第54話 昇格試験 Cクラス

いつもは作業着姿のカリンさんも、本日は着物姿です。


ハーフ美女であるカリンさんは、豪快に裾を捲って足を出しているのでセクシーさが半端ないです。


「おう、明けましておめでとう。阿部さん」

「はい。新年あけましておめでとうございます!!!今年もよろしくお願いいたします。カリンさん」

「あんたは相変わらず丁寧だね。それで?来たってことはなんか持ってきたんだろ?査定するから出しな」

「その姿でされるんですか?」

「当たり前だろ。私の仕事だからね」


男前なカリンさんへ金棒(品質 良)をカウンターに置きました。

かなり重かったのですが、冒険者さんたちは武器を持ち歩いている方も多いので、目立ちはしませんでした。


「金棒か……じゃあ査定をするからちょっと待ってて」

「はい。よろしくお願いします!」


時間はあまりありませんが、一つだけなので査定もそれほど時間はかからないでしょう。

試験会場は、ギルド内にある訓練所を使うそうなので、事前調査済みです。


「阿部さん、出来たよ」

「あっ、はい。早いですね」

「金棒(品質 良)はあんまり人気ないんだ。重いし、使い勝手も悪いからね。魔力量は多いみたいだから加工品としては使えるかもね。50万ってとこ」


人気が無いのに(品質 良)のおかげなのか50万です!!!

私の給料の二倍以上……冒険者の方々の年収はどうなっているんでしょうね。

……いばらき童子ダンジョンの報酬と合わせて、年収の半分を稼いでしまいました。


「はい。カードに入金しといたよ。今日はどうする?」

「すみません。今から昇格試験を受けに行くんです」

「そっか、また買いにも来てね」

「はい。また来ます」


私は昇格試験の会場についたところで、見知った顔を見つけました。


「湊さん、高良君、鴻上さん、新年あけましておめでとうございます」


若者三人組を見つけたので、声をかけると三人とも以前よりも輝いていました。


「あっ!阿部さん明けましておめでとうございます」


すぐに湊さんが笑顔で近寄ってきてくれました。


「先輩、あけおめです!!!」

「阿部さん、明けましておめでとうございます」


高良君と鴻上さんも挨拶をしてくれるのですが……二人とも……湊さんと同じぐらい輝いています。


高良君は元々イケメンでしたが、イケメンに磨きがかかって俳優さんのようです。

鴻上さんは、少しキツメの美人と言った印象でしたが、強さと美しさを兼ね備えた大人の女性にクラスアップした感じです。


「さっ、三人とも凄く輝いていますね!」

「シズカが魅力を取ってスゲー変わったんです。だから、俺たちも取ったんですよ。なぁ、サエ」

「ええ、そしたら魅力だけでなく、気持ちもなんだか余裕が出来たんです。そのおかげでレベル6を越えることができました」


若者のエネルギーとは凄いものですね。

三人の近くにいると、私がくすんで見えますね。


そっと、湊さんが私の耳元に近づいてきました。


「ミズモチさんと、阿部さんも、写真で凄く輝いてましたよ。私、年始から拝んでしまいました」


湊さんはやっぱり良い子ですね。

ふふ、オジサンの一発芸を楽しんでもらえたなら良しとしましょう。


「阿部さんも昇格試験を受けられるんですね」

「ええ、たまたま本日は人数に空きがあったそうなので」

「一緒に頑張りましょうね。阿部さんなら絶対大丈夫だと思います」


湊さん、笑顔があざと可愛いです。


三人とも冒険者らしい格好をして準備万端な状態で試験に挑んでいる。対して、私はコートにニット帽、折りたたみ杖ですが大丈夫でしょうか?


「それでは昇級試験を始める。本日は10名ほどだな」


なんと、試験官をしてくれるのは初心者講習の際に講師をしてくれた山田講師でした。

試験官という響きに緊張していましたが、知り会いばかりでなんだか安心ですね。


「試験は、魔法を使える者は魔法を、アクティブスキルを使う者はアクティブスキルを見せてくれ」


おや?私はどっちも使えますが、どうしましょうか?う~ん、魔法はあまり人前で見せたいものではないので、アクティブスキルでいいでしょうか?


「それじゃ一人ずつ、あの案山子に向かって攻撃をしてくれ」


試験は一人ずつ行われるようで、その間は見学です。

武器を持って何やら技名をいいながら放つ人が多い中で高良君の番になりました。

ソードマンという職業になった高良君の剣を見るのはゴブリンと戦ったとき以来ですね。


「はっ」


それは静かに振るわれた剣でありながら、案山子に対して凄まじい衝撃を与えた事が分かる一撃でした。


「うん。良いスマッシュだ」


どうやら剣を使ったスキルのようですが、私の杖とは大違いでカッコイイですね。

その後も、鴻上さんが巨大な火球を作り出して案山子に放ち。

湊さんが、肉体強化バフ魔法をかけて案山子を杖で叩いていました。


三人とも前よりも確実に成長しています。


「最後は……阿部さん」

「はい」


私は、杖を使ってプッシュをすることを考えましたが、それだけでは芸がないように思えたので「ライト!」と言って全員に目くらましをしてみました。


「うわっ!それは不意にやられるとヤバいな……ただ、なんで頭が光るんだ?」

「それはわかりません」


数名の受験者が私の頭部が光ったことに笑っておられます。ふふ、私も若者たちのように輝きたいのですよ。意味は違いますが……


「よし、ここに集まった者は、全員合格だ。

C級は初心者からどれだけ成長したかを見る試験なので、自分の能力を使えるかが重要になる。

自分の命を守ってくれるのは自分の能力だ。

だからこそ、覚えていてほしい。

大技もいつかは必要になるが、今日使ってくれた基本的なスキルこそが、君たちの命綱になることが多いということを」


山田講師は、良いこと言いますね。


なんでも派手に大技を使えればいいわけではありませんからね。


「それじゃあ冒険者カードを受付で提示してくれれば、C級へ昇格出来るようにしておく。

詳しい説明は受付でしてもらえるから、C級冒険者の注意事項を聞いてくれ。説明が終わる頃には更新も終わっていると思うからな。ちゃんと聞くように」

「「「ありがとうございました!!!」」」


受験者たちが声を揃えて山田講師へお礼を告げて、訓練所を後にしました。



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