第4話 夜の見回り
眠らない街、歌舞伎町。
今日は金曜日の夜ということで、酔っ払いら観光客やらで賑わっている。
酔っ払い同士のいざこざや、半グレのような連中。
そこまで行かなくとも、質の悪い不良たちが暴れ回ることだってある。
そういった、トラブルからうちの学校の生徒だけでなく、青少年を守るのが俺の仕事である。
ここは新宿区。
つまりは、うちの帝華女子高校も新宿区にあるので、下校途中に新宿で遊んで帰る生徒たちも少なく無い。
新宿は基本的に何でも揃ってしまうのだ。
そんな新宿という土地柄、他の学校の生徒の姿もある。
制服で大体どこの高校かは判断できるようになってきた。
新宿区の条例では23時から朝4時まで、18歳未満の深夜徘徊が禁止されている。
18歳でも、高校生は補導の対象となる。
条例が定めた時間までは、あと1時間ほどはあるが、俺は歌舞伎町内を見回る。
「ここも変わらねぇな……」
客引きも条例違反となるが、そんなのはお構いなしといった感じでキャッチがたくさん居る。
歩くたびにガールズバーのお姉ちゃんたちにも勧誘される。
俺はそれを断りながら歩く。
もちろん、警察手帳を出せば捕まえられるが、今日の仕事はそっちではない。
あくまでも、青少年の保護が俺の仕事である。
「あれ、うちの生徒だな……」
そこには、缶チューハイを持って歩く2人の女子がいた。
派手にメイクをし、堂々と歩いていることから未成年とは思えないのだろうが、間違いなくうちの生徒である。
これは俺の経験上だが、歌舞伎町のコンビニで年齢確認がされることの方が少ない気がする。
未成年でも、普通に酒やタバコが買えてしまうのだ。
もちろん、あからさまに未成年と見えれば、店側も売らないであろうが。
「よりによって、最初に出会うのがうちの生徒とはな……」
若干、呆れながらも俺は彼女たちに近づいていく。
うちの学校はそれなりに有名な高校だが、親などの周りの期待の反動から良くない方向に行ってしまう生徒も少なからずいる。
俺はそういう生徒を何人か見てきた。
「お姉さんたち」
俺は声をかける。
「何? ナンパ?」
「ナンパなら、結構だから向こう行って」
声をかけた瞬間、ナンパだと思われてあしらわれる。
「そうじゃなくて、2人とも高校生だよね? そろそろ家に帰った方がいいぞ」
「は? 私たち普通に成人してますけど」
「そうよ。なんで帰んなきゃいけないのよ」
どうやら、しらを切り通すつもりらしい。
しかし、俺は帝華女子の教師である。
自分の学校の生徒の顔を見間違うはずがない。
自慢じゃないが、俺は生徒たちの顔を全員暗記している。
「これ以上、付き纏うなら警察よぶよ!」
2人が俺を睨みつけてくる。
「君たち、帝華女子の生徒だよね? そのシャツは学校指定のものだろ?」
制服ぽい所は脱いで分からなくしているつもりなのだろうが、こちっはその制服を週5で見ているんだ。
気づかない訳がない。
「夜遊びは高校卒業してからにしな。ほら、今日のとこは何も言わねぇから帰んな。これ以上遅くなる歌舞伎は危険な奴らが出てくるからな」
俺の言葉で、2人は駅の方面に歩いて行った。
もちろん、酒は俺が回収して近くのゴミ箱に捨てた。
「さてと、夜はこれからだな」
俺は見回りを続けるのであった。
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