第1話 その3 安寧

夏の終わり

セミの鳴き声もどこかへ行ってしまい、かつて彼らをを苦しめた熱を帯びた風も、今や温くなっている。

そんなある日、三日月はふと夜中に目が覚めると、

紅音がベッドに居ないことに気づいた。

今は夜中の1時、流石に起きるには早い時間だが、そこにはいない。

同時に尿意を感じた為起き上がりリビングへ向かうと、リビングは暗かった。

漏れる光と微かな音を感じて振り向くと、彼らがあまり使わない部屋、その部屋はほとんど物置と化していて、あまり使っていない部屋から何やら話し声がする。

そっと扉を開けると、嬉しそうに話している彼女の横顔と、低い声が数人、高い声が1人聞こえてくる。


―――彼女のその顔がやけに引っかかった―――


三日月に気づいた彼女は、手を前で合わせて謝罪の意を示した。どうやらまだ話は終わらないらしい。


後に彼女に聞いたところ、SNSで同じアニメが好きな人が集まるグループがあるらしい。

そこで彼女は仲良くなった人と最近よく話している、との事だった。

年齢、性別問わずだ。

その口ぶりから、電話をしているのは最近に始まったことでない事は分かった。

そういえば最近、眠たそうにしていることが多かったのを三日月は思い出していた。


「今度みんなで集まろうって話しているんだけど、行っても良いかな?」


なんだか胸騒ぎがする。

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