第7話 お礼

薮木やぶき君おはよう」

枋木こぼのきさんおはよう」


 珍しく枋木さんから朝の挨拶がきた。

 ちょっと驚いてしまう。


「あの、これ」

「ん?」


 青を貴重としていて、赤リボンで可愛らしくラッピングされた小さな箱を差し出された。


「どうしたの?」

「この前の傘のお礼」


 どうやら気に病んでいたのか。

 気にしなくてもいいのに。


「別に気を遣わなくても」

「ううん、ダメ」


 頑なな感じを受け取り、少し気圧される。


「制服濡れていたから、申し訳なくて」


 気付いていたのか。

 隠し通せたと思っていたのに。

 頭を軽くポリポリ掻いて、差し出されたお礼を受け取った。


「今回だけな」

「ありがとう」


 柔らかな表情となった枋木さんは可愛かった。



 枋木 風香ふうか side


 駅構内で見付けた小さなお菓子。

 それを薮木君に渡した。

 傘を忘れた私が悪いのに助けてくれて。

 しかも相合い傘中、私の方に傘を向けてくれて、彼の制服が濡れていたのは分かっていた。

 だから、薮木君と別れた後、お礼を考えていた所に見付けたお菓子だった。

 クッキーである。

 お菓子が苦手だったらって考えてしまったけど、ポップには甘さ控えめと書いてあったから大丈夫と思って買った。

 帰宅してから箱にラッピングして、出来上がりは可愛くなったから嬉しくなった。

 そして今日、やっと渡すことが出来た。

 本当は次の日に渡そうとしたけれど、なかなか勇気が出なくて渡せずに数日かかってしまった。

 喜んで貰えるといいな、なんてね。

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