運命の人。

ひじき

本文

私はずっと探していた。私の運命の人を。人生を変えた人。白馬の王子様なんてものじゃない、私だけの運命の人。




私はずっと憧れていた。運命の人に出逢えた人に。いつか自分もそんな風に、運命の人に運命的な出会いができるといいなと思っていた。




私が運命の人を探し始めたのは、小学生の頃だった。今まで全く興味もなかったのに、少女漫画を読み漁った。少女漫画に書かれているシチュエーションの通りに行動すれば、運命の人に出逢えると思った。


例えば、食パンをくわえて登校したりもした。十字路のところで出会ったのはトラックだった。


例えば、川に子犬を助けにいった。運命の人が助けに来てくれることはなく、得られたのは汚い子犬が1匹と、風邪をひいた自分、そして親の怒りだけだった。その時の子犬は、大きく成長して今でも家で丸くなっている。




中学生になってからは、そんな方法では出逢えるものも出逢えないと分かった。だから、人との出会いを多く求めた。


色々なところに行った。例えば、兄が通っていた高校に通った。ボランティアの団体にも参加した。バイトは残念ながら出来なかったが、おかげで多くの知り合いが出来た。




高校生になる頃には、中学生の頃作った人脈のおかげで、私の運命の人を見つけることが出来た。近づくために、ありとあらゆる手段を使った。近くに行くためには、手段を選ばなかった。色々なことを考えた。どのように運命的な出会いを演出するか。どのように関係を縮めるか。


幸いにも、私は顔が良かった。だから、好感度を稼ぐのはさして難しくなかった。高校の3年間で、相手の警戒心を完全に解くことができた。




大学生になった。18歳、成人した私は、やっと運命の人と二人きりになることが出来た。今、ホテルに2人きりで来ている。きらびやかな部屋の中、私はベッドの上でその瞬間をドキドキしながら待っている。相手の人は、シャワーを浴びている。




そんな私の運命の人は、40代後半のおじ様。身長は160から170cm、少し小太り体型で、普段は眼鏡をかけていて、高校で数学の教師をしているらしい。


そして、9年前、私の兄を殺した人、私の人生を変えた運命の人。




9年前の小学校3年生の頃から、今この瞬間をずっと夢見ていた。いつか復讐できるその瞬間を。




そして今、その瞬間は訪れた。

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運命の人。 ひじき @hujuki

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