現実②

 宇宙空間。宇宙船に乗った十人の船員たちは、恐ろしい光景を目の当たりにする。その一人、シンメン・サトリが言う。「何だ、これ…」そこには、今まで宇宙へ飛び立ったすべての宇宙船の残骸の山がある。「食べ荒らしたような跡…」「ブラックホールに吸い込まれたかのよう」「何かいるのか」「出会ったらお終いだ…」サトリと共に乗った船員が諦めの声を漏らす。その時、宇宙船のレーダーに反応がある。「何か来るわ!」レーダーは、半径40万キロメートルまで対象を捉えることができる。「この速さだと1時間後には到達します」計算の速い船員が言う。「一時間後!?つまり、時速40万キロメートル、秒速に直すと約100キロメートルで移動してる」「うそ…この宇宙船は最大でも時速4万キロしか出ないのよ。逃げきれないじゃない!」「何をすればいい?」「迎え撃つか?」「逃げるしかないですよ!」船員たちが慌てる。当然である。彼らが乗る宇宙船は、操縦桿を握って操縦する方式ではなく、ヘッドホンを付けて脳波で操縦する方式で動く。彼ら自身は、宇宙飛行の知識が全くといっていいほどないのである。「落ち着きましょう」そう言ったのはサトリである。彼は、ドリーム社が行った夢計画と呼ばれる夢での体験を通して精神的に強くなっていた。「サトリの言う通りだ。お前たち慌て過ぎだ」そう言ったのは、サトリの1歳年上のワカミネ・タイガである。「こういう時は冷静を保つことが大事なんだ。だから、一旦深呼吸だ」船員たちは深呼吸をする。「ほんとね。慌てる場合じゃないわ」「落ち着いてきました」「それでいい。落ち着けば何をしたらいいか自然と分かって来るだろう」船員たちが話し合う。「ええと、まず対象から離れる方向に進みましょう」「そうだね。距離を取って様子を見た方が良い」「場合によっては、迎え撃つのもありか?」「そうね。出来る限り抵抗するわよ。それでいいわね?」頷く船員たち。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る