第3話 捕獲
「そこまでだァッ‼︎ TNKハンター!!!」
俺は立ち止まらざるを得なかった。
ローブの男が、思いも寄らない人質を取っていたからだ。
赤いワンピースの女の子。
近所の子供だろうか。
ローブの男はなんの関係もないその女の子を後ろから羽交い締めにすると、喉元にナイフを突きつけていた。
女の子は恐怖に声も出ず、ただ顔を蒼白にして震えている。
「落ち着けよ革靴の魔法使い。そんなに俺が怖いのか?」
「うるさい‼︎ そのまま後ろを向いて
「オーケー。だがその子は離してやれ。お前の相手は俺だろう」
「黙れ‼︎ 指図をすルのは私だ‼︎」
「分かった分かった。俺は丸腰だ」
俺は両手を大きく上げて無抵抗を示した。
「で……後ろを向けばいいんだな?」
俺はくるりと奴に背中を向けた。
そして俺の背中にしがみついていたポメラニアンが弾丸のように奴に飛びかかった。
「うわ⁉︎ クソッ」
リンガは奴の右手首に牙を立てガッチリ噛み付いて離さない。
「バルディア! たかが小型犬一匹……」
「違うんでふよねほれが」
リンガの姿が光に滲む。解けた像が再び結ぶと、そこにはローブ男の腕を両手で捉えた白いブレザースーツの女の姿があった。
「なっ……⁉︎」
「おりゃっ」
ヒトの姿を取ったリンガは綺麗な投げ技を暴漢にキメるとそのまま首四の字固めに滑らかに移行した。
「よいしょ」
「グエ……」
ローブ男は絞め落とされて呆気なく気絶した。
「おじさんたち……一体なに?」
赤いワンピースの女の子は、怯え切ってへたりこんでいた。
「怖い事に巻き込んですまなかったね、お嬢さん」
俺は少女に手を伸ばし、彼女はその手を取って立ち上がった。
「俺は探偵、暖星綺狩人。向こうは堕天使のリンガ。本当の名前は天国を追放された時に忘れちまったらしい。神を笑った罪で、どんなに面白おかしくても笑えない体にされて天界を追われ、あいつが一番嘲笑していた三つのものの姿だけを許されて人間界に落とされた」
「三つのもの?」
「そう。つまり犬、人間、そして……」
「マスター! まだ終わっていません!」
リンガが叫ぶ。
見ると気絶させたはずのローブの男の様子がおかしい。
身体をブルブルと痙攣させて……いや、陸に揚げられた活魚のようにアスファルトの上を跳ね回っている。その弾みで、フードが外れて奴の顔が顕になった。
「見るな‼︎」
俺は咄嗟に少女の目を手で覆い顔を背けさせた。
ローブ男の正体は、巨大なTNKだった。
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