第51話 サトウキビ畑に到着。そして砂糖作りの準備をする。

【異世界生活 46日目 18:00】


 結局、洗濯物が乾くのを待っていたら夕方になってしまい、そのまま、キャンプをすることになった。

 まあ、飲み水もあるし、川魚やサワガニやカワエビ、食料も豊富なので少しゆっくりするにはよかったかもしれない。

 キャンプから離れない程度の川沿いの草原や林を琉生るうと一緒に散策して、ハーブや山菜、あと、虫よけの除虫菊やミントなども手に入ったので、探索を延長するための物資確保にはちょうど良かったかもしれないな。

 一角いずみも夢中で川魚を取って楽しそうだしな。

 

 しかも川沿いには竹林もあり、北に拠点を移すことも可能じゃないかと思い始めていた。


「って、一角いずみ、魚、捕りすぎだろ?」

俺は近隣の散策を終えてキャンプに帰ってくると山のように積まれたマスのような川魚。


「食べきらなけりゃ、干して保存食にすりゃいいだろ?」

一角いずみがそう言って興味なさそうに言う。

 まあ、そうなんだけどな。

 

 とりあえず、3人で魚を捌き、濃い目に作った塩水に浸けていく。


「槍がさらにかっこ悪くなるな」

俺がそういうと一角いずみが嫌そうな顔をする。


「クマ肉に加えて、魚も吊るして歩くのか。それはちょっと嫌だな」

一角いずみが嫌そうな顔でそういう。


「どうする、せめて、クマ肉だけでも乾燥するように、2日くらいここでゆっくりするか?」

俺は一角いずみに聞く。


「どうせなら、サトウキビ畑に着いてからゆっくりしようよ。サトウキビ、収穫時期って4月までだから、だいぶおしちゃっているから、お砂糖取れなくなるかもよ?」

琉生るうが困ったようにそういう。

 そうだな、砂糖が作れたらうれしいしな。少し急ぐか。


 結局、クマ肉に加えて、干した魚を槍にぶら下げて探索をすることになった。


 夕食は焼き魚やカワエビやサワガニを焼いて食べる。

 サワガニやカワエビがカリカリに焼けて美味しかった。


 その後、河原から岸に少し上がったところにテントを張り、たき火も移動させて交代で眠りにつく。寝ている間に鉄砲水とか嫌だしな。


 

【異世界生活 47日目~48日目】


 その後、俺たちは、明日乃あすの達に北部の探索を1週間くらい伸ばす連絡を魔法の通信でして、川沿いを北上する。

 川を下っても水がきれいなままなのはありがたい。飲み水に困ることもなく、魚も捕れるし、食料も水も減らすことなく探索が進む。

 槍で乾かしていたクマ肉もしっかり乾いて、保存食にすることができたが、代わりに槍には現在、川魚がいっぱい吊り下げられている。一角いずみ、捕りすぎだ。


 48日からは、川が二股に別れたので、西の方向、サトウキビがあるとマッピングされた方向に進んでいく。サトウキビは水を大量に必要とする植物らしいのでこの川の先にサトウキビ畑があるのかもしれないな。


 そして、夕方近く、川がなだらかに、広くなったあたりで、川の横にそれらしいものが広がる。


「お兄ちゃん、サトウキビだよ。サトウキビ畑だよ」

琉生るうが嬉しそうに言って、かけていく。

 最初は小麦が目的だったが、最終的には砂糖が第一目的、小麦はその次みたいな流れになってしまったな。


 俺も、琉生るうに続くように、サトウキビ畑に近づき、畑を眺める。

 うん、なんか、沖縄に家族で観光に行った時を思い出すな。

 これをかじって食べたっけ。


 俺はそんなことを思い出すと、干し魚のついた槍を地面に突き刺し、カバンに縛り付けておいた、石斧を取り出すと、サトウキビを1本切り倒し、『鑑定』スキルで鑑定する。

 普通にサトウキビで食用のようだ。

 切り口を舐めると少し草の様な匂いもするが甘い。ほのかにだが甘みがする。まあ、毒もなさそうだな。 


 俺はサトウキビを短く切って、一角いずみ琉生るうに渡す。

 外側の竹のような厚い皮を石包丁で剥ぎ取り、中の繊維だけにすると、かじるように樹液を吸う。

 甘い。久しぶりの甘味に感動する。


「いいなぁ、お兄ちゃん」

琉生るうが物欲しそうに見る。


「食いかけだけどいるか?」

俺がそういうと、嬉しそうに剥いたサトウキビに飛びつく琉生るう

 代わりに俺は琉生るうの持っていたサトウキビを同じように剥いてかじりつく。


「これはいいな」

一角いずみも同じように皮を剥きかじりつき感動している。


「でも、サトウキビから砂糖を作るのは大変だぞ。皮を剥いて、細かくして、樹液を絞り出す。絞り出す為に石臼みたいなものを作らないとダメかもな」

俺はそういう。


「じゃあ、琉生るうがどんどん皮を剥いておくから、お兄ちゃんと一角いずみさんで、樹液を搾り取る石臼みたいなのを作ってよ」

琉生るうがもう、砂糖に夢中だ。


「そうだな。とりあえず、今日は近くで休んで、明日から砂糖作りの作業をしよう」

俺はそう言って、一旦、サトウキビ畑から離れる。



【異世界生活 48日目 18:00】


 サトウキビ畑の近くで、川からも近い見晴らしのいい高台のような丘にテントを張り、キャンプをする。


 焚火は、移動中に拾ったものがあるが、少し離れたところにしか林がないので、明日以降の薪を拾い集めてからじゃないと砂糖作りの作業には入れないな。


一角いずみ、明日は、俺が、砂糖の樹液を絞る石臼作っておくから、琉生るうと二人で薪集めをしておいてくれないか? ここで何日か暮らすことになると思うから薪は多めに欲しいな」

俺はそう言ってたき火に火をつけ、夕食の準備を始める。

 

「そうだね。このあたり、木が少ないからちょっと歩いて薪集めてこないと暮らすのも大変そうだもんね。とりあえず、それが終わってからかな? 砂糖作りは」

琉生るうもそう言って明日の作業を決めていく。


 夕食は干し肉をお湯で戻して山菜と合わせて野菜スープにする。琉生るうと二人で夕食を作る。

 砂糖を使った料理とかもしてみたかったが、そもそも砂糖を使う料理ってなんだ? 塩と砂糖で何が作れる? 


「そういえば、砂糖を作るのはいいとして、砂糖、何に使うんだ? 肉や魚じゃ、砂糖なんて料理に使えないぞ」

夕食が出来上がり、俺は夕食を食べながら、ぼそっとそんなことを聞く。


 琉生るう一角いずみが口ごもる。二人も何も思いつかなかったのだろう。


「そ、そうだよ。小麦が取れればおかしが作れるぞ」

一角いずみがそう提案するが、


「卵も乳製品もないね」

琉生るうがそう言ってがっかりする。


「乳製品か。乳牛とかいるのか?」

俺はそう言い、気になって秘書子さんに聞くと、牛がこの島にいるらしい。あと、野生の鶏っぽいものもいるそうだ。


「ほんとに!? ニワトリさんもいるの? 牛さんも欲しい!!」

琉生るうにそのことを伝えたとたん、琉生るうのテンションが上がる。 

 この子はニワトリ大好きだからな。特に食べるのが。


「それに牛さんは100kg近い荷物を背負えるから家畜にできたら心強いよ」

琉生るうがそう言って牛について熱く語る。もちろんお肉が美味しいことも。

 帰りの山道も牛がいれば薪とかも運べて、小麦とかも持ち帰れるしいいかもしれないな。まあ、牛を家畜化する方法が思いつかないが。


 とりあえず、琉生るうの優先順位が小麦より、ニワトリと牛になったようだ。

 秘書子さんにマッピングしてもらうと、小麦畑の側の草原や雑木林に牛もニワトリもいるようだ。


「明日から、このあたりに定住することになりそうだから、剣道教室も再開するか?」

一角いずみがそういう。


「そうだな。第一目的みたいなのは果たせたし、食料も水も確保できているし、明日から再開するか」

俺はそう言って、一角いずみに剣術というか杖術? を教えてもらうことにした。

 

【異世界生活 48日目 6:00】


 今日は早めに起きて、作業開始する。

 まずは朝食を食べて、昨日提案した通り、一角いずみが先生になって杖術の鍛錬をする。

 一角いずみは弓道部だが、実家は合気道の道場、格闘技はもちろん、杖術や剣術、小太刀などを使うのも得意らしい。


 そんな感じで合気道の杖術を1時間ほど習って、一角いずみにキャンプを守ってもらいながら、俺と琉生るうで川の少し上流に石探しに行く。

 石臼を作る大き目な岩を探すためにだ。


「石臼って、どんなものを作るの?」

琉生るうがそう聞く。


「まあ、石臼というより、窪んだ岩に尖った岩を組み合わせてすりつぶし、真ん中に樹液が貯まる感じの石臼かな? そして、溜まった樹液をこして煮詰めたら砂糖の出来上がり? 本当は生石灰とかをまた作って、不純物を除去したりした方がいいんだけどね。また貝殻探しや貝を焼くのは無理だろうしな」

そんな感じで、アドバイサー神様の秘書子さんに聞いた内容を説明する。


「まあ、石臼っぽい丸くて平らな部分がある岩が二つあればいいかな?」

俺はそう言って河原を探す。

 なるべく重い方がサトウキビも搾りやすいだろうからな。


 1時間ほど歩いて、良さそうな窪んだ石と出っ張った石を見つけ、琉生るうと二人で持ち帰る。

 琉生るうは下になる方の比較的、薄い石を持ってもらう。


琉生るう、休み休み、ゆっくりでいいからな」

俺はそう言って石を運ぶ。護身用の槍は紐をつけて背中に背負う。


 途中、1回休憩して、キャンプまで岩を持ち帰る。



【異世界生活 48日目 11:00】


 そのあと、キャンプで少し休憩してから、一角いずみ琉生るうは近くの林まで薪集めに行く。

 俺はキャンプでたき火の番をしながら石臼作りだ。近くに落ちている石で叩いたり、すり合わせたりして、うすの形を整えていく。

 いくつも石を交換しては、叩いたり、こすり合わせたりして、石臼を削っていく。

 これは時間がかかりそうだな。


 13時ごろ、一角いずみ琉生るうが薪を持って帰ってきたので、昼食にして、昼食後は同じ作業。結局、一角いずみ琉生るうは三往復して結構な量の薪と、食べられる山菜やハーブを取ってきてくれた。



【異世界生活 48日目 18:30】


「どうだ、石臼作りの進捗は?」

一角いずみが夕食を食べながら聞いてくる。


「そうだな。道具がないから苦戦しているけど、明日1日あればそれらしいものはできるんじゃないか?」 

俺はそう言って石臼もどきの岩を見る。

 とりあえず、上の石と下の石がなるべく隙間なく重なるようにできれば搾り汁は作れると思う。

 あとは、持ち上げたり回したりしやすいようにうまく棒をつけて、作業効率を上げる事かな? 俺は横に溝を掘って棒を荒縄で縛り付けるイメージをしている。

 あと、溜まった汁をこぼさないように注ぐ、注ぎ口とかも作らないとな。

 なんというか、石臼というより、まさに樹液絞り機って感じの設計になっていった感じだ。 


 そんな感じで雑談をしながら、サトウキビ畑の側での1日が終わった。

 明日からは本格的にサトウキビの皮むきと樹液絞りがはじめられそうかな?

 飲み水も少し上流に行けば川から汲めるし、クマの肉の干し肉も川魚の干物も結構あるし、時間はたくさんある。


 次話に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る