第5話 友達

 枋木さんはいつも多くの友達に囲まれている。

 休み時間なんて、友達に囲まれて賑やかだ。

 本人も楽しそうにしている。

 移動教室の時はその時々で友達が替わる。

 だが、特に枋木さんと一緒にいるのは、同じクラスの門倉かどくら麻耶まやさん。

 身長165センチのスラッとした、ショートヘアが似合う女子生徒。

 普段はキリッとしていてしっかり者で、自分に厳しいが枋木さんにはかなり優しい。

 枋木さんとは中学からの親友だそうだ。

 門倉さんはバスケ部に所属している為、昼休みに枋木さんと一緒に過ごす事はたまにある。

 そんな今日、2人は一緒に昼休みを過ごせる日の為、空き教室で2人きりでいた。

 どんな話をしているのだろうか。

 気にはなるが、詮索はしない。

 そのために、僕は教室で甘い玉子焼きをパクりと食べて「うまっ」と小さく呟いた。



 枋木 風香ふうか side


 麻耶ちゃんと空き教室にいた。

 久しぶりに一緒に昼食だ。

 お弁当が一段と美味しく感じる。

 1人でお弁当を食べるより格段にいい。

 それに最近は、隣の席の薮木やぶき君が私のお弁当の一口目を決めてくれるから、寂しくはなかった。

 今日は麻耶ちゃんがいるから、麻耶ちゃんにお弁当の一口目を決めてくれた。

 今日は冷凍のハンバーグからスタート。


「風香、料理また上達した?」

「そんなことないよ」


 毎日料理はしているけど、上達した感覚は全くない。


「だし巻き玉子、この前よりも美味しいもん!」

「そう?」


 きっと隣の席の薮木君にお弁当の中身を見られているから、自然と見られているっていうプレッシャーを感じて、下手な料理にならないようにしているのかも。

 言われなければ気づかなかった。


「まさか、恋とかぁ~?」

「いやいや」


 私は苦笑して否定する。

 麻耶ちゃんは怪しんでいるけど。

 本当にそれはない。誰がいるんだ。

 こんな私に相手する人なんかいない。

 なんて否定していると、ふと薮木君が浮かんだ。

 同じクラスになったのは今年から。

 初めましてである。

 まだよく分からないし、この状態は無視しよう。

 いずれ忘れるのだから。


「ふぅ~ん」


 麻耶ちゃんはなんだか不服と言わんばかりに不満気である。

 すると「もーらい!」と言って、私のお弁当からタコさんウインナーを1つ誘拐してしまい、彼女の口の中に入ってしまった。


「なんで!?」


 ちょっと怒ると、麻耶ちゃんはこう言った。


「風香、素直になりなさい、以上!」


 ふふっと笑った麻耶ちゃんだった。

 タコさんウインナー…さようなら。

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