紫(ヴィオ)

私の名は...ヴィオ・むらさき・カミサカ。

最近はパーティメンバー仲間と共に王国の首都、このオークティアにやってきた。


名前から見て推測できるかと思いますが、ここのナパジュ王国とドゥナリアスという遠い島国の人間の血が混ざっていて、いわゆる私はハーフである。

私は、ドゥナリアスで生まれて、お母さんと二人で幼少期を過ごした。

お母さんは私の名前のむらさきからむらちゃんと呼ばれた。

しかし、紫は第二の名前であり、実際の出生名のはヴィオとされている。

その理由は、一度も会ったことのない父親が王国の言葉に馴染ませるためにあえて同じ意味のヴィオレットからの【ヴィオ】にするようにお願いされたらしい。


お母さんとの2人暮らしは決して裕福ではないが、特に貧しくもなかった。

一人で私を育ててくれたお母さんは私の記憶の中では優しくて、いつも笑顔が絶えなかった。

しかし...私はまだ幼いある日...お母さんは亡くなった。

そして、お母さんの葬式に現れたのは一度も会ったこともない私のだった。

金色の髪をしているその父親と名乗る男は自分の青色の瞳で私を見て、私にはどうやら王国の人間の血が流れているために王国民としての最低限の権利を持っているらしく、一緒にナパジュ王国に来て、一緒に暮らして欲しいと少し片言だが、理解できるレベルのドゥナリアスの言葉で私に説明した。

私はお母さん以外の知っている身内もいないため、自分の父親と名乗る知らない男に引き取られて、一緒に海を渡り、王国の2番目の大きさと言われるアマティサで暮らす運びとなった。


しかし、自分の故郷を去る前の記憶はお母さんと過ごした日々以外に...お母さんや誰にも知られない一つの隠し事が私にある。

実は...私はお母さんが亡くなるかなり前にある人物と接触した。

突然目の前に現れたその人はお母さんの親戚だと名乗って、私にある事実ことを告げた。

私にはある特殊の職業ジョブであることを...

そして、特殊のジョブのスキルを取得するには彼の家の道場でしかできないらしく、私は最初に信用しなかったけど...自分の中にその特別な力があり、それを手に入れたいという好奇心に駆り立てられた結果...お母さんに内緒でその男が言った道場がある家に訪ねた。


それからは厳しい訓練が始まった。

とにかく素早く動き回り、障害物を間一髪で回避したり、クナイを的に素早くて正確に投げたりした。

大人から見てもこの運動量は子供には厳しすぎると思うぐらい訓練が続いて、毎日の訓練は本当にキツかった。

がむしゃらにひたすらひたすら訓練についていくだけだった。

でも不思議なことに...自分の中に潜んでいるより上手くなりたいという向上心に駆り立てられたようで最初に慣れなかった自分の体もそれによって徐々に激しい訓練についていくことができるようになった。

その男が言うには、私には見込みがあると...鍛えがいがあるまで言われた。

正直...そのときにはこの訓練で何のジョブにつながるか全く分からなかったが、後で分かった話になった。

訓練のおかげで毎日毎晩は疲れ果てた顔で家に帰ることになった。

そのたびにお母さんに聞かれた。


顔色が悪いね...どこに行ってきたの?という心配そうな質問に対しては、ただいつものセリフで「友達と遅くまで遊んだ...ごめんなさい。」と言って誤魔化すしか私ができなかったのだった。

そのときのお母さんは何も聞かず、笑顔で「腹減ったでしょう?風呂の後はしっかりご飯を食べてね...」といつもの言葉を送ってくれた。

後に基礎を得た私は、基本的なスキルをその親戚の男に教わったが、母親の死がきっかけである程度のスキルを取得できたところまで訓練が打ち切りになった。

その親戚の男と会うのもそれっきりだった。


王国に来てからは...ただ体で覚えた感覚で独学に近い訓練を続けた。

初めては王国のことも知らない...言葉も全く喋れない私にはその訓練は心の中の孤独感を打ち消すためだった。

そのとき、アマティサに来て間もない私が出会ったのは今の仲間の3人であり、最初にできた友達である。

私の顔を見て、「これは...あのドゥナリアス人の血が混ざったのか?確かに黒髪と黒い瞳だけど...黒いより、少しむらさきっぽいような...」と言って驚きながらしていたのは今戦士になった男子だった。そこで、今は魔法使いになったもう1人の男子は「いきなり女の子にそんな近くじろじろ見るのはよくないぞ...でも、よく大人たちが言う怖いドゥナリアス人と違うね。まあ...どっちにしても君も僕たちと変わらない普通の人間だ。」と話して、「だから...僕たちと遊ぼう!」と今は神官になった男子は笑顔で私に言って、遊びに誘われた。

それ以来、私の見た目には何の偏見もなく、仲間の一人として受け入れて...

そして、3人は私が初めて参加した冒険者パーティのメンバーになった。


ここで一つの問題があった。

この国では私が訓練でスキルを取得した特殊のジョブに当てはまるジョブはなかった。

そもそもそのジョブはこの国に存在しなかった。

そのため、一番スキル的には近いの【盗賊】というジョブをしかたなく選んで、私自身でも全く納得できないまま盗賊のスキルを学んで、仲間たちと冒険をし始めた。

そして今、超一流名門冒険者ギルドの入団試験に挑戦しては不合格になったが、そのおかげでテリー冒険案内所のことを知り、スケト・タチバナという同じ国の出身の方と知り合った。

スケトさんあの人に言われたあの一言は...私の中の何かを変えてくれた。


「そもそも...君は...」という言葉...

私はただ...仲間とこの安全地帯コンフォートゾーンから出たくなくて、ただただ仲間の思うがままに付いてきた。

地味なクエストや派手じゃない討伐戦でも私は何か3人と一緒に冒険ができれば、それで満足だった...

それで良かった...

しかし、それは間違いだと気づいた。

その言葉は私の中に潜めている何かを目覚めさせたみたい。


合わせることなんて必要ないんだ。

自分が得意としている道に進めばいいんだ。

自分の中に潜めた能力スキルをまさかあのタイミングで披露したのは思わなかったけど、仲間が全員倒れた状態ではそれを目撃したのはスケトさんだけだ。

もう...それならいいと思って、思い切ってあのデカいモンスターと戦いに挑んだ。

結果は皆さんが知っている通りだけど...自分がようやく自分らしく生きるという実感ができた...


思い返せば、お母さんはすでに全てを悟ってしまったのかも...

自分もその血筋を持つ以上、自分の娘にも同じ素質があるということぐらいは...

ごめんなさい...お母さん...もしかして、私にこの道に進むことを拒んだことで自分の血筋家族まで捨てて、一人で私を育ててくれたかもしれないと思ったら、申し訳ない気持ちが湧いてきた。

でも...

本当の自分は何者か自覚してしまった以上、簡単に自分が選んだ道をやめることはできなかったの...

どうか...どこか遠いところから私のことを見守ってくれれば...と思っています。


そして、本当に自分を自覚させてくれた彼...スケトさんに感謝の気持ちと共にある疑問が浮かべた。

そもそも...スケト・タチバナという人はどのようななのか...


自分が知っているスケト・タチバナは技術士を目指して、この王国に来たけど、途中で神官になることを志して...どこかのギルドに所属した。今は雇われ身のダンジョン案内人兼通訳をやっているけど、その割にはあの巨大モンスターを一人で戦えるほどの戦闘能力と経験。

どのようなことを経験して、今に至るか誰でも気になるはず...

さらに、自分に言われたあの言葉...


「適当に生きるんだ」


私はその言葉の中に彼が体験した生きることの辛さと絶望を感じ取った。

まるで人生の何もかもを諦めたように感じた。

倒れたときに発見したときもそう...発作とか言ったけど...


まだまだスケトさんの知らない顔が...それはそうか...会って間もないということをすっかり忘れた。


だから...

私の本当のジョブとその中にさらに潜めているスキルをハッキリにすると共に本当の自分を目覚めさせたこの人の正体についてもっと知りたい...

その第一歩として今、彼が働いている冒険案内所で【面接】という第一難問に挑んでいる。

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