第84話 不思議なダンジョン

古来より、鬼とは人の心の闇とも言われています。

日本では、妖怪の類を鬼と表現する事があるそうです。


また、中国の鬼と、日本の鬼の扱いもまた違った表現で表すことがあります。


中国では、魔法の様な力を使う人たちは、武術を極めた仙人として、その心の有り様が悪き時、鬼へ落ちて行くそうです。


私が見た白鬼乙女さんは、綺麗な娘さんでした。

もしかすると中国の仙人さんなのかもしれませんね。

仙人さんは歳を取らないとも言われているので……


なんて現実逃避をしておりますが、私は現在反省中です。いくら慌てていたと言っても、年若い女性の胸や足に触れてしまうなど、してはいけない行為です。


お二人は優しいので……


「ヒデオさん。今回は事故やったから許したるけど、こう言うことはちゃんと付き合ってからやないとあかんよ!」

「はい。すいません」

「私やったからええもんの。他の人やったら痴漢やで!」

「はい。すいません」

「そう言うことが、したいなら二人の時にしてくれんと」


ハルカさんには怒られてしまいました。

優しく諭され謝ることしかできません。

怒られた内容は、覚えていませんが、とにかく私が悪いのです。


「ヒデオさん。外であんなことしちゃダメですよ!メッ!」


シズカさんは、あまり怒っていませんでした。

足を触ってしまって申し訳ないです。


「二人きりの室内ならまぁ」


小さな声で呟いて、何を言われたのかわかりませんでした。ただ、怒っているというより、恥ずかしそうにしていたので、こういうことに慣れていないのが、より申し訳ないです。

オジサンに触られたと、トラウマにならないことを祈るばかりです。


【ミズモチ】《アベ〜アウト〜》


ミズモチさんにもダメ出しを受けました。


かなりショックで凹んでしまいますね。


結局、ご近所ダンジョンさんは、閉鎖扱いになりました。私に起きた不思議な出来事は、説明が出来なかったからです。

昨夜、ダンジョンに入れたのも、私だけがダンジョンの前にあった大岩をすり抜けたことも、意味が全くわかりませんでした。


ハルカさんに、説明を求められても状況を伝えるだけで、私自身に何かがわかっているわけでは無いからです。そのため、大岩で現在もご近所ダンジョンさんは閉鎖状態。追って調査は必要であるが、現在は危険が低いと判断されました。


私が見た灰色ゴブリンや、白鬼乙女さんについても、勘違いだったのではないかと結論つけられました。


それでもユイさんだけは……


「ダンジョンは、どんな不思議なことが起きてもおかしくありません。ヒデオさんの報告は、もう少し調査を重ねる必要があると私は判断しています。

ギルドマスターには私から報告しておきますので、調査するなら報告をお願いします」


そう言って依頼の継続を提案してくれました。

ユイさんだけは信じてくれたようで嬉しいです。


自宅に戻った私は本日の不思議な体験と、とんでもない体験を振り返りました。


「ミズモチさん。ご近所ダンジョンさんとはなんなのでしょうね?」


【ミズモチ】《ゴハン》


「いやいや、ミズモチさんの魔力を補給するために行っておりましたが、今後は警戒しないといけませんよ」


灰色ゴブリンだけでも、強敵でしたが、ボスさんには絶対勝てません。


「女性は色々と柔らかかったですね」


考えてはいけないと思いつつも、顔や手に残る感触は忘れられないものです。


私、女性に触れる経験もほとんどありませんでしたから、新鮮と言えばいいのか申し訳ないです。


「こんなことを考えていてはいけませんね」


ノロノロとミズモチさんがお膝に乗ってこられました。


「ふふ、ミズモチさんも、もちもちプルプルで気持ち良いです」


【ミズモチ】《アベ〜ナデテ〜》


「はい!承知しました」


冒険者として、生活していると不思議な体験をたくさんするものですね。


これまで味わった事のないことばかりです。


「全てはミズモチさんのおかげですね」


【ミズモチ】《アベ〜ナ〜ニ〜》


「そういえば、最近はアンジェさんのブログを見ていませんでした」


私はスマホをとって、片手でミズモチさんを撫でながらブックマークしているアンジェさんのページを開きます。


「スライムの進化の法則!」


面白そうなタイトルに釣られてページを開きました。

アンジェさんは十匹のスライムさんと契約を結んでいるそうです。


かなりベテランテイマーさんですね。


私はミズモチさん一人でキャパが限界です。


アンジェさんのブログには、スライムにはレベル10になると進化が訪れるそうです。

これまでの生活や環境によっても進化が変わってしまうそうです。


泥や沼地で育ったスライムはドロスライムへ。

地下やゴミが多いところで育ったスライムはポイズンスライムへ。


他にもたくさんのスライムへ進化するそうです。


「ミズモチさん、あと二つレベルを上げると進化できるそうですよ」


【ミズモチ】《アベ〜シンカ〜》


「私ですか?そういえば皆さん上位ジョブって言われてましてね。テイマーの上位ってなんでしょうね?」


また、検索をかけてみようと思いながら、スマホを置いてミズモチさんのスライムボディを堪能しながら、本日の反省について癒されました。

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