第53話 ご近所ダンションにご挨拶
帰ってきても、ダラダラしているわけには行きません。
朝起きてから、ミズモチさんとご近所ダンジョンへ魔力補給を兼ねた散歩に向かいました。
レベルが上がっても魔力を補給しておかないと、ミズモチさんがしんどくなってしまいますからね。
これだけは欠かすわけにはいきません。
「ミズモチさん、今年もお世話になりますので、挨拶に行きましょう」
《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》
昨年はお供え物を持って行きましたが、本日は何もなくミズモチさんと二人で手を合わせました。
「今年もお世話になります。危険は少なめでお願いします」
私とミズモチさんにとっては、神社に行くよりも実用的な場所なので、安全に存在していて欲しいですね。
「さて、ミズモチさん帰りましょうか?」
《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》
ですが、挨拶をした後からダンジョンの出口に魔物がいることを察知さんが教えてくれています。
「ハァー新年一発目は、ご近所ダンジョンさんで開始ですね」
《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》
「明日からは仕事です。その前の肩慣らしといきましょう。ミズモチさん、よろしくお願いします」
《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》
ゆっくりと出口に近づいて行くと、そこにいたのはゴブリンではなく、オーガでした。
大阪で戦ったはずのオーガたちよりも小さいのですが、どこか精悍なイメージがします。
「ゴブリンではないですが、ミズモチさんいけますか?」
《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》
「わかりました。それでは最初から全力で行きましょう。油断して負けてはいけませんからね」
息を整え、装備を確認します。
今年最初の戦いを負けるわけにはいきません。
「行きます。ミズモチさん、ウォーターカッター」
ミズモチさんから切り裂くための魔法が放たれると、オーガはわかっていたように手に持った金棒で防ぎました。
「武器持ちオーガ!大阪にはいませんでしたね」
それも魔法を防げるのは想定外です。
「どうすればいいでしょうか?」
私が戸惑っていると、オーガがこちらへ歩み寄ってきます。後退りをすると、ミズモチさんが前に出ました。
「ミズモチさん!」
ミズモチさんとオーガは一定の距離で立ち止まって、睨み合うようにしています。物凄い緊張感です。
いったいどうなってしまうのでしょうか?
《ミズモチさんはプルプルしながら、頂きますと言っています》
「えっ?」
ミズモチさんは突然巨大化してオーガを飲み込みました。抗おうとするオーガが金棒を振りまわしますが、ミズモチさんの身体に包まれていきます。
オーガの動きが鈍り、上手くミズモチさんを振り払えていません。
「ミズモチさん凄いです!今がチャンスですね!プッシュ。ダウン」
ミズモチさんが包み込めていない、オーガの身体へ攻撃を仕掛けます。
ここまで接近してしまうと、かばうの意味がないので、ただ攻撃あるのみです。
しばらく攻防が続いておりましたが、オーガがもがくのをやめて金棒が地面に落ちました。
残されたのは魔石と金棒だけです。
「何故でしょうね?いばらき童子さんよりも強く感じてしまいました。ミズモチさんがいなかったらと思うと」
私は小さくなったミズモチさんを抱きしめました。
「ありがとうございます。本当にミズモチさんは頼りになります」
《ミズモチさんはプルプルしながら、ありがとうと言っています》
「ミズモチさんも、お礼を言ってくれるのですか?ふふ、お互いに助け合いですね」
いつもながら魔石は経験値として吸収しました。
ゴブリンよりも大きかったのですが、どこで狩ったのか説明が面倒だと感じたからです。
三日は早朝から大変でしたね。
午後からは新年の挨拶も兼ねて、冒険者ギルドへ向かうことにしました。
ミズモチさんは、頑張ってくれたので家でコタツでヌクヌクしておられます。
「水野さん、新年明けましておめでとうございます」
インフォメーションには、水野さんが振袖を着て座っておられました。
「阿部さん、新年あけましておめでとうございます!!!本年もよろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします!あ、これ実家に帰ったお土産です」
私は母さんに持たせてもらった大阪お土産を渡しました。
「ご丁寧にありがとうございます。八つ橋?京都なのですか?」
「いえいえ、大阪なのですが、お土産ならお菓子がいいだろうと母が持たせてくれました」
「ふふ、良いお母様ですね」
水野さんはお正月仕様だからでしょうか?いつもよりも美しさ5割増しです。なんでしょうね……大阪の受付さんとどうしても比べてしまうので……とても綺麗です。
「今日は振袖で、一段とお綺麗ですね」
「そうですか?ギルドの方針なので、面倒ですが、結構楽しいですよ」
水野さんは仕事人ですね。
「まぁ、受付の子は全員着るので目立つことはありませんからね」
「いえいえ、私受付にいかないので知りませんから、水野さんで胸一杯です」
「ふふ、ありがとうございます。そうだ。阿部さんも冒険者になられて四ヶ月ほど経ちますので一度更新をされてみませんか?」
「更新ですか?」
「はい。冒険者の方はある程度、魔物を倒して実績を積んでいればランクアップされるんです。阿部さんの実績次第なら、Cランクへ昇級も出来ると思います」
なるほど、確かに冒険者さんたちはランクを上げることで報酬がアップするとか言っていましたね。
入れるダンジョンも増えて……う~ん、危ないことはしたくないので、あまり昇級はしたくないのですが、せっかく水野さんが勧めてくれているので……
「それでは更新をお願いします」
「はい」
私は冒険者カードを提示しました。
水野さんが調べてくれている間に、水野さんを眺めていると……横顔もお綺麗でした。
「完了しました。今の阿部さんですと、レベルが6に到達しているので、Cランクへ昇格が可能です。昇格試験を受けられますか?」
「試験?試験とは何をするのでしょうか?」
「Cランクへは教官の前で戦闘模擬戦を行います」
「戦闘模擬戦?」
「はい。教官の前で使える技や戦闘の動きを見てもらって、Cランクに上がっても大丈夫なのか審査をします」
なるほど、運転免許の実技試験のようなものですかね?やらないとダメですかね。
「受けて頂くと、入れるダンジョンが増えるのと、危険手当の報酬に上乗せを受けられます」
ブラック企業の安月給である私へ報酬アップ……これは受けるしかありませんね。
「わかりました。受けます。ですが、今日はミズモチさんがいませんので後日でも?」
「構いませんが、本日は空いているのですぐにお通しできますよ?」
ミズモチさんがいないのは不安ですが、せっかく水野さんが進めてくれていますので……
「……わかりました。落ちてしまうかもしれませんがやってみます」
「それでは試験受講を登録しておきますね。時間は13時になります」
腕時計を見ると12時30分を差していました。
あと30分なので、カリンさんのところへ金棒を売りに行きましょう。
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