立花・助人(新入神官①)

僕の名前は立花タチバナ助人スケト

神官という職業ジョブになるために日々就職活動ジョブハントに挑み、奮闘してきた。


ナパジュ王国である出来事がきっかけで神官になると志した僕は、神官見習いの学校に通うことになった。

そして、その学校の課程が修了した後、僕はジョブハントに参加した。

神官見習いの学校ではあくまで基礎を学ぶだけの場所であり、実践的なことは冒険者にならないと身に付けることが難しい。

逆に言うと、実戦で学ぶことができるが、誰も実践的なことを教えてくれないため、それもそれで難しい。

そのため、実践的な教育・研修の制度が備えられた冒険者ギルドへの入団はかなり今後のキャリアに影響する重要なポイントでもある。

それに伴い、自分の夢を叶えるために集まってきた若者はジョブハントから長き戦いが始まった。


冒険者ギルドへの入団試験に数え切れないほど挑み、数え切れないほどの不合格のお告げを受付嬢に言われた。

その末に挫折して、夢を諦めた人も何人もいた。

妥協して、自分の希望した第一のジョブではなく、ギルドに入るためにあえて第二第三希望のジョブを選ぶ人もいた。


もともと僕の専門は技師であったため、神官に関する知識や経験が浅い。

ジョブの途中変更をするケースはゼロではないが、うまくいく事例が少ない。

神官の魔法スキルの基礎知識を頭で覚えても分からないことがたくさんある。

入団試験でも平均なことができても目立っている成績がなかった。

さらに、自分がドゥナリアス異国の人間という偏見も試験の採用に左右された。

王国出身に比べたら、元からのスタートラインが違っていた。

遙かに高かった壁が立ち塞がる気持ちだ。

それでも...僕は最後まで諦めずに...何度も何度もその挑戦を受け続けた。


そしてついに!

こんな僕に手を差し伸べてくれたのはなんと!あの超一流名門冒険者ギルドだった!


そう...

今日はついにやってきた新入団式...

今日から念願の神官になれると胸を張って、言えるんだ!

これで人を助ける...

その自分の名にふさわしい活躍をするんだと自分の心に誓った。

その希望と期待と共に僕はギルドの扉を開けた。


そう...

人を助ける...

人の役に立てることをすると...思っていた。


そして、現在

巨大モンスターの前に立ち向かっているダンジョン案内人兼通訳は少し自分の過去を思い出して、苦笑してみせた。


そうだったな...

そんな立派な動機を持っていたっけ...俺

そんな希望に満ちあふれた顔をしたな...

少なくとも8年前の俺には【希望】があった。

もはや、全ては過去となったけど...

今の俺は...ただその過去の良き思い出に縋ることしかできないほど、ここまで墜ちてしまったか。

それでも...

こんな俺でも今はやらなければならないことが一つ!

目の前にいる人たちを守る...

この責務を全うしないといけない!

それに、もう...が残り少なくなってきた。


その訳は彼の手の甲に印された2列で5個ずつ...合計10個のはずだった小さなハート形のマークは今1個しか残っていないことだった。

さらにその残りの1個のマークさえも点滅し始めて、消えかけた。

彼が【鬱】と呼ぶ謎のバステはある攻撃ダメージを受けると、ハートのマークがダメージの程度に応じて消えてゆく...

そして、10個全部消えるとき...謎バステが発動し、彼に襲ってくるという仕組みだった。

そうならないためには残されたマークの消失を阻止しないといけない。

目の前に立ちはだかる危機と闘いながら...

自分にいつ襲いかかるか分からない恐怖に対する不安を心から打ち消しながら...


誰かを守るために...


そして、何よりも自分の癒やされない【心の傷】がこれ以上嵩ずることがないために...


彼は戦いに挑んでいる。

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