちはできません。
ですが、待ってくれているので先制攻撃はできるはずです。
「ミズモチさん。同時に行きますよ」
【ミズモチ】《アベ〜いくよ~》
「ミズモチさん。ウォーターランス!アベフラッシュビーム!!!」
ミズモチさんの水の槍と私のビームが灰色オークへ飛んでいきます。
「GUA!!!」
突然の攻撃に驚いて、手で払いのけようとしました。
防御に使った方の左手を負傷したようです。
灰色オークは腕をだらりとして、痛そうにしています。
やりました!ダメージを与えられます。
「ミズモチさん」
私が指示を飛ばすよりも早く、ミズモチさんが巨大化してオークを飲み込もうとしております。
灰色オークは片手でミズモチさんを払いのけようとしますが、ミズモチさんも灰色ゴブリンのときみたいに、下がるのではなく攻勢に出ております。
「ミズモチさん。援護します」
私も灰色ゴブリンのときのようなギリギリの戦いはイヤです。ですから、ミズモチさんと反対の使えない腕の方は回って攻撃開始です。
「刺突、刺突、刺突」
一度でダメなら何度でもスキルを行使して、ダメージになるまで攻撃です。
「アベフラッシュウェーブ」
魔法も出し惜しみはしません。
全力で顔を振って光を波状にウェーブをかけました。
普通のビームは一直線ですが、ウェーブは分散して灰色オークの全身を攻撃します。
「GYAAA!!!!!!」
ミズモチさんから受ける攻撃によって、動けなくなっていたところへ。
光の魔法の攻撃を受けて、灰色オークが叫びました。
「刺突!!!」
さらに心臓へ一撃を加え、最後はミズモチさんが灰色オークの全身を飲み込んで倒すことができました。
「やりました!!灰色オークを倒せましたよ!!!」
灰色ゴブリンの時よりも、ミズモチさんが攻勢に出たことで上手くいきました。
何より、灰色の魔物さんは強いと思って覚悟しているので対処の仕方も変わりました。
「おや、レベルも上がったようですね」
ご近所ダンジョンさんに出てくる魔物を倒すと、レベルが上がるのが早いように感じます。
何よりもミズモチさんの魔力回復率も他のダンジョンより良いようです。A級ダンジョンだからでしょうか?
「ミズモチさん。レベル9になったようです。帰ってステータスアップをしましょう」
【ミズモチ】《アベ〜オチテル~》
「えっ?」
ミズモチさんに言われて見てみれば、魔石以外にも小さな指輪が落ちていました。
「指輪ですね?なんでしょうかこれ?」
【ミズモチ】《おつ~》
指輪を拾ってダンジョンを出ました。
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