第21話 被害少女

 放課後、俺は瑠璃の友達の家出少女と会うことになった。

学校での仕事が終わると、すぐに向かう。


 歌舞伎町の喫茶店で待ち合わせる。

周りには風俗の面接や出勤前のホストやキャバ嬢なんかがみて取れる。


「待たせたな」


 俺は先に入っていた瑠璃と合流する。


「いえいえ、友達の方がちょっと遅れてるみたいです。すみません」

「いや、気にしなくていいよ」


 俺は、瑠璃の隣に座るとホットコーヒーを注文した。


「答えにくかったらいいんだけど、その友達って普通の警察に頼れない事情があるの?」

「事情っていうか、気分悪くしないで欲しいんですけど、彼女は警察を信用していないんです」

「なるほど。分かった。ありがとう」

「え、それだけでいいんですか?」


 瑠璃は驚いた表情を浮かべている。


「誰にでも、ほじくり返されたくない過去ってのはあるもんだ。それを、他の人からこっそり聞くってのはな」

「先生のそういう所好きですよ。なんか、警察っぽくないですよね」

「そうか? 俺は誠実でいたいんだよ」


 そんな話をしていると、瑠璃の友達がやって来た。

茶髪を軽くウェーブさせ、服装はいわゆる地雷系というやつだ。

最近、歌舞伎町ではよく目にするものである。


「遅れてすみません」

「いやいや、気にしなくていいよ。どうぞ座って」


 彼女は俺の対面の席に腰を下ろした。


「初めまして。狩谷真人と申します」

「遠山美咲です。初めまして」


 俺は美咲さんに名刺を手渡した。


「警察庁……?」

「ああ、警察庁ってのはわかりやすく言えば警視庁の上の組織かな」


 俺の名刺には公安課とは書かれていない。

表向きは“警察庁生活安全局少年保護対策室“というのが俺の肩書きだ。


「そんな人がわざわざ……」

「ちょっと色々事情があってね。瑠璃からはどこま聞いてる?」

「すごく信頼できる人だって。教師もやってるから他の警察とはちょっと違うっていうから会ってみようかと」

「そっか、じゃあ話は早いな。飲みながら話しましょう」


 その時、美咲が注文したカフェラテが届いた。


「辛いことを思い出しちゃうようで申し訳ないんだけど、事件のこと話てくれる。もちろん、話せる範囲で構わない」

「はい、わかりました」


 美咲は、事件のあった日のことを話てくれた。


 最初は食事をした。

その紳士的な態度から、その男のことを信用してしまった。

もちろん、食事代はその男の奢り。


 食事が終わると、そのままホテルへと向かう。

歌舞伎町の中でも結構値段が張るホテル。

その男は躊躇することなく、一番高い部屋を予約していた。


 それは、ホテルに入った瞬間だった。

いきなりベッドに押し倒され、無理やりキスされる。


 そこから、顔やお腹を殴る。

どれだけ抵抗しても、男の力には敵わない。

やっとの思いで脱出したというのが、事件の経緯だった。


「ありがとう。よく話してくれたね。怖かったよな」


 俺は優しい声で言った。


「でも、大丈夫。君をひどいことした犯人は必ず俺が刑務所に打ち込んで真っ当な裁きを受けてもらいいます」

「ありがとうございます」

「美咲さん、これで自暴自棄にならないでください。あなたにはまだ未来がある。何かあれば俺が必ず力になりますから連絡してください」

「はい……」


 そう言って、美咲は頷いた。


「これは、前に瑠璃にも言いましたが、世の中にはどうしようも無い大人もいますが、ちゃんとした大人も居ます。ますは、1人で抱え込まず頼ってください」

「本当だった……」


 美咲は呟くように言った。


「本当に狩谷さんみたいな警察官が居たんですね……」


 その目には涙を浮かべていた。


「ね、言ったでしょ。狩谷先生は他の警察官とは違うって」

「はい、本当に瑠璃ちゃんが言った通りの人でした」

「それは、ありがとうでいいのかな?」


 俺はその反応に戸惑ってしまった。


「狩谷さんみたいな警察官に、もっと早く出会いたかった……」

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冴えないインキャ教師と生徒たちからバカにされていた俺、実は国家と生徒を守る敏腕公安警察でした〜可愛い教え子たちを悪から守っていたら、いつの間にか人気教師となって生徒たちからモテ始めています〜 津ヶ谷 @Gaya7575

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