第20話 連続家出少女暴行事件

 翌日、俺は教師としての役割を果たすために学校に出勤する。

午前中の担当授業が終わると、昼休みだ。


 生徒たちは友達同士で楽しそうにお弁当や、購買で買ったパンを食べている。


「はぁ……」


 俺は中庭のベンチに腰を下ろしてあくびをする。

ずっと、職員室に居ては息が詰まる。


 今日こそは早く寝ようと思っても、結局見回りをしていると深夜になってしまう。


「どうするかなぁ……」


 俺にはもう一つ、悩みの種がある。

それは、連続家出少女暴行事件のことだ。


 俺の情報網を使っても、未だにこれと言った有力な情報は入っていない。

名前や住所などといった類は全く出てこない。


「これだけが頼りだな」


 俺はポケットから一枚の写真を取り出す。

そこには、防犯カメラに映った犯人の顔が写っている。


 顔だけ見れば、どこにでもいるサラリーマン風で優しそうな男。

こういう男だから、女の子たちもある程度は安心してついて行ってしまうのだろう。


「先生、どうしたんですか? 冴えない顔が今日はもっと冴えないですよ」


 顔を上げると、そこには瑠璃が居た。


「やかましいわ」


 俺は、スッと写真をポケットに仕舞う。


「隣、座ってもいいですか? ちょっと相談があるんですけど」

「じゃあ、場所変えるか。ここじゃ目立つだろ」


 昼休みということもあり、生徒たちの目がある。

瑠璃は学校内では有名人なので、余計に目立つのだ。


「わかりました」


 俺たちは校内を移動して、国語科準備室へと入る。

国語科の教員たちが使う部屋だが、俺以外の教員はほとんど使っていない。

基本的には職員室にいるのだ。


「どうぞ」


 瑠璃をソファーに座らせる。

俺は自分の椅子に座ると、瑠璃の対面に移動した。


「それで、相談って? あそこでの暮らしになんか不便なことあった?」

「いえ、それは大丈夫なんですけど。私の友達が……」


 そこまで言って、瑠璃は言い淀んだ。


「大丈夫だ。落ち着いて、ゆっくりでいいから」

「はい。その友達も親との折り合いが悪くて家出してるんです。それで、お金が足りなくなってパパ活をしてたら……」

「暴行されたのか?」  


 そう言うと、瑠璃は驚いたように顔を上げた。


「先生、なんでそれを?」

「俺が今追っている事件なんだ。すでに10人近くの被害者が出ている」

「そう、なんですね」

「その友達は警察に相談したのか?」


 瑠璃は首を横に振る。

まだ、警察に相談できていないのだろう。


「それで、俺に相談して来たわけか」

「はい、先生なら信頼できると思って」

「分かった。できるだけ力になろう。その子に合わせてくれないか?」

「わかりました。連絡してみます」


 瑠璃はそう言って、スマホを操作した。


「瑠璃自身は大丈夫なのか? 親とか連絡来てないのか?」

「はい、全然来ません」


 家出してから1週間が経過しようとしているのに、何も連絡がないと来た。

普通は、捜索願いくらい出してもいいものだろう。


 こっちの問題も解決しておかなきゃな。


 俺の仕事はまだまだ終わりそうにないのであった。

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