第6話 放課後の悲劇
「あちゃー…雨か…」
放課後の時間、急に雨が降りだした。
傘を忘れたとぼやく生徒もちらほら。
僕は折り畳み傘を鞄に忍び込ませているから問題はない。
ただ普通の傘よりは小さめだから不便ではあるが、ないよりはマシだ。
「あっ…忘れた」
隣の席の
どうしようと困り顔である。
ちょっと話してみよう。
「枋木さん」
「
なんだか助けを求めている感じがする。
だから僕はこう言った。
「一緒に帰ろう?」
「えっ」
キョトンとした枋木さん。
みるみる頬を赤くする。
「いや、でも」
「大丈夫」
逡巡して「よろしくお願いします」と枋木さんは僕を頼ることにした。
なるべく傘を枋木さんに向けていこう。
僕の制服なんかどうにでもなれ。
風邪引いたりされたら大変だから。
※
玄関で靴を履き替えを終えて、外の様子を2人で見る。
「少し雨あし強いけど、大丈夫だろ」
「うん」
とは言ったものの、緊張してきた。
傘をさして、枋木さんが中に入った所で、ゆっくりと歩き出した。
周りの生徒達の視線は、特に男子からの視線は殺意を感じた。
これは一体どういうことだろう。
枋木さんの様子は、ほんのりと頬を赤らめていた。
緊張しているのだろうか。
「枋木さん、ごめん」
「どうして謝るの?」
「初めての相合い傘が僕で申し訳ないなと」
「ううん、そんなことないよ」
だと良いけど。
枋木さんのペースに合わせて歩きつつ、彼女が濡れないように傘をなるべく隣に向けた。
自分の肩はずぶ濡れになってはいるが気にしない。
駅まで着くと「ここで大丈夫」と枋木さんは言った。
「んじゃ、また」
「ありがとう薮木君」
枋木さんは深々と頭を下げて、駅の構内に入って行った。
「さて帰りますか」
また傘をさして帰宅するのだった。
それにしても、相合い傘をしたから気づけたことは、枋木さんがモテていたことだ。
あの、殺意の視線は痛かった。
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