心のバッドステータス
人は、生まれて死んでゆく...
これは自然の
しかし、生まれるときが選べないとしては仕方ないとして、
死ぬときは自分で選べるならいいと思う。
例えば...この瞬間なら、死んでも文句がないと思った...そのような瞬間。
...
そのような瞬間を感じたことがありますか?
案外...未練と後悔が邪魔に入って、文句がいっぱい出てきて、中々死ぬタイミングが見つかりませんね。
一方、突然の死で心の準備さえも与えられず、やりたいことがたくさん残ってしまう人にとっては、あまりにも理不尽ではないでしょうか?
【死】はいずれ訪れるならば、死ぬときぐらい自分で選びたいです。
え?
僕の場合?
僕は、ある亡くなった人の代わりに命をあげたい。
あげたかった...
もし神様のような存在がいるとすれば、僕はこう願うだろう。
「僕の命をくれやってもいい!彼女を...どうか...蘇らせてください!」と...
しかし、その祈り声は神様のところに届かなかったみたい。
僕の心に空洞のような大きい穴がぽっかりと空いて、ずっとこのやるせない気持ちで日々を過ごしてきました。
この空けた心の穴の埋め方が誰も分からず、自分さえも知らない。
なんで...
なんで僕じゃなくて、彼女なんだ...
こんな僕を残して、彼女に死を与えるこの世界が段々憎いと感じてきた...
なんで...
僕がいつになっても死なない...
僕は...
俺にとっては...
【生き続ける】ということは存在するかどうか神様みたいなやつに与えられた罰なんだ。
ということを頭の中に何回も何回も考えて、目が覚めた。
目を開けると、白い天井が見えた。
周りを見渡すと、ここは誰かの部屋のようだ。
薬瓶が並んでいる棚や机に置いてある道具から見ると...
ここは...
「やっと起きたか...」と誰かの声が聞こえてきた。
その方向を見ると、白衣を着た中年男性がこっちの方を見ている。
「ここは...診療所ですね。」とすぐ俺が悟った。
「そう...あんた、路上で倒れたみたいでな。それでここに運ばれた。あの子がずっとそばから離れなかったよ。」と事情を説明した医者らしき男性。
「彼女...?」と医者の説明を聞いて、何のことなのか一瞬ついていけなかったが、その人の目が見ている方向を見ると、そこには一人の女性が俺のベッドの隣で座りながら、寝ている。
「ヴィオさん...」
なぜ彼女はここに...そのときはちゃんと挨拶して、別れたはず。
俺の考えが読めたかのように、その医者らしき男性はさらに説明を加えた。
「あんたが倒れたときは王国の言葉じゃない言語で叫んでいたらしいよ。なんだっけ...タスケテクダサイとかなんとか...それで誰かがそれに気づいて助けたんだ。その人の名前は聞きそびれたけど、たぶん冒険者だ。」
「そうですか...お手数を掛けてしまいました。」と俺は申し訳なさそうな気持ちで医者に謝罪した。
「それは構わんが、あんたのようなドゥナリアスの人と分かって助けてくれたあの人もかなりのお人好しだな。もしかしてあんたの知り合いだとか?」と問い詰められた質問に対して、俺はただ答えられずに黙っていた。
「...さあ」
そう...
この王国では今でもドゥナリアスの人に対する偏見が強く、王都はまだマシだとしても郊外に行くと、もはや黒髪と黒瞳の人間なんて見たことがないほどの珍しさだ。こんな俺、さらに助けを求めたヴィオさんに手を差し伸べたのは一般の人とは思えない。
まさか...
と突然別の人の声が聞こえてきた。
「あの...大丈夫ですか?」という聞き慣れた母国語だった。
「ヴィオさん...僕を助けてくれたみたいですね。ありがとうございます。で?なんで別れた後に戻ったのですか?」と彼女に御礼をしながら、なぜか問い詰めた口調になってしまった。
「え、えーと...改めて御礼を言おうと思って、戻って来たのですが、具合が悪そうで突然倒れて...どうか...しましたか?」という彼女の心配そうな目で俺を見つめている。
まいったな...
俺のことを純粋に心配しているじゃないか...
このパターンは一番厄介だと思いながら、安心させるように作り笑いをして、彼女にこう言った。
「ええ...ちょっと説明しづらいですけど、【持病】みたいなもんで、時々発作が起こします。」ととりあえず誤魔化した。
「それは...お医者さんに見てもらった方が...」と言いかけたヴィオにスケトは途中で話しを割ってきた。
「お気遣い、感謝します。でも、医者に診てもらっても無駄なことです。」と言ったら、なんで?みたいな顔をしたヴィオだが、
「説明が難しいですけど...僕...」
言葉がそれ以上出てこなかった。
そう...
ここで言うべきなのか...
俺は、他人に見えない謎の
誰に信じてもらえなかった...
というより信じてもらうにはほぼ不可能なんだ。
自分しか見えないものを他人に説明しても...
それはただ時間の無駄...
でも、この人なら...
もしかしたら、俺の今苦しんでいることが理解できたら...
と、一瞬思ってしまった自分がその考えをかき消した。
ニンジャの末裔ながらの勘なのか...
それともただのたまたまなのか...分からないけど
もし、あの時に彼女のような人間が俺の隣にいれば、俺は...
とりあえず今回は本当に助かったし、例え全てじゃなくても...持病だと言ったら、それは理解してくれるはずだ。
そう...
決して消えることのない謎のバステ...【鬱】を抱えて、今まで生きてきたことを...
それをさすがに全てを明かすことにはまだ早すぎる。
そして、俺はかつてあの超一流冒険者ギルド、スリースピアーズに所属した神官だったことも...
「俺は...」と何か言おうとした俺は口をすくんだ。
やはり簡単に言えない...
この健康に見える体の中に【心の病】を抱えている。
それを抱えながら、生きている。
とそこで俺は突拍子もない質問を隣にいる女性に投げた。
「ヴィオさんは大義...正義...クエスト達成...簡単に言うと任務のために命を捨てる覚悟がありますか?」
何を聞こうとしたのだ、俺...
「え...そこまでは考えたことがないので、うまく答えられませんが...さすがにそういう覚悟とか私にはまだない...と思います。」といういたって純粋な思いから出てきた答えだが、俺の心のにはなぜかナイフのような刃物を切り上げたものの、なぜか痛みを感じないのような優しさまで感じた。
その答えを聞いて、作り笑いから本当の笑顔をした俺は彼女にこう言った。
「それはいい答えです。ヴィオさん...いいえ、ヴィオと呼ばせてくれ。自分の命より大事な物はない。命を捨てる覚悟なんて...それができる人間はよっぽどのバカか英雄だけだ。全てが表裏一体で、その結果だけが物語として語り継がれる。ただの命知らずのバカの話はもういずれ忘れられて、語り継がれるのは英雄の話だけです。」と気づいたら、俺がこんなに他人にペラペラ喋るのはいつぶりだろうと自分でも驚いた。
とここで医者らしき男性は一回咳払いをして、俺たちの会話を割ってきた。
「もし元気になったら、治療代の支払いと退院をお願いできないかな?ここは見た通り、一部屋だけでな...外国の言葉でずっとイチャイチャしているみたいな感じをここでできるぐらいなら、もう元気になったようだ...」
となぜか強制的に退室させられた。
というかもはやつまみ出されたみたいな気分だ。
黒髪と黒い瞳の二人組は次の行く場所がまだ何も決めておらず、診療所の前にただ立ち尽くしていた。
「えーと...とりあえずご飯を食べに行きませんか。話もあるし...」とまずは別の場所に移動すると決めた俺はヴィオに食事を誘った。それを承諾したヴィオは俺の後に付いてきてくれた。
歩いている途中、俺は自分の左の手の甲を見つめながら、あることを考えていた。
消えたハート形の印マークが元通りに戻った。
戻ってきやがった。
このマークは...
もしかすると、このバステの正体は...
ドゥナリアス人としてではなく、俺自身への【戒め】...かもしれない。
俺が勝手に背負った【罪】の十字架...
決して消えない...俺への【罰】なんだ。
一方、飲食の店を探すときにスケトの後ろに歩いていたヴィオは別のこと...というより一つの疑問が湧いてきた。
スケトさんが寝言で言った【彼女】って、誰だろう...
スケトさん...何を遭ってきたのかな...
彼の今の表情を見て、私でも分かる...
とても...【辛そう】だ。
そこからは店に入るまでには二人の会話はなかった。
ただ心の中に秘めた気持ちと疑問を秘めたまま、二人はある酒場に入った。
そして、先ほど二人がつまみ出された診療所の中で医者らしき男性が座って、何かを考え込んでいる表情をした。
おかしい...
さっきの患者さん...
医者を含める特定のジョブの人は人のLPやSPが確認できるスキルを持っている。
その結果、LPもSPもほぼ満タンだ。ポーション一個を使うことすらもったいないぐらい。
外傷も何も目視できない。
手の甲も確認したが、何のバステが印されていない。
というか、これだけの健康の大人の男性が何もなく路上で倒れるとは極めて異例だ。
何か...
別の原因が...?
ドゥナリアス人だからと言って、同じ人間だ。
さすがに昔みたいに異国人を野蛮人扱いとかはもうない...一応表には。
これはまさか...
最近医者の間にも話題になり始めたあの今まで証明されることがない病気。
「不可解な心の...病」
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