第17話 私のヒーロー

【side湊静香】



私、湊静香には二人の友人がいます。

高良勇気君と、鴻上冴ちゃんと言って幼い頃から小中高と同じ学校に通っていました。


親同士が友人だったこともあり、家族で旅行などにも行っていて、将来は何になるのか、三人でよく話をしました。


そんな私たちの高校生最後の年、サエちゃんが、ユウ君に告白をしました。


ユウ君は運動も出来て、顔もそこそこ良いので女子から人気があり、サエちゃんも気が強いところはありますが、綺麗な顔をしているので、高校でも有名な美男美女カップルが誕生しました。


私も二人を祝福していましたが、二人の将来を聞いて驚きました。


「シズカ。私、冒険者になるわ」

「えっ?サエちゃん冒険者になるの?」

「ええ。だって、ユウが冒険者になりたいって言うから、そのうち有名になってダンジョンカップルチューバーとかになるかもね」


楽観的なユウ君は運動が得意なのですが、少し頭が良くありません。

サエちゃんも見た目は綺麗なのですが、勉強が好きではないので……私は二人のことが凄く心配になりました。


「二人が、冒険者になるなら私も一緒になろうかな?」

「えっ?シズカが冒険者?やめておきなさいよ。あなたトロいじゃない。それともユウに気があるの?」

「ないない。だって、私年上好きだもん」

「まぁ、シズカは前からそうよね」


ユウ君は顔は良いけど、子供っぽくて男性というイメージがありません。

私のタイプは、男らしくて勇敢で、それでいて堅実に物事を考えられる人がいいと考えています。


二人がしっかりと冒険者になれば、私は冒険者をやめて普通の仕事をしようと思って、始めた冒険者は本当に大変でした。


冒険者登録

冒険者の講習会

ダンジョンへ向かう準備や移動手段


それらを二人は全然考えていないんです。


登録は二人で行ったようですが、冒険者職業もカッコイイからと言う適当な理由で決めたそうです。

本来は、初心者講習会を受けて、魔物を倒させてもらうとレベルが上がってから、出現する職業を選択するのです。その職業になりたいと強く思ってしまうと、職業は自動的に決定してしまうそうです。


そのため、ユウ君が昔からしていた剣道に近いと言う理由でソードマンに、サエちゃんが魔法を使いたいということでマジシャンになったそうです。


それは別にいいと思います。


ですが、ソードマンが使う剣がメチャクチャ高いんです。剣は魔物からドロップした品物しかなく、ドロップした品には魔力が帯びていて、魔物を倒しやすいそうです。最低でも木刀の5万円です!


魔法書もメチャクチャ高いんです。

レベルを上げれば自動的にMP(マジックポイント)が上がり、覚えられる魔法も増えるそうです。

ですが、レベルを上げるための魔法は魔法書で覚えなければならないので、購入するためには何十万が最低価格で、凄い魔法は何千万する物までありました。


二人はそういうことは考えないので、本当に心配です。


とりあえずは、レベル1時点で使える物でなんとかするしかありません。


ユウ君は、木刀

サエちゃんは、マジックアロー


これだけでなんとかしないといけないのです。

溜息が止まりませんよね。


ちなみにあたしはプリーストにしました。

二人が傷ついたとき、レベル1でも、回復(極小)が使えると言われたからです。

だって、ポーション(極小)が一本2万ですよ!買えないよ~それに家にあったバットが装備できました。


講習を終えて、準備をしてから初めてのダンジョンアタックをすることにしました。


「うわ~クセェ~」


ゴブリンの住処と言われるダンジョンで、ゴブリンを狩って魔石を売ればお金になります。五匹で1000円はかなり安いです。

だって、まずはゴブリンを見つけないといけません。

しかも、ゴブリンを探して戦って、また探して戦ってを繰り返すのは本当に大変でした。


割に合いません。


普通にバイトしている方がよっぽど稼ぎがいいと思います。


「なぁ、こんなんじゃ儲からねぇよ。もっと洞窟近くまで行こうぜ」


ユウ君はすぐに調子に乗るタイプなのです。

簡単にゴブリンを倒せてしまうことに飽きてしまったようです。

ゴブリンの住処は山付近に散策しているゴブリンは弱く、数も少ないので比較的倒しやすいと受付さんに教えられました。


ですが、洞窟近くや、洞窟の中には集団で行動するゴブリンや、武器を持っているゴブリンもいると言っていたので警戒しなくてはいけません。


私が否定を口にしようとして、先にサエちゃんが「ユウがいるから大丈夫だね。いこいこ」と賛同してしまいました。

こうなると三人チームで二人が賛成なら付き合うしかありません。


私は言いたいことを引っ込めて二人の後について行きました。


一匹のゴブリンを見つけてユウ君が木刀を持って走って行きます。

ですが、私たちは気づいていませんでした。

一匹に見えていたゴブリンが十匹もいることに……ユウ君が飛び出していくと、囲まれるようにゴブリンがユウ君に襲いかかりました。


私は恐怖で動けなくなり、サエちゃんはユウ君を助けようとして飛び出していきました。


サエちゃんも捕まってしまい服を破かれてしまっています。

ゴブリンは女性を襲って子供を産ませると言うので恐怖で私は身体が動かなくなりました。


「キャーーー!!!」


サエちゃんの悲鳴を聞いて顔を上げた私の前にゴブリンが立っていました。

逃げようとして捕まってしまい、服を破かれてしまいます。


こんなところで死にたくない!涙が溢れてきて死にたくないと叫んでいました。


急に私を押さえつけつけていたゴブリンがいなくなりました。


杖?を振り回すおじいちゃん?スキンヘッドで杖を待っているから最初はおじいちゃんかと思いました。


何が起きたのかわからなくて、呆然としていると……


「しっかりしなさい!あなた方も冒険者でしょ!」


男性の声で叱られたことがわかりました。


「泣いていて、命が助かりますか?目の前には敵がいるんです。あの男の子を助けたくはないのですか?」


男の子と言われてユウ君のことが頭に浮かんでサエちゃんを見ました。

サエちゃんも泣いていましたが、私を見ていました。


「ゴブリンは、私とミズモチさんが引き受けます。あなたたちは男の子を助けなさい」


オジサンが私たちを助けてくれるから、今はユウ君を助けなきゃ!


「わっ、わかりました。サエちゃん!」

「うっ、うん。シズカ」


私はサエちゃんと一緒にユウ君を助けました。


オジサンは一人でゴブリン全て倒してしまいました。

スキンヘッドなので、老けて見えていましたが、お顔は意外に若くて素敵なオジ様でした!


阿部秀雄さん!私を助けてくれたヒーローの名前を知りました。絶対にお礼をしますね!

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