第4話 その1 相談
三島は職場で、副料理長と話をしていた。
内容は主に今後の打ち合わせや、新メニューの相談などが主であるが、週に1度行うこの打ち合わせで三島は必ずこの質問をしていた。
「お前から見て、何か問題のある奴はいるか?」
その質問に副料理長の依田は毎回、意地の悪い主任に対しての愚痴を零していた。
その愚痴は彼自身が感じているのもそうだが、他の従業員からの声を反映しているものであり、彼の意見は下の子達の総意でもある、と三島は認識していた。
「あの……。織部の事なんですが……。」
彼の口から初めてこのタイミングでその名を聞いた。
彼は続けて、いつもと違って確信の無い様な話し方で続ける。
「織部が最近余計に元気がないように見えるんですが……」
三島は最近の織部について思い出した。
普段から自我を出す様なタイプではない。
それは彼の仕事に対する責任感と熱意の現れであるため、特に気にしては居なかったが……。
たしかに最近、彼の表情に陰りが見える様になっている気がする。
「あいつは仕事も出来るし、分からない事とかは確り確認するタイプなので仕事関係では無いかと思うんですが……。」
「確かに最近元気がないな……。」
「まあ、自分はそういう時もあるかと思ってたんですが、後輩達、特に木場が心配してまして……。」
三島や依田は立場上、全体の監督であったり、新入社員のフォローやデスクワークなどに従事することが多い。
自分達よりも、一緒に仕事する者たち……特に木場は1つ下という事もあり、織部に懐いている。
織部が彼女持ちだから心配してはいないが……、
彼女の距離感や態度は、とても職場の先輩に対してのものとは思えない程だ。
そんな彼女が心配するという事は、やはり何か織部に問題が起きているのだろうか。
「分かった。さりげなく聞いてみるよ。」
「ありがとうございます。どうも自分、からかうような態度に見られるみたいで……。すみません。」
依田の発言を三島は否定しなかった。
実際、そう言った声も上がっている。
それに自分で気付けているのはやはり流石であるが、直せないのは気恥しさが残っているためだろうか。
身長190cm、柔道経験もあるこの男が意外と気にしいなのはとても面白いなと心の中で笑いながら、三島は今後の見通しが怪しくなっている予感に眉をひそめた。
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