立花・助人(新入神官②)
大きな扉を開けたら、最初に目に入ったのは【新入団式】のためにギルド広間の中で施された別格に華やかな装飾品だった。
前には入団試験に来た時に一度中を見させてもらった広間は金色に包まれて、黄金のように輝いた。
その広間の中を見渡すと、100人規模の新入団員らしき人々が広間のあちこちに立っている。
なぜ分かるかというと、服装が新品同然だからだ。
僕も先日受給されたものと変わらない。
この超一流名門ギルド内では装備や武器...アイテムなど全て提供される。
お金があまりない新人にも専用の寮まであるので、かなり金銭面には助かる。
冒険や仕事の報酬は税金以外には自分の手持ちになる。
一応これは式の先日簡単に説明されたガイダンスの内容だった。
でも...実際にこの広間の空間に入ってみると、聞かれた内容を改めて感心した。
本当にすごいや...このギルド...と感動で僕の胸が高ぶった。
僕と同じ新入団員らしき者を見てみると、
すでにグループを作って、談笑している人たちもいるし...
配られた飲み物を飲みながら式の始まりを待っている者もいる。
緊張してただガチガチに席に座って黙ったままの者もいる。
僕はどちらかというと、他の人とはかなり浮いている...
理由は言うまでもなく、この外見だからだ。
まあ...これは想定したから、とっくに覚悟をしたのだけれど...
やはりこんな僕に声をかける人なんて...
とそのとき、少し落ち込んでいる僕には一人の男性が声を掛けた。
「初めまして。」
「は、はじめまして。」となぜか僕の返しは緊張が混じっていた。
「あなたも新入団員ですよね?私も同じです。ちなみに冒険者の希望者ですか?
でも...これは普通の会話だから、これからも自己紹介とかこういう説明を数えきれないほどするだろう。ここでせっかく声をかけてくれた相手にも自分にも申し訳が立たない。
そう決めた...
「はい、そうです。今年度の試験に合格して、入団することができました。私は冒険者を希望します。ジョブは【神官】です。」と自分のことを無事に相手の質問の答えになれる説明した。
少し茶色の髪色と青い瞳をしているその相手はさらに目を輝かせて、僕に関心したようだ。
「ほー神官ですか...というか王国語はばっちりじゃないですか?すごいですね!」
「え...とんでもないです。」
「いやいや、謙遜しすぎですよ。私もドゥナリアス人と会うのが初めてですけど...あなたみたいに王国出身ではないにも関わらず、このギルドに入れることという事実がその証拠だと思います。私は、冒険者希望者ではありませんが、ぜひ仲良くさせてください。」とい相手の褒め言葉と共に彼は手を差し伸べた。
これは、王国式の挨拶【握手】の合図だ。
そして、僕は相手の手を握って、握手を交わした。
「こちらこそ...僕の名前はスケト・タチバナです。どうぞよろしくお願いします。」
「レミニス・ハーバーです。よろしくね...スケトさん。」
そう...彼は初めてギルド内でできた友達だった。
今でも...友達だ...同期とは違う...
そして気づくと、式の本番が間もなく始まるというお知らせが来て、新入団員を含めて、関係者全員は席についた。
そこで、前方の横側の扉が開かれた。
一人の男が入場し、前に置いた壇に向かって、歩いてきた。
現れたのは現ギルドの統括団長だった。
顔を見たのは初めてだが、その人の貫禄を見てからのこの流れでは間違いないだろう。
壇に到着した統括団長は座っているみんなに向かって、一回咳払いしてから、話を始めた。
「ようこそ...新入団員の皆さん。この度は厳しい試験を無事に合格して、このギルドの一員になれたことを私たち、ギルドメンバー全員が心から嬉しく思っております。これから皆さんはこのギルドの一員としてこの国...さらにこの世界に貢献する人材になります。冒険者だけではなく、様々な仕事がギルド内にあります。冒険者ギルドだからと言って、他のジョブより偉いという訳ではありません。この世界に存在する誰しも必ず意味があり、役目があります。無意味でこの世に生まれた命なんてないという言葉をぜひ皆さんの心に受け止めてください。
そして...私は皆さんに求めている...なって欲しい理想的な【仕事人】は、
どのような現場でも活躍できるプロ意識を持ち、依頼主にも仲間にも信頼される仕事人になりなさいということです。
ぜひ自分の仕事に誇りを持って、これからも皆さんのさらなる活躍とこのギルドの繁栄を祈って...」とここで統括団長は深く息を吸って、次のように叫んだ。
「皆様に、神の祝福を!」
「精霊の力に、感謝を!」
「そして、冒険のために尽力した全ての人々の命に敬意を!」
「敬礼!!!」
という言葉と共に統括団長は手を胸を当てた。
それを見た広間内の人々全員も揃って同じ仕草...敬礼をした。
そのとき、統括団長のお言葉は僕の胸に響いた。
涙が出そうぐらい感極まった...
プロ意識と信頼される仕事人か...
その理想に近づけるために僕も頑張らないと...
あ...
ようやくだ...
人を助ける...人の役に立てる仕事ができる時が来た...と
少なくともあのときには...俺はそう思っていた。
統括団長は、お言葉が終わってすぐ退場した。
そこからは担当者が新入団員に各自が配属される予定の【部隊】を言い渡した。
僕は配属されたのはどこかというと、
それは神官隊という訳ではなく、言い渡された部隊の名前は...
冒険安全衛生管理部というお告げだった。
そこから...僕...いや、俺の【悪夢】が始まった。
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