第49話 実家はいいなぁ~

ダンジョンから脱出を果たした私たちは、なんとか車まで戻ってくることが出来ました。


「ハァ~なんとかなりましたね。おっ、夜が明けますね」


一息つくとはこのことですね……一夜をダンジョンで過ごすことになるとは思いもしませんでした。

私が日の出を見ていると、後ろから梅田さんに抱きしめられました。


「なぁ、阿部さん。私は間違ってたんかな?」


何を……とは聞けませんね。

きっと、失った二人の気持ちのすれ違いは、私には理解できるものではありません。


「他人同士が全てを理解し合うことは本当に難しいと思います。ただ、どっちもお互いのことを思い合っていたのは真実だと思いますよ」


「……ウンンンン」


梅田さんから嗚咽が漏れ聞こえました。

ここまでよく我慢しました。

そっと、ミズモチさんが大きくなって風よけをしてくれています。


本当に出来るスライムさんですね。


それからしばらく梅田さんが泣き止むまで、私は背中を貸して……ミズモチさんは風避けになってくれていました。


車の運転が出来るようになった梅田さんに送ってもらい、実家へと帰ることが出来ました。

彼氏さんの遺品も見つかったので、私もお役御免ですね。


「なぁ、阿部さん。私とメッセージ交換してくれる?」

「もちろんです。普段は東京で会えませんが」

「そんなんええよ。今度は私が東京に会いにいくわ」


年の離れた友人が出来ましたね。


「とりあえずはケジメはつけた!あとは気持ちの整理だけやから」

「はい。今年最後の日に決着がついて何よりです。明日は一日ゆっくり休んでください」

「そうする。むちゃ眠いわ」

「それでは良いお年を」

「良いお年を!


スマホでmainのIDを交換した私たちは今年最後の挨拶をして別れました。


実家に帰った私はゆっくりしようと思っていたのですが、家では年末年始の大掃除をしていたので手伝いますよ。

両親が出来ないことも増えているので、窓掃除や高いところを拭いたりと言われるままに掃除を手伝います。


大掃除って、やり始めはしんどく思いますが、終わってしまえば気分がスッキリして気分がいいですね。

疲れていたはずなのに、やり出すとついつい頑張ってしまいました。


今年最後の親孝行をすることができて、ちょっと気持ちがいいですね。


母と父は、駅前へ買い物に出てしまいました。

私へ美味しい物を食べさせるんだと言っていました。

無事に帰ってきたことを喜んでくれて嬉しいです。


「ミズモチさん。掃除を手伝ってくれてありがとうございます」


《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》


ミズモチさんは不要な物を運んでくれたり、消化してくれたりしました。


「いろいろ消化しましたが、大丈夫ですか?」


《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》


私としては変な物を食べてはほしくないのですが、ミズモチさんは全然大丈夫だと言わんばかりに両親が差し出す物を食べ物から要らない物まで消化していました。


「大丈夫ならいいのですが、無理はしなくていいですからね」


《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》


両親が買ってきてくれたカニを鍋にして食べました。

そのあとは年越しうどんで締めます。

家は昔から年越しはうどん派です。

関東にいるときは蕎麦を食べることもありました。


色々と気持ちが落ち着いて寝付いてしまい気付いたら年末の紅白が佳境に差し掛かっておりました。

最近の若い子たちの歌はわかりませんね。


今年流行ったアニメソングは、newtubeで聞いたことがありました。新しいバンドは全然わかりませんでした。


紅白が終わって、0時を過ぎるとスマホの通知音があり画面にはメッセージが入っていました。


【湊】『明けましておめでとうございます。昨年はお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします』

【矢場沢】『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします』

【梅田】『阿部さん、明けましておめでとう。今年もよろしくお願い申し上げます』


昨年は誰からもメッセージが届かなかった私へ三人の女性からメッセージが届いて感動ですね。


私はこの感動を表現したいと思います。


「ミズモチさん。ご協力頂けますか?」


《ミズモチさんはプルプルしながら、何を?と言っています》


「父さん、写真を撮って頂けませんか?」

「任せなさい」


「ミズモチさん、まずは小さくなってもらえますか?」


《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》


「父さん。一枚目です」

「うん。良い出来や」


写真を見せてもらって、次に移ります。


「ミズモチさん。次は中くらいの大きさでお願いします」


《ミズモチさんはプルプルしながら、はいと言っています》


私は、光量を抑えて、後ろを向いて写真を撮りました。


「ほう~面白なぁ~」

「父さん。ご協力ありがとうございます」


日付が変わった時間に親に協力してもらうのは気恥ずかしいですね。


「母さんにも送ってや」

「はい」


私は二枚の写真を送付して三人に同じ文章を送りました。


【私】『明けましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします』


母さんが撮影してくれた鏡餅とは違うバージョンです。


ミズモチさんを頭のてっぺんに乗せた正面バージョンと、私が後ろを向いて、ミズモチさんに後光が差し込むご来光バージョンです。


縁起が良いような気がしますね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。


今年最後の投稿です。

本年は大変お世話になりました。

たくさんの方々に読んで頂き大変嬉しく思っております。


来年も頑張って面白い話が投稿出来るようにしますので、どうぞお付き合いくだされば嬉しく思います。


それではよいお年を(^_^)


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