第5話 鬱憤
冬が訪れるにはまだ少し早いが、軽井沢には凍りつくほどの冷たい風が吹いていた。
そんな夜、三日月は同じくその日休みだった三島に誘われて近くの居酒屋に集まっていた。
同じ席には木場、そして今年入社した若手が二人座っていた。
三島は時々、都合の良い日に新入社員を含めて飲みに行くことがあった。
それは料理長として、皆の様子を見ることも1つ。
職場の他の上司の前では言えない事や仕事中に相談出来ないことなどを聞いてあげられる時間を作ろうという考えがあった。
半分はただ、単身赴任中で中々家族に会えないから寂しいというのもあるが……。
今回は新入社員の二人の様子見だということは、三日月も木場もうすうす気付いている。
「半年経ったけどどう?なんかこっち来て困ってる事ない?2人とも寮ぐらしだしさ。」
ビールと唐揚げ、いつもの鉄板メニューをやりつつ三島は向かいの2人にそう聞いた。
いかにも素直そうな、高身長な男───羽山は、来店時から背筋をのばしっぱなしだ。
「特には……。寮には同期も居るし、先輩も何人か残ってますので大丈夫です!」
代わりにのほほんと答えた色白な女の子───水谷は、マイペースな子だ。
隣の木場と一緒に期間限定の韓国フェアメニューを食べ尽くしている。
その一方で羽山は、一生懸命来た料理を取り分けつつ、三島のグラスを気にしている。
「はいはーい!寮の裏手の林の草がめっちゃ生えてて、ベランダにツタとか絡まってきたんですけど!ね!」
代わりにと言わんばかりに木場が手を挙げて答えた。既に何杯か飲んでいるため、いつもより数割増でやかましい。
「あ、僕もちょっと気になってます……。」
こうやって言いづらい羽山の気持ちを汲んで先に言い出してくれるのは優しいところではあるが……。
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