第83話 ご近所ダンジョン 調査
ハルカさん、シズカさん、ミズモチさん、私の四人でご近所ダンジョンの調査へとやってまいりました。
ご近所ダンジョンさんは、街から少しだけ離れた裏山的な場所にあります。
いつも夜に来るので、お昼にやってくるのはとても新鮮な気分ですね。
夜に来ると見えない物が多いので、気づいていませんでしたが、意外に住宅が近くに建てられていました。
子供の足で裏山に登るのは、あまりないかもですが、普通にランニングコースとかに使われそうな裏山です。
そうだと思っていたら、裏山の正規の入り口は冒険者ギルドの名前で閉鎖されておりました。
全然知らずに初心者の頃から入り浸っていましたね。
「ヒデオさん。どないしたん?」
「いえいえ、お昼に来るのが初めてなので、景色を初めて見たなぁ〜と思っただけですよ」
だから、山の中は誰もいないと思っておりました。
ちゃんと冒険者ギルドの方が管理されていたのに、勝手に入って悪いことをしましたね。
一応は冒険者ならば、入ることができるようです。色々勉強不足でしたね。
「どのあたりに入口があるんですか?」
シズカさんに声をかけられて、私は景色を見るのをやめました。いつもの場所へと向かって歩き始めます。
「あれ?」
ですが、いつもの入り口に辿り着いたところで、異変に気づきました。
「うん?うわ〜でっかい岩やね。これはちょっと重機でも持ってこな。退けられへんわ」
「そうですね。これはちょっと人の力ではどうすることもできませんね」
ハルカさん、シズカさんが見上げる目の前には大岩があって、ダンジョンの入り口が完全に封鎖されていました。
「ヒデオさん。ほんまに昨日入ったん?」
「はい!そのはずなんですけど」
私の目の前にも大きな岩が立っています。
二人が石を叩いたり触ったりしていますが、絶対に退けるのは難しそうです。
せっかく来て頂いたのどうして岩があるんでしょうね?
私も二人に習って岩を叩こうとして、体が吸い込まれてしまいました。
「えっ?」
「うわっ!ヒデオさん!」
「えっ?ヒデオさん?!」
二人の声が聞こえると同時に、ミズモチさんが私に向かって飛びついてきてくれました。
【ミズモチ】《アベ〜》
「いたた、どうして?」
私が顔を挙げると白い髪をした、美しい女性の鬼さんが目の前に立っておられました。
「えっ?」
私の声に鬼さんが驚いてこちらに気づきました。
「あっ!すみません。勝手にお邪魔して」
【ミズモチ】《オジャマ〜》
額にツノが生えている以外は、完全に大人の女性にしか見えない鬼さんです。ここは彼女の家なのでしょう。邪魔してしまいました。
しかも着物を脱がれているところで、着替え中でございます。
「GYAAA!!!」
あっ、これは魔物さんと同じ鳴き声……
つまり、彼女は魔物で、こちらのダンジョンにおられるということは……
「あぁ、ご近所ダンジョンさんのボスさんですか?いつもお世話になっております。阿部秀雄です。こちらは相棒のミズモチさんです」
【ミズモチ】《ヨロ〜》
私も気が動転していたのだと思います。
魔物さん相手に自己紹介をしてしまいました。
頭を深々と下げたタイミングで、私の頭があった場所に凄い風圧が過ぎていきました。
白鬼乙女さんの細い腕が平手打ちをしたようです。
「あっ、はは。そうですよね。お着替えにお邪魔したのに何を自己紹介してるんだって思いますよね。
すみません。お邪魔してしまって、すぐに出ていきますでの」
【ミズモチ】《バイバ〜イ》
私は急いで立ち上がって、ミズモチさんと共に大岩へと突進しました。入ってきた時同様に、すんなりと通り抜けられました。
「「あっ!」」
扉の前に立っていたお二人と目が合った瞬間には、ぶつかってしまいました。
「イッタ〜!!!ちょっとヒデオさんどこ触ってるん!」
「あっ。ダメ!ヒデオさん。外では」
ハルカさんの豊かな胸に顔を埋めて、シズカさんの太ももの間に手が挟まれています。
私の上にはミズモチさんが乗っているので、すぐに退くことができません。
「すっ、すみません!!!」
それでも急いで二人から距離をとって、大岩を見るために振り返りました。
「えっ?」
白鬼乙女さんが追いかけてきていると思ったのですが、そこには大岩があるだけで白鬼乙女さんの姿はありませんでした。
「何なんヒデオさん!どうなってるん?」
「ふぇ〜阿部さんに触られた〜」
ハルカさんに詰め寄られてしまいます。
説明を開始した私はチラチラとダンジョンに視線を向けます。シズカさんに謝りたいのですが、一先ずはここから離れることを提案しました。
「ここでは話しきれないので、場所を変えましょう!」
私の真剣な顔にハルカさんは息を吐いて応じてくれました。
「ちゃんと説明してや!」
私はもう一度ダンジョンの入り口を見て、急いでその場を離れました。
シズカさんには土下座で謝りましたが、何故か顔を赤くして許してくれました。
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