立花・助人(中堅神官①)

この職業ジョブになって、6年...

すなわち神官として7に突入した俺は、今だからハッキリ言える。


【違う】


俺は夢を見た神官というジョブはこんなんじゃない!

こんなはずじゃなかった。


なんでこんなことになったんだ...

何が人の役に立てるんだ。

人を助けるところか...自分さえも救いようのない人間になりそうだ。

このままじゃ...俺はこんなところでただ腐ったまま、生涯を終わるだけじゃないか?

何の意味があるのか?

こんなクソみたいな人生は...


朝がやってきて、無意味な一日を過ごして、そして終わる。

その繰り返し...

繰り返し...

そして、...

ただの無意味で不毛な人生を送るだけ...

こうなると分かれば、一層は自分の命に代わって、【大義】を果たして死んだ方がマシだ。


こんなはずじゃなかった。

なんでこうなった。

なんで俺の人生がこんなにになった。


そう...

そうだ...

だ。

アイツのせいで俺の人生が滅茶苦茶になった。

アイツがいなかれば...俺は今でも様々なダンジョンで活躍して、皆を助ける役目が果たせる...はずだった。

のせいで俺は...一回【心が挫けた】。


そして今は、こんな...辺境のダンジョンで何の役目なのか訳分からない肩書きを与えられながら、何をしてもしなくても...ただそこにいるだけで成立するような存在。

いてもいなくても変わらない存在。

しかし、問題が起きたら、先に責任が取られるという理不尽付きね。

今の俺にはぴったり過ぎて、笑いたくなる。

この【ダンジョン安全衛生管理責任者】という肩書きで...俺は出来損ない人間として日々を送っている。


どこかの誰かがこのような言葉を言っていたような気がする。

「この世界に存在する誰しも必ず意味があり、役目がある。無意味でこの世に生まれた命なんて...ない。」


じゃ...今の俺の人生にはこの世界に何の意味があって、どんなことが役に立てるのか...


教えてくれ...

神よ...

いや、


俺には何のために生まれて、何のために生きているのか教えてくれ!


...


「スケトさん...」


...俺は...


「スケトさん...」


何をやっているんだ...


「スケトさん!」

とぱっと誰かの声で気づいた。

気が付くと、テーブルの向こう側に心配そうな顔をしているヴィオがいた。

「どうか...しましたか?まだ具合が悪いじゃ...」とまた心配そうな質問をされた。

そこで俺は笑顔で誤魔化した。

「いいえ。大丈夫です。少し過去の記憶に浸って、ちょっと浸りすぎただけで...」となんとか作り出した作り笑いがまた少しずつ暗い表情に変わった。


そう...

あれは俺がこの仕事を始める前の話...もう2年前ぐらいか...

まさかこうして、今は別の仕事でこんなところでまだ生きているとはそのときには想像さえもできなかった。


俺はまだ...生きている。


この謎バステも消える様子もないまま...


今日もまた...

とまた暗い気持ちになりそうだった俺はその気持ちを払拭しようとしたようにヴィオに話しかけた。


「ごめんなさいね。料理が冷めないうちに食べましょうか?」と普通に一緒に食事をしている相手にこれ以上待たせるのも申し訳ないと思い、食事に移そうとした。

とヴィオを見たそのとき、彼女は何かを言うか言わないか迷っているように返事せずに考え込んでいた。

そして、ようやく出てきた言葉は予想外なお願いだった。


「スケトさん...スケトさんが働いている案内所で私も働かせてください!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る