有能なヒーラーは心の傷が癒せない~「鬱」という謎バステ付きのダンジョン案内人は元(今でも)戦える神官だった~
金剛永寿
プロローグ
ダンジョン案内人
なんで...
なんでこんなことになった。
ここは初心者向けの【ダンジョン】のはず...
そのはずだった。
なのに...
男は自分が遭遇した出来事に対して、今でも信じがたいと思い、驚愕のあまりに目を大きく丸くして口が閉じられずにいた。
なんでこうなってしまったんだ。
確かに...希に
そんな
ハハっ...
不運すぎるよ...これ...
男は自分の運の無さに呪いながら、苦笑し出した。
あ...
一旦引き返すと勧められたとき、素直に聞くべきだったな...
仲間は目の前に全員倒れている...
俺もだんだん意識が朦朧して、眠くなってきた。
「俺たち...こんのところで死ぬのか...」
男の重たい瞼が閉じようとした瞬間、
「死なせない...」
「...え?」
とどこかの声が聞こえてきた。
男は再び朦朧した意識を取り戻し、声がした方向を見ると、
【アイツ】だ...
今回のダンジョン探索のために同行しているダンジョン案内人が立って、次にこう叫んだ。
「誰一人も死なせない!絶対に!!!」
とその力強い言葉で男の意識が完全に戻った。
そして、彼が最も驚いたのは目の前にいる光景だった。
ただのダンジョン案内人役で、今回の臨時パーティメンバーとして加えたその人が...
今は人間の高さ2ー3倍ぐらいのデカさをしている巨大かつ凶暴なモンスターと一人で戦っている。
しかも、
そのような有り得ない光景で男の目はモンスターの方より例のダンジョン案内人の方に引かれた。
その案内人はモンスターの攻撃を防御しながらも、攻撃を交わした...
違う...それだけじゃない。
モンスターの動線がまだ倒れている仲間に行かせないように素早い動きで誘導している。
さらに相手が攻撃した隙間を見極めて一発...二発反撃もあのモンスターの巨体に食らわせた。
地味に見える
そのような正確な動きとヒールとパンチでの攻撃の繰り返しのおかげで倒れている仲間も一人ずつ回復し、ようやく全員は立ち上がることができて、体制を立て直した。
そして、あのモンスターもその案内人が与え続けて蓄積したダメージがじんわりと効いてきたおかげか動きが徐々に遅くなって、攻撃も鈍くなった。
あんな戦い方ができるぐらいの余裕...
これは冒険者が俗に【チート】と言うやつなのか?
...
いや...チートなんかじゃない。
これは...積み重ねた経験でモンスターの行動パターンを読んだからこそできる動きだ...
その上に仲間の安全を優先する配慮とヒールの絶妙なタイミング...
まるで幾多の修羅場をくぐってきた百戦錬磨の【神官】だった。
しかし、単なるダンジョン案内人がヒールも戦闘もここまでこなせるとは誰にも想定していないし、期待はしていないだろう。
本当に...
この人...何者だ!?
そのダンジョン案内人の名前は【スケト・タチバナ】
訳があって、今の
そう...絶対に死なせない!
例え、俺の【心】はあの時から闇に陥って、とっくに挫けたとして...
一生解き放たれることのない【罪】と癒やされることがない【傷】を背負って、
この【魂】まで焼き尽くされたとしても...
それでも誰一人も死なせない!
絶対に!!
守り切ってみせる!!!
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