第18話 ポイント制度とタッチ機能

 冒険者カードは色々と凄いのです!!!


 電子決済……恥ずかしながら、某有名ペイさんもダウンロードしていません。

 色々と機能があって便利なのはわかるんですけど……なんだかわからない物に手を出すことが恐れ多いといいますか……


 でも、この度電子決済にデビューすることになりました。冒険者カードで電子決済できるそうです!


「何か買われていきますか?」


 買取り所のお姉さんに問いかけられて、私は戸惑ってしまいます。


「えっと、今から下ろしてこないとお金が……」

「えっ?ああ、冒険者初心者?」

「はい。私冒険者初心者マークです」


 渾身の元気を振り絞って言って見ましたが、お姉さんにスルーされました。


「冒険者カードは身分証だけでなく、銀行カード、デビットカード、電子決済も出来るよ。他にもスマホと連動させたアプリを使えば討伐数の確認とかも出来るよ」


 インフォメーションの水野さんに教えてもらったアプリは物凄い色々な機能を秘めていました。

 買取り所のお姉さんが親切に説明をしてくれたので、聞いたからには何か買わないと悪いと思ったので、私はショップ内を見て回り杖を見つけました。


「あの、これって何が違うんですか?」


 白い杖と黒い杖。

 どちらも同じような杖なのに値段が全く違います。


「白は自己修復の杖だね」

「自己修復?」

「ああ、そいつは傷ついても、折れても自分の内蔵する魔力で回復するんだよ。まぁ魔力切れを起こしたら魔力を補給すればいいし。その値段も妥当だね」


 白杖さんは300万でした。高すぎませんか?


「こっちの黒杖さんは?」

「黒杖?ああ、そっちは壊れない杖だよ。ただ硬いだけの杖で魔力もそれほどない。普通の杖よりも頑丈ってだけだから」


 黒杖さん3万です。魔力のあるなしっていったい……


「それじゃあ、この黒杖さんをください」

「杖を? 珍しいね。杖を武器にする人は少ないから。う~ん、初心者だしまけとくよ」


 そう言って冒険者カードで決済をタッチすると、ピロリンと音がなって、三万円引き落とされましたと連絡がアプリに来ました。


 まけてくれるのでは?


「うん? ああ、ポイントも知らないか、ちょっと貸して」


 私は買取り所のお姉さんにスマホを渡すと、アプリの画面を操作してお姉さんがポイント画面を見せてくれました。


「冒険者ポイント。これを貯めると商品と交換できるから、貯めといて」


 ポイントは本来100円で1ポイントだそうなのですが、10円で1ポイントを付けてくれたそうです。

 つまり、3万円分の杖を買ったので3000円のポイントを付けてくれました。

 1割引!大きいですね!


「ありがとうございます」

「あんた面白いね。あたしはカリン。あたしが居るときに買い物してくれたら、またポイントでサービスしてやるよ」


 カリンさんは豪快な感じのハーフ美女さんです。

 作業着が男勝りですが、話していて気持ちの良い女性でした。


 臨時収入は2万まで減ってしまいましたが、元々3万は多めに頂いたお金なので、黒杖さんは良い買い物が出来たと思います。


「ミズモチさん、本日は奮発して焼き肉にしましょう」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「ふふ、ミズモチさんも喜んでくれますか?ミズモチさんは、お肉好きですからね」


 私はさっそくお肉屋さんにやってきました。

 いつもはスーパーですが、本日は奮発します。

 カルビにレバーにロース……年齢と共に量は食べれなくなったのですが、食べない分はミズモチさんが食べてくれますからね。


 私はタンとハラミが好きなので、それも買って、ソーセージと豚トロにハァ~買い物が楽しいです!!!焼き野菜も忘れませんよ。


「阿部さん?」


 八百屋さんで、ダンスを踊りたい気持ちで野菜を選んでいると声をかけられました。


「ふぇ?矢場沢さん!どうして?」

「ここ、私の家から近いので……それにしても凄い荷物ですね」

「ええ、ちょっと臨時収入が入りまして、本日はミズモチさんと焼肉パーティーをしようと思うんです」

「焼肉ですか……いいなぁ~」


 おや?矢場沢さんが羨ましそうな目をしている……う~ん、これは誘っても良いのでしょうか?


「良ければ一緒に食べますか?」

「えっ?いえ、そんな悪いですよ」

「いえいえ、見ての通り大量に買ってしまって、二人では大変なんです」

「そっ、そうなですか?」

「ええ。ミズモチさんと二人暮らしなので、お嫌ではなければですが」

「そんなの全然嫌じゃ無いです!焼肉食べたいです!」


 矢場沢さんお肉が好きなんですね。

 今日は奮発しましたから、お家で焼肉は最高ですよ。


「失礼します」

「どうぞ、狭いですが、こちらへ」


 私は座布団を出して、テーブルの前に座って頂きます。

 リュックからミズモチさんダンボールへ移動させていると視線を感じました。

 矢場沢さんが興味深そうにこちらを見ておられます。


「ご興味ありますか?」

「えっ?いえ、大丈夫なのかなって」

「ミズモチさんはとても優しいので大丈夫です」


《ミズモチさんはプルプルしています》


「ミズモチさんも触ってもいいよと言ってますよ」

「えっ?プルプルしていただけでは?」

「私テイマーなので、なんとなく分かるんです」

「へぇ~なんだかいいですね」


 矢場沢さん!笑うと可愛いです。


 ふぅ~不意打ちの笑顔に胸がドキドキしてしまいました。40代独身男性の部屋へ来てくれた事だけで嬉しいです。我が理性よ!今こそ力を発揮するときです。


「ミズモチさん、矢場沢さんのお相手をお願いします。私は焼肉の準備をしてきますので」

「あっ、私手伝いますよ」

「いえいえ、矢場沢さんはお客様です。どうぞドッシリ構えてお待ちください」


 私は手早くホットプレートを用意して、肉のラップを外して割り箸と、焼き肉のタレを入れるお皿を用意します。


「飲み物は何を飲まれますか?ビールもありますよ」


 ミズモチさんが来てから飲む量が減ってしまっているので結構余っています。


「えっと、ならビールで」


 矢場沢さんはビールが飲める人でした。


「はい。それでは乾杯から!」

「はい」

「ミズモチさん。あなたが来てくれて焼肉まで食べられるようになりました。ありがとうございます!!!乾杯」

「乾杯!」


 ミズモチさんへ肉と野菜を山盛りで提供すると《ミズモチさんはプルプルしています》と感動しているのが伝わってきます。


「美味しい」

「今日は奮発しましたからね。お肉屋さんでも良いお肉です。どんどん食べてください!」


 ビールに焼き肉、目の前には矢場沢さんとミズモチさん。


 この間まで一人だったのがウソのような賑やかな光景に嬉しくて飲み過ぎてしまいそうです。


 明日は祝日なので、飲んでもいいですよね?



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