第3話 その3 未着

三日月はスマートフォンの画面をつけるが、紅音から連絡は来ていなかった。

今は午後10時過ぎ、流石に連絡が無いのは不安ではある。

だが紅音は忘れっぽいので連絡を忘れた可能性がある。

三日月は電話をかけてみることにした。

だが、出ない。

通話中の表示も無いため、訝しむ三日月。

とりあえず自宅に入る事にした。


さっとシャワーを浴びて寝間着に着替えた。

あれから20分、連絡が帰ってこない。

三日月の頭の中で、様々な何かがぐるぐる回った。

着替えた寝間着をすぐに脱ぎ捨てて、先程まで来ていた服を着た三日月は、最低限の荷物を取り出して家を飛び出し車に乗り込んでいた。

「朝……前橋って言ってたな……。」

隣県の群馬県前橋市にナビを合わせながら、

大粒の汗を流し、震える手でハンドルを握って車を走らせる。


何かあったのだろうか――何が?――

焦る気持ちと、ぐるぐる回る何かを必死に抑えながら、今朝の会話を思い出していた。

普通、彼氏がいるのに他の男と出掛けるのだろうか。それを当日に言うのだろうか。

憶測を立てては否定してを繰り返していると、スマートフォンの通話の呼出音が鳴り響いた。

車を停め、相手も見ずに通話に出る。


「ごめんごめん、映画見てたんだー。」


その日は仕事も夕食も放ったらかして、そのまま眠りについた。

2時を回っていた。


彼女が帰ってきたのはそのすぐ後だった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る