第59話 小麦の収穫と新規ルートの開拓案
【異世界生活 91日目 9:00】
「それじゃあ、行ってくるな」
俺はそう挨拶をして、小麦の収穫に向かう。
小麦の収穫に向かうのは俺、
なんか、
今は木の下で雨宿りしているが、少し可哀想だし、ニワトリの方がいいところに住んでいるということで雨風しのげる小屋を作ってくれるらしい。
拠点は
「ねえ、お兄ちゃん、小麦の収穫はどうする? 刈り取ってから小麦畑で乾燥させてもいいし、拠点に持ち帰って乾燥させるのもいいし、どうする? あと、穂の部分だけ刈り取るっていうのもあるよね」
「麦わらごと拠点に持ち帰りましょ? 麦わらは編めば色々使えるし、荒縄の材料にも良さそうだし、そのままだってヒモ代わりに使える優秀な素材よ」
手芸好きな
なるほどな。麦わらが確保したくて今日は
「リュックサックはちょっと麻布もったいないし、麦わらのバッグや籠ならいくらでも作れるでしょ? 今後の探索や収穫にも役立つと思うのよ」
「わかった、わかった。小麦は麦わらごと持ち帰って拠点で干す。それでいいな? 確かに小麦畑に干しっぱなしは鳥や虫に食われたら嫌だし、どうせ麦わらも使うなら拠点まで持っていってしまった方がいいもんな」
俺は
「牛さんたちのベッドにもいいかもね。もちろん私たちのベッドとしても」
そんな感じで、とりあえず、小麦をわらごと収穫して、何度も往復もして拠点に持ち帰ることにする。
刈り取ったら2~3週間天日干しするそうだ。
また乾燥か!! 土器といい、麻の繊維といい、乾燥に苦労している気がする。
小麦畑へは3時間弱で到着。
1時間ほど麦の刈り取りをして、遅めのお昼ご飯。休憩してから15時くらいまで麦の刈り取りと選別をしていい物だけを拠点に持ち替える予定だ。
「やっぱり、自然にほったらかしの小麦だから、虫に食われていたり、成長が偏ったり、身のつき方が悪い小麦も多いな。あと、雑草も多すぎる」
俺はそう言って選別しながら刈り取っていく。小麦畑というより雑草の中に小麦が混ざっている。という状況に近いかもしれない。
「秋ぐらいにちゃんと耕して種まきすれば、次の夏にはちゃんとした小麦ができるんじゃないかな?」
「なあ、
俺は
「うーん、神様がそれだけ拘るってことは、やっぱり冬を越えるのは難しいのかな?」
「なんか、それだけじゃないっぽいけどな。神様は俺達に魔物を倒させてレベルを上げさせたいんだろうな。多分、日課のお祈りと関係しているのか、何か別の思惑があるのか、やたら魔物狩り推しだからな。悪意や罠みたいなものは感じないけどな」
俺は
「神様、魂の浄化とか言ってたもんね。魔物を狩って、魔物のマナを吸収してレベルを上げると、私たちの魂が成長して赤ちゃんも強い子が生まれるとか言っていたような気がするね」
「10分の1の今の俺達の魂を10分の10に成長させる作業か。たぶん、それだろうな」
俺は思い出すようにそうつぶやく。
「お兄ちゃんと
俺と
思わず、
「そうなると、畑を耕して麦の籾を撒いたら、他の島に移動して、春になったら帰ってくる感じかな?」
「そうだな。あくまでもこの島を拠点にはしたいな。冬だけ、赤道を越えた、北にある、夏と冬が逆転する島まで移動して、春には帰ってくる感じかな?」
俺はそういう。
アドバイザー神様の秘書子さんの話では、この星には7つの島があって、3つが南半球に、3つが北半球に縦に6つ並んでいる感じらしい。
そして、赤道直下、一つだけ離れたところに一つ島があって、そこは強い魔物がいるらしいから、レベルがかなり上がるまでは上陸しない方がいいとのことだ。
「まあ、北にある島まで行けなくても、赤道付近、島を二つ渡るくらいでも冬は越せそうだしな。一応目指すのは北に島二つ渡って冬を越える感じかな?」
俺は自分なりの解答を
「そうなると、船も必要よね?」
しびれを切らしたのか
「そうだな。俺達だけなら竹で作った『いかだ』みたいなのでもいいかなって思っていたんだけど、折角食料も集めたし、牛やニワトリも増えたし、少し立派なカヌーみたいな物を作ってみんなで移動したいな」
俺はそういう。
「私は牛さん達とお別れするのは嫌だよ?」
「やっぱり、
俺は
「その為にも金属加工は成功しないとダメじゃない? いくら何でも石斧でカヌー作りはきついと思うし、島を渡ったら魔物がいるんでしょ? 武器ぐらいは作らないとね」
「小麦の収穫が終わったら、本格的に南の拠点の引っ越しと鉱石集め、そして金属加工に注力しないとな」
俺はそういう。
まあ、小麦が保存食として加われば、干したトウモロコシと小麦で飢える事はないだろう。金属加工が成功し次第、少し積極的に動物を狩って干し肉作り、魚も捕れるうちにとって、干物にして、食料ごと隣の島に乗り込む感じかな。
小麦を刈りながらの雑談で色々、今後の事が考えられた気がする。
というか、単純作業すぎて、みんな話したかっただけっぽいけどな。
15時前くらいまで作業して、ちょうど牛に積んで、俺達も持てるだけ持って丁度くらいの小麦が収穫できたので、牛に小麦を積んで拠点に帰る。途中、河原で休憩しながらゆっくり帰った。
【異世界生活 91日目 18:00】
俺達が帰ると
壁はまだできていないけど柱と骨組み、屋根はしっかりできていて雨が降っても牛が寒い思いをしなそうだな。
なんだかんだ言って、たまに通り雨のような、スコールのような雨が結構降るからな。
作業が一段落したところで、夕食を食べながら、小麦を刈り取りながら話した今後の話を共有する。
「やっぱり、神様はレベルアップを期待しているよね。多分、神様の力になる信仰心とかにもかかわってくるのかな?」
「たぶん、そうだろうな。魂が成長すると祈りの力が強くなるみたいな仕掛けなのかもな。だから、俺達や、俺たちの子孫には強くなって欲しいみたいな?」
俺は
「じゃあ、
「少なくとも、生活が安定して、この世界が大体把握できてからだろ? 子作りは」
まあ、俺としては助かったけどな。
「まあ、その為にも、魔物と戦えるくらいの武器は用意しないとね」
「そうだね。だから、小麦の収穫が一段落したら、本格的に金属加工を始めようと思う。まあ、その為にも南の拠点に置いてきた資源の回収もしないとね」
俺は鈴さんにそう言って、これからの金属加工の主任としての活躍を期待する。
「金属の材料だけじゃなくて、干したままの麻もちゃんと回収してきてよね」
それと、北側で新しい麻の採れる場所も探さないとな。
「まあ、そのあたりは、牛に頑張ってもらおう。今日もかなり小麦の運搬で活躍してもらったし」
俺はそう言って牛の運搬力に期待する。
「ああ、そのことなんだけど、あの峠道を牛さん越えられないと思うよ」
「マジか? なんで?」
俺は
「今日牛さんといて実感したんだけど、牛さん、私たちが小麦刈っているときはたくさん草食べていたし、途中、川沿い歩いたのはお水飲ませる為だったんだよ。牛さん、私たちより体大きいからお水飲んだり草いっぱい食べたりしないとダメなの。あの峠には草もなければ水もない。あの峠を越えるために牛さんに積めるだけの水と牧草を積まないと峠を越えられない、つまり余計な荷物は積めないと思うの」
「水の飲める川沿いの道で、草の生い茂ったルートじゃないと牛は活躍できないってことか」
俺はがっかりする。
この間みたいに人力で運ぶしかないか。何往復必要なんだ? 峠を越えるときは薪とか食料も運ばないといけないし。ろくに荷物は運べなそうだ。
「だったら、先に、山の探索してみない? 私の予想なんだけど、この拠点の隣に流れている川って、南の黒曜石や砂鉄拾った川と源流一緒なんじゃないかってね。こっちの川は黒曜石とか砂鉄はあまり流れてこないみたいだけど、流れてくる方向から考えるとその可能性は高いかな? って。どっちにしろ、鉱石とか探しに行きたいし」
「別ルートの開拓か。確かにそっちのルートが遠回りでも、薪や水の心配をしなくていいなら遠回りする価値があるかもしれないし、どっちにしろ、そろそろ黒曜石も欲しいなって思っていたし。ちょっと山を登ってみようか? で、川の分岐を見つけて、そっちのルートで牛が進めそうならそっちのルートで引っ越し、ダメなら人力で最初使った峠を越える。それでいいかもね」
俺はそう言って
「
「ある程度、道がなだらかで、牛さんが食べられそうな草があれば輸送量も増えるし、いいかも?」
「まあ、牛が越えられないような厳しい道があったら却下だけど、1回探索してみるのもいいかもな。保存食もトウモロコシを収穫しているときに倒したイノシシやシカの干し肉、魚の干物もあるし、干したトウモロコシも粉にすれば保存食になるし、探索は可能だな」
俺がそう言い、小麦の収穫が終わり次第、山の探索をしながら南の拠点に一度戻りルートを開拓することになった。
イメージとしては今の拠点の隣を流れている川を上っていき、分岐点を見つけて下り、南の拠点で必要なものを回収、同じルートで戻り、帰りは少し鉱石を拾いながら帰ってくる。そんな感じだ。
初回は牛を連れずに行き、2回目に牛を連れて南の拠点に置きっぱなしにした素材や鉱石を全部持ってくる。そんな感じだ。
アドバイザー神様の秘書子さんに相談するとマップにそれっぽいルートが未踏の真っ黒いマップの上に点線で表示される。行けそうかな?
南の拠点から峠を越えて北の拠点につくのにのに3~4日、山越えの川に沿ってのルートだと1週間、倍ぐらいかかるけど、ルートはあるようだ。
引っ越しが終わり次第、本格的に金属加工を始める。
そして、理想としては寒くなりだす秋くらいまでには工具を作り、カヌーのようなちゃんとした船を作って、魔物と戦う武器も作って、隣の島に移動、できればその次の島まで移動する。
もちろん、それができない場合も想定して、この島で冬を越す準備もしておきたい。
【異世界生活 92日目~96日目 7月初旬】
今後の予定が決まり、それから5日かけて小麦を収穫、小麦を干したり、拠点で待っているチームには牛の小屋を作ってもらったり、それと、乾燥室もついでに
結構な量の小麦と麦わらが確保でき、
小麦が乾燥したら、小さいお祭りみたいなことをしてもいいかもな。パンを焼いたりうどんを作ったりして。
そんな感じで着々と生活が良くなっていくのを感じていくのだった。
次の話に続く。
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