第3話 その2 連絡

三日月は最近、忙しい日々を送っていた。

夏の施設の稼働が例年より少し低かったために、

【 秋の特別紅葉プラン⠀】なるものが始まったからだ。

せっかくだから来よう来ようと、去年の倍の人数が毎日来館する様になり、もちろん調理の負担も倍に増えていた。


そんな中、紅音の働くうどん屋の店舗は例年通りで少し暇だと感じるぐらいになっていた。

それもそのはず、本来軽井沢にはそこまで紅葉を見に来るお客さんが居なかった為だ。


三日月はクタクタになりながら、自宅へと車を走らせていた。

「帰ったら明日までの資料、進めとかないとな。」

眠い目をこすりながらそう呟き、自宅の駐車場に到着した。

三日月は自分の止めるスペースの隣が空いているのを見てようやく、今朝彼女が出かけると言っていたのを思い出した。


朝、いつもより早く出ようと支度をする三日月に、紅音が言った。

「今日さ、友達と出掛けるんだけど良い?」

「ん?良いよー。帰りはいつ頃になるかな?」

「んー。遅くなるかな、日付変わるかも……」

そこまで聞いて驚いた三日月は紅音の顔を見る。

なんで驚いてるの?と言った顔でこちらを見る彼女に、三日月は少し怒り気味に返す。

「今日決まったの?遅くなるなら先に言ってよ。」

「いや、ちょっと前から。良いかなって。」

紅音はいつも言葉が足りない。

「お夕飯も要らないよ。先寝ててね。」

にこやかにそう答える紅音に、三日月は諦めた様子で口を開いた。

「……当日になったのは良いとして、女の子だけで遅くまで出かけるのは危ないと思うよ。」

「あ、女の子私だけだから大丈夫!」

次から次へと……。三日月は怒りを抑えながら時計を見る。出かける時間になっていた。

「帰ったら説教だからね!それと、連絡はこまめにする事。気をつけてね!」

眉をひそめてこちらを見ながら頷く紅音をよそに、三日月は会社へと向かったのだった。


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