初心者向けダンジョン編
スリースピアーズ国営冒険者ギルド
時は遡って、3日間前
ナパジュ王国の王都、ティアオーク
クダンスター地区
王都の中心部であり、王城の所在地であるこの地区では今日も様々な人で賑わっている。
品物を確認しているお客さんらしき人と商人の会話...
巡回から駐屯所に戻った衛兵の交代時間の知らせと敬礼したときに響いた金属の鎧の音...
噴水の辺りで歌を披露している女性の美声...
街中に響いた教会で鳴らした時鐘の音...
その中に男女のグループが会話を交えながら、街を歩いている。
「さすが王都の中心部だ...ここからは王城が見えるし、王都の象徴の建物である教会も間近に見られて、すごかったわ。」と言い出したのは鎧を纏っている男。装備等から見ると、
「今は観光ではありませんから...わざわざここまで来た私たちには目的があると忘れないでください。」と長い茶色ケープを身に包み、片手には木でできた杖を手にしている眼鏡の男性がさっき陽気で話した男性に向けで文句を言い始めた。こちらの典型的な服装から魔法使いだと推測する。
「まあまあ...少しなら、大丈夫じゃないか...僕たち、王都に来たのも久々だし。ね?」とさっきの二人の睨み合いが始まりそうのところを割り込んで、場を和もうとしたもう一人の男性。真っ白な服装と被っている帽子に光の神【ウサレマータ】の帽章と手に持っているメイスから見ると、神官のジョブであろう。
そして、その三人の後ろから言葉を発することに遠慮している背が低い女性がただただ後を付いている。軽装と腰に掛けているダガーから見て、盗賊のジョブではないかと推測する。
そこで戦士の男が残りの三人に向けて陽気に溢れた笑顔でこう言った。
「分かっているよ...今日は俺たちにとって大事な日だ!これで俺たちも本当の冒険者になるんだ...しかも一流に...な!」
彼らが向かっている場所は冒険者のギルドである。
しかも、冒険者ギルドと言っても他のギルドと格が違う名門ギルドが存在する。
彼らが訪れるギルドは名門の中にも王都の御三家と呼ばれるトップギルドの一つ、【スリースピアーズ】であり、唯一国営という国がギルドの運営を全面的に支援するほどの超一流の名門冒険者ギルドである。
このギルドに所属している冒険者のレベルは無論全員一流であり、高度のクエストしか引き受けないと言われている。
4年前...長き渡る魔王討伐の戦いでついに魔王の封印が成功。
その魔王討伐団の任務に携わるパーティメンバーにはほぼこのギルド所属に冒険者だった。
そして、最後の討伐戦では奇跡的に死亡者ゼロという奇跡と言うほどの業績のおかげでスリースピアーズの評価も支援額もさらにうなぎ登りの状態になった。
このギルドに所属ができれば、名誉も報酬も約束されるという噂が王都の中なら誰も知られている。
そう...彼ら4人はこのギルドの最終入団試験を受けるため、王都にやってきた。
王都の各地で新入団員募集の後に行われた一次審査が通過できた者のみはギルド本部がある王都に招待され、最終入団試験を受ける資格が与えられる。
冒険者であれば、誰にも超一流ギルドに入団できるという希望を抱き、試験の結果は晴れて入団!という夢まで見る者もいる...彼らも例外ではなかった。
しかし、この世で現実にはそううまく行かなかった。
「今回の4名様の入団に関しては誠に残念ですが、見送らせていただきます。ご希望に添えることができず、誠に申し訳ございません。」というギルドの受付嬢からのお告げに対して、戦士の男は激しく瞬きをして、口が開いたまま、言葉が出てこなかった。
「当ギルドは今後の皆様の一層のご活躍を心よりお祈り申し上げます。」と話しを続けてから、一回お辞儀をした。
ついに混乱状態から目覚めたような戦士の男は受付嬢に向けて、もう一度訪ねた。
「なんで俺たちは入団できないか理由を教えてもらえますか?俺たちはまだ冒険者を始めてから日が浅いけど...十分このギルドで活躍できる自信もあるし!試験中、面接官からは悪くないと言われたから、入団ができるはずだ!何か問題があるのかそれをまた訓練し直すから!」と必死に訴えようとしたが、帰ってきた回答は「申し訳ございません。最終入団試験に関する情報や審査についてはギルドの機密事項になりますので、お答えしかねます。」
「なんだよ!機密事項は!」と戦士の男の怒号がギルドの入り口から中まで響いた。
「お、落ち着いて...本当にすみません...大声を出して、」と戦士の男の肩を押さえて、申し訳なさそうな顔をして、受付嬢に頭を下げた神官の男。
「では、入団を見送るということは私たちがまた再挑戦できるということでしょうか?」と魔法使いの男が冷静な口調で受付嬢に問いかけた。
「その質問については私の立場だけではギルド代表としてお答えするではありませんが、可能性がゼロじゃないと思います。」と受付嬢が曖昧な回答と共に笑顔を送った。
「そうですか...分かりました。今日はとりあえずここで失礼いたします...行きましょう。」と素直に引き下がる魔法使いに対して、戦士の男はまだ怒りを抑えきれずに言葉の矢先を魔法使いの男に変更した。
「お前は悔しくないのかよ!ここで不合格と言われて、素直に出ていく気か!?」と言った戦士の男。
「だから...落ち着いてください。今日ここで騒いでも何も解決になりません。さらに問題でも起こしたら、出禁にされるのは最悪です。だから、外でひとまず外で頭を冷やして...」と冷静さを保ちながら、仲間を説得しようとした魔法使いの男。
「...分かったよ!」と戦士の男が神官の手を振り払い、ギルドを後にした。
その後、魔法使いの男と神官の男も後に付いた。残りの盗賊の女は慌てて、深いお辞儀をして、3人に追いかけてギルドを去った。
ギルドを後にしてしばらく街を歩き、座れるところがある場所で休憩することにした4人。
「くそ!なんでだよ!何が駄目なのか分からない!俺の腕には何が足りないのだ!」とまだまだ怒りの感情があふれ出している戦士の男。
「まあ...それは簡単に分かれば、苦労しないから...はあ...さっきは焦ったよ。」とため息をついた神官の男。
「とにかく...試験の内容はなんとか分かったので、そこから反省点を考えて、鍛え直せば...再挑戦はゼロじゃないって言われました。一回鍛錬し直して、また再試験を受ければいいということです。」と眼鏡をかけ直した魔法使いの男は冷静に話をまとめた。
そして、今までずっと無口の盗賊の女は相変わらず、ただ黙って話を聞いていた。
「あ~!しまった...
「一応その話をしようと思ったのですが、誰かさんのおかげでそこから出なければならない状況になりましたから。」と眼鏡の魔法使いの男の目が戦士の男に向けて、皮肉っぽく思ったことを口にした。
「俺だけが悪いみたいじゃないかよ!おい!」とすぐにケンカ腰になった戦士の男。そこで、神官の男はまた割り込んで、二人の喧嘩を止めた。
「まあまあ...別の日に伺っても大丈夫だから...喧嘩はやめて...でも、王都に来るためにかなりお金を使ったから...今日の宿は贅沢できないよ...何せよ王都の宿代は高いし...は...」と喧嘩が止められたものの、現在の金銭面の厳しさに対して、思わずまた大きいため息をした神官の男だった。
しばらく話し合いの結果、宿屋を探して、翌日でまた仕切り直すという結論に至った4人はクダンスター地区の中ではかなり格安で、男三人が一緒に寝るの一部屋と女性用の小さな部屋で男女に宿泊スペースが別れたの宿屋を見つけ、不合格という結果に対する落胆と疲れで一夜を過ごした。
次の日、朝を迎えた4人は宿屋の1階にある飯屋で朝食を済ませた。
とその時、たまたま宿屋の掲示板を見かけた戦士の男はある張り紙に目に留まった。
その張り紙の内容は
「テリー冒険案内所クダンスター支店!あなたの冒険を全力でサポートします!(基本無料!)」
と書いている広告だった。
「へ...王都で最近こういう事業もあるのか?」と関心を持っている戦士の男。
「でも...なんか胡散臭くないか?あの(基本無料)はどう見ても怪しいよ...」と何か警戒している神官の男。
「しかし、レベル上げも兼ねて再試験に備えて、何かのアドバイスがもらえるかもしれせんね。行ってみる価値があると思います。」と行ってみることを促す魔法使いの男。
そして、3人の会話を聞いた盗賊の女も意思表明するためにうなずいた。
「じゃ...この案内所に行ってみるか!」と戦士の男はパーティの意思を勝手に代表して、案内所に行くことを決めた。
その張り紙に書いてある地図に辿ると、クダンスター地区の片隅にある小さな建物に着いた4人。
建物の入り口の上にある看板はちゃんと【テリー冒険案内所クダンスター支店】と書いてある。
外見から見ると、怪しさはあまり感じないが、場所は場所だけにやはり警戒してしまった4人。
そこで、先頭を切って店の扉を開けたのは意外にも...無口の盗賊の女だった。
これで4人の冒険がここから始まる...はず
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