第12話 毒親から避難

 翌朝、俺は実の姉と共に新宿警察署へと向かっていた。

姉は現役の弁護士であり、家出少女たちの相談にも乗ってあげたりしている。


「朝っぱらから申し訳ないな」

「気にしなくていいよ。あんたのお人好しは今に始まったことじゃないし」


 姉貴は俺の性格をよく知っている。

まあ、20年以上も家族をやっているので、そりゃそうであろう。


「その子、家に問題抱えてるんでしょ?」

「ああ、父親から性的虐待を受けているらしい」


 俺は簡単に事情を話していた。


「でもよかったね。あんたに保護されて」

「まあ、そうかもな」


 あそこでずっと彷徨っていたら、危険な目に遭っていただろう。

その前に保護することができたのが幸いであった。


 新宿警察署の前でタクシーを止める。

支払いを済ませて俺と姉貴はタクシーを降りた。


 新宿警察署の二階、生活安全課。


「おはよう」


 俺は隆也に声をかける。

そろそろ、隆也も交代の時間である。


「おはようございます。あ、葵さんもいらっしゃっていたんですね」


 隆也も姉貴とは何回か顔を合わせたことがある。

姉貴は、ここ新宿に弁護士事務所を構えているのだ。


「家出少女のことなら、姉貴に相談してみようと思ってな」

「それは、間違い無いっすね」

「瑠璃はまだ寝てる?」

「いえ、さっき起きてましたよ。向こうに居るかと」


 俺は個室の扉をノックする。

返事が返ってきたのを確認すると、俺は扉を開けた。


「おはよう、瑠璃」

「あ、おはようございます」

「ちゃんと寝れた?」

「はい、おかげ様で」


 そう言うと、瑠璃は俺の隣に立っている姉貴に視線を移す。


「俺の姉貴だ。弁護士をやっていてな、今後のことについて話そうと思って」

「弁護士の狩谷葵です」


 姉は名刺を瑠璃に手渡した。


「ありがとうございます。先生、こんな綺麗なお姉さんが居たんですね」


 姉は身内である俺から見ても美人である。

暗めの茶髪を胸の位置くらいまで伸ばし、スタイルもいい。


 おまけに、弁護士というハイスペックさから、言い寄って来る男も多く居た。


「瑠璃さんの事情は、こいつから大体聞きました。今まで、よく頑張りましたね」


 姉貴は優しい声で言った。


「今後ですが、一時的に親元から離れましょう。住む場所とお金はこちらで用意しますので、大丈夫ですよ」

「すみません、ありがとうございます」


 そう言って、瑠璃は頭を下げた。


「気にしないでください。私は、あなたのような人の味方ですから」


 姉貴は弁護士として、多くの人を救ってきた。

そういう所を考えると、俺と姉貴は似ているのかもしれない。


「私が、後ろ盾になります。親から何かあっても私が対応しますので、安心してください」


 未だ、親からのアクションは何も無い。

普通、娘が一晩でも帰って来ないだけでも心配するものでは無いだろうか。


 しかし、このまま何も無いとも限らない。

今後、接触して来る可能性も十分にある。


 そういう時のために、法律のプロである姉貴に来てもらったのだ。

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