第16話 臨時収入

本日は、ドロップアイテムの買取りにやってまいりました。


ゴブリンの鉈(状態 不良)は水野さんが教えてくれたアプリで検索すると……なっ、なんと二万で売れるそうです!ブラック商事勤務の私には物凄くありがたい臨時収入です。


冒険者って凄いんですね!!!最近は週末になるとゴブリンの住処に行って10匹分の魔石を集めることをしていましたが、それでも2000円もらえて嬉しく思っていました。


ですが、その10倍です!!


副業で一ヶ月3万も稼げています!!!あっ、でもこれって申告しないといけないのでしょうか?税務署さんが来て持って脱税ですよって言われませんか?


「冒険者登録をされている阿部さんは、冒険者税になります」

「冒険者税?」


インフォメーションの水野さんに質問すると新たな知識を授けてくださいます。


「はい。登録して依頼に対して危険手当が出る話はしましたよね?」

「はい。されました」


確か、ゴブリンの魔石を5つ持ってくると国から支給される危険手当として1000円もらえるって言ってましたね。


「その際に、税金を引かせて頂いています。冒険者として稼いだお金は、稼いだ時に税金を払ってもらっているんですよ」

「そうだったんですね?!ありがとうございます。水野さん」


やっぱり、わからないときはインフォメーションの水野さんに聞くのが一番です。

前インフォメーションをされていた方に代わって、受付からインフォメーションに移動してきたそうです。


前インフォメーションの女性は、山田講師と恋愛の末、寿退社されたそうです。山田講師イケメンですし、冒険者講習では丁寧な方だったので、よかったですね。


私よりも年下でイケメン……アナウンサー風の美人と結婚……羨ましいです。


「ですので、阿部さんが、追加で税金を納めることはありません」

「あの、住民税の上乗せも無いのでしょうか?」

「冒険者として稼いだお金に関しては、住民税が非課税になるんです」

「えっ!そうなんですか?」

「はい。その代わり冒険者としての仕事を最低でも一年の内に一度はしてもらう義務が生じます」

「はぁ~知らないことたくさんですね」


税金のことも、冒険者のことも、まったく知りませんでした。

でも、知らない間に税金対策が出来て、副収入までゲット出来ていました。


「危険な仕事なので、国からの配慮ですね。それでも毎年亡くなる方が出てしまうので、講習やご自身を鍛えることは続けて頂けるとありがたいです」

「それはそうですね」


初めてゴブリンと出会ったときは、私もパニックになりました。髪を掴まれてミズモチさんが居なければ殺されていたかも知れません。


鉈を持ったゴブリンとの戦闘は、命の危機を感じました。


「色々と国も考えてくれているんですね」

「そうですね。ですが、冒険者の方々はあまり税金を気にしませんので、阿部さんの質問は珍しかったです」

「えっ?そうなのですか?税金やお金の問題は社会人として知らないと損しますからね」

「そう考える方は、もっと堅実な仕事をしますから」


冒険者に憧れてなる子もいるでしょうが、やっぱり一攫千金を狙ってしまうんでしょうね。


「なるほど、まぁ私も今の仕事をやめてまで冒険者一本でやろうとは思いませんもんね」

「その方が堅実だと思います。

討伐依頼は危険なことをすればレベルも上がりやすいでしょうが、やっぱり危なく無い範囲で挑戦してくださいね」

「はい。それは任せてください。私ビビりですので」


怖いのとか本当にダメです。ミズモチさんがいないと絶対ダンジョンなんて入りたくありません。


「ふふ、自分でビビりだという人も珍しいですよ。阿部さん面白いですね」


ハァ~水野さんはお綺麗なのに、笑うと可愛いのですね。あっすいません。一瞬惚れてしまいました。見惚れるって奴ですね。


「いやいや、私なんて、それよりも本日はゴブリンの鉈を売りたいのですが、どちらに行けば良いですか?」

「買取り所で査定が必要になりますので、右の通路の奥の窓口へお願いします」

「色々と教えて頂きありがとうございす」

「私も阿部さんと話すの楽しかったのです。気にしないでください」


何度も頭を下げて、水野さんの元を離れました。


小さくガッツポーズをしたことは誰にも見られないようにしました。水野さんは親切で綺麗で、笑った顔が素敵ですね。


あんな女性とお付き合い出来たら最高に幸せでしょうね。


「あれ?阿部さん。珍しいですね」


買取り所にやってくると、湊さんがおりました。


「湊さん、お久しぶりです。メッセージを頂いているので、あまり久しぶりという気はしませんが」

「お久しぶりです。今日は買取りですか?」

「はい。ゴブリンが鉈を落として行ったので」

「鉈?」

「はい。これです」


私は布で包んだ鉈を見せました。


「うわ~凄いですね。ドロップ品って高く売れるらしいので羨ましいです」

「うん?湊さんは買取り所に来たのではないのですか?」

「私は、逆に購入ですよ」

「購入?」

「はい。ここは販売もしていますから、ショップにきました」


そういって案内してくれました。

確かに冒険者の装備やアイテムなどが陳列されていました。


「へぇ~色々な物があるんですね」

「はい。冒険って結構色々な物が必要になるんですよ。お金がいくらあっても足りないくらい、必要な物が多くて」


湊さんは冒険者として、ちゃんと成長されているんですね。


「お互い危険がないように頑張りましょうね」

「はい!それではユウ君とサエちゃんのところに戻りますね」


一通り説明をして頂き、買取り所まで連れてきてくれたところで湊さんとはお別れしました。


私は買取り所で、ゴブリンの鉈(状態 不良)を販売したところ……


「こちらの商品ですが、普通の物よりも魔力量が多いので5万になります」


グォ!!!5万!!!そんなに頂けるんですか???


「どうされますか?売られますか?」

「お願いします!」

「はい。では冒険者証の提示をお願いします」

「こちらで」

「はい。完了です。冒険者証の方へ振り込みさせて頂きました」


私……一気に大金をゲットしてしまいました。



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