第14話 裏社会のボス①
瑠璃に家を提供した翌日、俺は普通に学校に出勤する。
ノーセットの髪の毛に、ダサい黒縁メガネ。
相変わらずのインキャスタイルだ。
「はぁぁ」
俺は大きくあくびをする。
結局、昨日もまともに寝れなかった。
警察官として見回りをしていたら、朝方まで行ってしまったのだ。
「今日こそ、早く寝よ」
俺はそんな思いを胸に出勤する。
今日は授業が4コマ入っている割と忙しい日だ。
「さてと、今日も頑張りますかね」
朝のホームルームを終えた俺は、そのまま職員室に戻ろうとする。
「あ、狩谷先生だ! おはようございまーす」
後ろから、それはもう大きな声で話しかけられる。
その声の持ち主は、もちろん瑠璃である。
「おう、おはよ」
「やっぱり、学校ではそっちなんですね」
「まあな。教師の俺と警察の俺を結びつかないようにしてるからな」
「かっこいい先生も好きですけど、今の先生も好きですよ」
瑠璃がグッと近づいて来る。
何か色々当たっている気がするが、教師としてダメだと思い距離を取る。
気づくと好奇の目が俺に向けられている。
何せ、学校中で噂になるほど美人な瑠璃が、インキャ教師と仲良さげに話しているのだ。
何事かと思われるだろう。
「瑠璃ー、次の授業移動教室だからいこー!」
「うん、わかったー!」
瑠璃は友達に呼ばれてその場を離れていく。
「じゃあ、またね。先生」
「あいよ」
職員室に戻ると、濃いめのコーヒーを淹れて座る。
「瑠璃の今後のことも考えなきゃな」
今は、一時的に避難しているに過ぎない。
ずっと、このままという訳にもいかないであろう。
授業を終えた俺は定時で帰宅する。
瑠璃のこともそうだが、俺にはもう一つやるべきことがあった。
違法ドラッグについてと、家出少女が襲われたという件だ。
「まずは、違法ドラッグの方を片づけるか」
俺は自宅に帰り、着替えを済ませて髪の毛をセットしてメガネを外す。
先ほどまでのインキャとは全く違う自分が居る。
「よし」
気合いを入れて、俺は歌舞伎町に向かう。
歌舞伎町の中心地からはちょっと外れたビルのワンフロア。
ここが今日の目的地である。
「邪魔するぞー」
扉を開けると、中に入る。
そこには、とてもカタギの人間とは思えない強面の男が複数人いる。
「「「お疲れ様です! 狩谷の旦那!!」」」
俺の顔を見た瞬間、全員が頭を下げる。
「旦那はやめろって言ってんだろ! 親父さんいるか?」
「はい、奥の部屋に居ます」
「ちょっと、失礼するよ」
俺は、奥の部屋へと向かう。
「親父さん、狩谷です。今、いいすか?」
「入りな」
中から渋い声が飛んできた。
「失礼します。お久しぶりです」
「おう、久しぶりだな」
黒の質のいいスリーピーススーツを着こなすこの壮年の男こそ、夏目宗一郎。
夏目組の組長である。
夏目組はここ、歌舞伎町をシマにするヤクザで、その中でも夏目宗一郎の名前は有名である。
この組長は裏社会に絶大な影響力を持っている人間なのだ。
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