第3話 今

雲瀬景 15歳 彼は今、中学校に通っている。


「起立!礼!」

「「「「ありがとうございました!」」」」


景「帰るか…」

放課後ぼんやりした表情で、景は帰宅の準備をする。

「景!帰るのか?」

景「うん、太助たすけも?」

太助「ああ!一緒に帰ろうぜ!」

景「…本音は?」

太助「今度の小テスト助けてください…」

景「はいよ。」

この少年は空木太助そらきたすけ、小学校からの景の数少ない友人と呼べる存在である。

太助「そういえばニュース見たか?」

景「なんの?」

太助「SWORDのことだよ!また、死飢デブリ達を倒したってやつ。」

景「ああ…なんかやってたな。」


この世界は、平和というわけじゃないらしい。

死飢、今から二百年ぐらい前に突如現れた未確認生物のことである。

突如現れた死飢達に対抗するべく死飢出現から数年後に結成された組織がSWORDなんだとか。

景「太助は、神咲かみさき高校の士官科だっけ?」

太助「そうだな、やっぱ憧れるだろ!SWORD隊員って!俺もあんなふうに戦ってみたいぜ。」

景「…そう。」

SWORD隊員、この世界では俗に言うヒーローのような物に近い。

高い給金や良い待遇もあって人気職なのである。

そして、その養成学校として有名なのが神咲高校。

年々倍率は上がっているなんだとか。

景(危険と隣り合わせなだけだと思うがな…)

景「で、どんなニュースなの?」

太助「おう!それがな…………」


「お〜い、雲瀬君。今から帰るのかい?」

下駄箱で靴を履き替えていると眼鏡を掛けた少女が声をかけてくる。

景「うん、阿佐美あざみさんも?」

「いや、僕はどっかで勉強していくけど、君もどうかと思ってね。確か同じ志望だろ?」

景「ああ〜、太助は良いかな?」

太助「まあ、俺は気にしないぞ。ていうか俺も勉強しないとやべぇし…阿佐美もできるならたすけてくれ…」

「今度の小テストかい…?」

太助「はい…」

「しょうがないな〜、手伝うよ。」

景「じゃあ、一緒に帰りますか。」


もう一人は阿佐美真希あざみまき、彼女はこの中学校で出会った。


太助「それにしても、阿佐美も景も同じ神咲志望だけど、研究科なんだよな〜」

真希「そうだね、僕は前線に出て戦うなんてまっぴらごめんだし、元々こういうのが好きだからね。」

景「俺は、単純にこっちのほうがなんか稼げそうな気がしたから。」


景と真希の二人は太助と同じ神咲志望なのだが、コースが研究科という違う部門になっている。

前線に出て戦う為に訓練を受ける士官科と違い、死飢の研究、そして死飢に対抗するための武器開発などを学ぶコースである。

基本的に士官科志望が多い中で、二人は研究科志望という共通点から関わりを持つようになった。


放課後、近くのファストフード店で俺達は勉強していた。

景「ほれ、ここはこの数式を使うんだよ。」

太助「お、おう。」カリカリ

真希「あ〜違う違う、ここ計算ミスしてるよ。」

太助「う、うう…」プシュ~

真希「はぁ…パンクしちゃったよ…」

景「ほら、士官科目指してんだろ?もうちょい頑張れ。」

太助「は、はい〜」

真希「…そういえば、景はお姉さんが士官科なんだっけ?」

勉強中に阿佐美さんが尋ねてくる。

景「そうだよ、なんか凄いらしいけど忙しいのかあんまり帰ってこないんだよね。」

養成学校は寮生が基本的であるため、姉は神咲に通っており帰ってくるのは長期休暇ぐらいである。

学校から届く成績ではトップクラスだったと思う。

景「2年の後半からは実際の現場での研修が始まるとかで、もしかしたらテレビとかで見る日もくるかも。」

太助「けど、景の姉ちゃんって美人だけどなんか怖いよな。」

阿佐美「会った事あるんだ。」

太助「ちょっと話しした程度だけどな。」

景「けど、友達は多いんだってさ。写真とか送ってくるし。」

阿佐美「へ〜、仲良いんだ。」

景「どうだろ?普通だと思うけどな。」

そんな会話をしながら3人は勉強を続けた。


後日、太助はなんとか合格点を超えることができた。


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