000.1

 

 

「よう、どうだったよ?」

「ん?決まってんだろ。もう楽勝」

 

 今あそこでゲラゲラと笑っている光の粒。

 それが私たちの正体、妖精だ。

 妖精の一生は長くは無い。どんなに長くても30年。殆どは20年で尽き果てる。

 

「おーい、破壊。そろそろお前も行ってこいよ。大丈夫だって、バレやしねぇから」

「は、はぁ」

 

 今声を掛けられた赤い光を発する妖精。

 それが私、

 破壊です。

 

 妖精たちは個々の魔法がそのまま名前になっていて、私は破壊の妖精というわけ。

 触れた物を何でも、一応の制限はあるけれど何でも破壊できてしまう。ただ、それだけの妖精。

 

 そんな私にどこに行けと、何がバレないのかというと、それは私たちの誕生を知らなくてはならない。

 

 

 妖精というのは、雄も雌も存在せず、単為生殖によって一体が一体を生み出す。その生み出されたものが、死ぬまでにまた一体を生み出し、私たちはこうして今も続いている。

 しかし、当たり前だがそれでは数が増えない。

 生物とは、元来その数を増やしてゆく事こそが目的。それは私たちとて同じ事。だが、妖精だけではこれ以上どうしようもなかった。

 

 そこで目を付けたのが人間。

 莫大な生命エネルギーを持ち、この星の頂点に居座り続けている存在。中でも子供、10歳になった子供は格別に生命エネルギーが豊富だ。

 私たちはそんな彼らに巣食って、その中に大量の卵を植え付ける。その卵は10年ちょうどで孵化し、生まれた妖精たちは一斉に外へ飛び立つ。

 その際、巣食っている私たちが宿主の生命エネルギーを食い尽くしてしまう。だから今、ああして人間たちは物凄い勢いで数を減らしていっているのだ。

 

 

「なんだ、そんなしょぼくれやがって。まだ悩んでんのか?人間を殺す事を」

「だ、だって……可哀想、じゃないですか」

「ハッ、可哀想だぁ?奴らだって沢山の生き物を殺してるじゃねぇか!それに、俺らは対価も与えてる。魔法という名のな!」

「そ、れは……」

 

 確かに彼の言う通りではある。

 人間たちは生きるためだけでは無しに多くの生物を殺した。絶滅まで追い込まれたものもいる。でも、だからといって私たちも殺していい道理になるのだろうか。

 それに、対価の魔法だって。

 あれは私たちが住み着くから使えるようになるだけであって、そもそも望まれて渡したものでもない。

 

 こんなやり方でいいのだろうか。

 

 私は、少なくとも今の妖精たちのやり方には納得していない。それならいっそ――

 

「いいから、行ってこいっての!お前はまだ一体がしかいねぇんだから、さっさと数を増やしてこい!」

 

 ……放り出されてしまった。このまま戻ったりは出来ないし、少し外を回ってこようか。

 

 仕方なく私は人間たちの街へと飛んだ。

 その先に、運命を変える出会いが待ち受けているとも知らずに。

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