第6話 ドラッグの危険性

「先輩、お疲れ様です」


 覆面パトカーから降りてきた刑事、高橋隆也はまだ俺が神奈川県警に居た頃の後輩である。

今は、新宿警察署の少年課に勤めている。


「こいつら、頼む。傷害の現行犯だ」

「了解しました。任されました」


 俺は加害者側の学生を引き渡した。


「にしても、相変わらずですね。事件を引き寄せる体質は変わりませんか?」

「やかましい。大体これもお前らがちゃんとしてれば、俺なんか必要無くなるんだよ」

「はい、頑張ります」


 そう言って、隆也は敬礼する。


「あと、先輩」

「何だ?」

「最近学生の間で流行ってるヤク知ってます?」

「ヤク?」


 最近は中高生でも手に入るような安い値段で、危険ドラックが売買されていると聞く。

腐った世の中になったもんだ。


「一応、先輩の耳にも入れときますね。新しい自分に出会える薬なんて言って売ってるらしいです。危険ドラックに変わりはないのですが、その値段が3000円ほどで手も出しやすいとか」

「そりゃ、高校生でも買える値段だな」

「うちでも注意してるんですけど、先輩も注意してもらえると助かります」


 危険ドラックは一度手を出したら、止められなくなってしまう。

一時的にいい気分になると言われているが、その作用が切れた時の絶望感や不安感は耐えられないほどに強いらしい。


 そして、それから逃げるためにまたドラッグに手を出してしまい、次第に自分の意思では止められなくなってしまうという。


 また、繰り返し使用しているとドラッグに対して耐性がつき、一回に使う量がどんどん増えていく。

こうなると、薬物欲しさに暴力事件を起こしたり、窃盗などの犯罪へと繋がっていくケースが多い。


 さらに一度、薬物依存症に陥ると治療には長い時間が必要である。

その間に家族や友人を失ったり、若者たちは未来が閉ざされて、一生を台無しにしてしまう事だってある。


 俺は、この仕事をしてそういう中高生を何度も見て来た。


「それって、どんな見た目してるんだ?」

「ラムネみたいな感じの錠剤ですね。これっす」


 隆也がスマホでその画像を表示して見せてくれる。


「了解、ありがとう。あとでこの写真、送っておいてもらえるか?」

「わかりました」


 俺は隆也に画像を送ってもらった。

ここは、新宿歌舞伎町である。

そう言った、ヤクも出回ることが多いだろう。


 もっとも、ここらをシマにするヤクザはヤクはご法度。

半グレのような質の低いやつが捌いているのだろう。


「じゃあ、あとは頼んだ。俺は終電まで見回ってるから」

「了解しました! 頼りにしてますよ、先輩」


 そう言うと、警察車両に加害者と被害者を乗せて新宿警察署へと向かって行った。


「さてと、見回りの続きしますか」


 俺は乱れたネクタイを直しながら歩き始めた。


「あの、ちょっといいですか?」


 その時、後ろから声をかけられた。

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